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昭和恐慌時の経済動向とマスコミ報道 片岡剛士

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片岡剛士の経済解説メルマガ 週刊『The Neo Economist』より一部転載するコーナーです。

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今週の目次
0.Neo Economistからのお知らせ
1.週刊『経済ニュースの基礎知識TOP5』
2.週刊『日本の経済論点』
3.エール大学の書斎から2(第1回「アメリカで見る東日本大震災」)
4.Q&Aコーナー
5.おわりに

※    今週から、イェール大学の浜田宏一先生に連載(不定期)を頂くことになりました!早くご案内したくてうずうずしていた企画なのですが、私もどのようなお話 を寄稿いただけるのか、今後の展開が楽しみです。浜田先生の連載を読めるのは、『The Neo Economist』だけ!

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1.週刊『経済ニュースの基礎知識TOP5』〜Economic news TOP5

さて、各ニュースの用語解説と、そのニュースをどう見ればいいかを紹介するコーナーです。新聞報道から印象に残ったニュースを取り上げてみたいと存じます。

◆第5位 震災が企業活動に与える影響
<略>

◆第4位 家電エコポイント終了
<略>

◆第3位 TPPと社会保障と税の一体改革の先送り
<略>

◆第2位 米国の経済回復の動き
米国労働省が発表した3月の雇用統計は、失業率が8.8%と前月比で0.1ポイント低下しました。失業率の改善は4ヶ月連続で、2009年3月以来の水準(8.8%)まで低下しています。確かに住宅市場は改善とは言いがたい米国経済ですが、緩やかに回復の途を進んでいるのは明らかです。例えば、米国経済の動向を日本の90年代及び現代の動向と比較すると様々な事がわかります。

図表1は、日米実質GDPを、それぞれ1980年第1四半期を100として指数化したものです。薄く色を付けているのは日本の景気後退期を示しておりますが、注目すべきは直近の米国GDPの伸び(図中では傾き)です。

図表1 日米実質GDPの比較(1980年第1四半期=100)
http://www.facebook.com/photo.php?fbid=175691405814788

確かに、リーマン・ショックにより実質GDPは停滞したものの、2010年第4四半期時点で既に米国はリーマン・ショック前の水準を上回っています。そして、リーマン・ショック前の実質GDP成長率(図中では傾き)をリーマン・ショック後は回復しているとも言えます。

翻って日本はどうでしょうか。直近の実質GDPからは明らかにリーマン・ショック前を上回っていないことがわかります。いわゆる「失われた10年」は91年以降の景気後退期から生じていますが、日本の場合は、80年代の実質成長率を回復するに至らず、成長率が停滞したまま、景気回復期においてもその動きは緩やかです。つまり、米国実質GDPの動きからは、現在のところ日本型の長期停滞経路に陥っているとは言えないと考えられます。

もう1つ図表を見ましょう。図表2は、物価上昇率を含めた名目GDPについて、図表1と同様に1980年第1四半期を100として指数化して比較を行ったものです。

図表2 日米名目GDPの比較(1980年第1四半期=100)
http://www.facebook.com/photo.php?fbid=175691492481446

図表2の方が遥かに明瞭ではありますが、我が国は90年代の最初の景気後退期から名目GDPの水準がほぼ横ばいであることに気づくでしょう。

図表1と対応付けて考えると、実質GDPは緩やかながら上昇と下降を繰り返して推移している訳ですから、物価(GDPデフレーター)がディスインフレ→デフレという形で停滞していたことが長期停滞の一つの特徴であることがお分かりいただけるでしょう。この傾向は直近時点においても全く変わっていないのです。

そして、デフレに影響を与えたのは金融政策です。積極的な金融緩和策に打って出た米国に対し、日本は当初バブルつぶしという名の金融引き締め策を行った上、その後の対応もtoo little, too lateでした。

では米国経済はどうでしょうか。こちらは、日本と同様の現象には陥っていません。図からも明らかなように、リーマン・ショックにより経済規模は低下しましたが、着実に回復しており、リーマン・ショック前と比較してその伸びは遜色ありません。

以上は一例ですが、様々な指標を比較すると、現状の米国経済は日本型の「失われた20年」とは明らかに異なる状況を示しており、世界金融危機の震源地であった米国の陥った状況は普通の景気循環という事が言えると思われます。データは米国と日本は違うことを如実に示しているのです。

◆第1位 2011年度予算成立と震災予算の財源を巡る動き
<略>

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2.週刊『日本の経済論点』〜Economic policy ミシュラン


この1週間で最も注目した経済政策・経済論評を徹底批評・解説するコーナーです。今回は昭和恐慌時の経済動向と高橋是清の経済政策、その際のマスコミ報道についてみていくことにしましょう。たった5分で、正しい経済の見方が分かる!

さて、4月3日の日曜日。ある新聞報道がツイッターのタイムラインで大きな話題になっておりました。それが東京新聞の桐山純平氏の署名入り記事「復興へ「禁じ手」浮上 閣僚ら火消し躍起」というものです。

http://megalodon.jp/2011-0404-2339-41/www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011040202000033.html
(web魚拓で記事を保存しております。リンク先トップのURLからご覧ください)

確かにこの記事を読みますと失礼ながらおかしな所ばかりなのですが、いつまで経っても過去の歴史とは明らかに異なる記事が掲載される状況を考えると、笑ってばかりはいられません。

以下、東京新聞の記事を紹介しつつ、高橋是清が行った政策を概観し、高橋金融財政政策が行われた当時のマスコミ報道とはいかなるものであったのかをまとめてみましょう。

桐山氏は、「国債の直接引き受けで日銀が安易に通貨を増発すると、世の中でのお金の流通量も増え、インフレなど多くの弊害を生む恐れがある」とまず論じますが、我が国は10年超マイルドなデフレに陥っており、需給ギャップは20兆円程度とも言われています。デフレに苦しめられている現状ですから、需給ギャップを埋め、インフレにすることに何ら問題はありません。

勿論、過大なインフレが生じる懸念があるのならば、インフレターゲットにより目標インフレ率を設定した上で、政府と日銀が政策運営を行えばよいでしょう。過大なインフレを抑制する手段として、インフレターゲットが有効であるのは、インフレターゲット採用国でハイパーインフレに陥った国が無いことからも明らかです。これは、デフレからインフレになる事を認めつつ、インフレになった瞬間にハイパーインフレになるというおなじみの論法の一種であるように思われます。

次に、桐山氏はこう述べます。「実際、昭和恐慌の1930年代に、高橋是清蔵相の元で、日銀引き受けが実施されたところ、国債増発と軍事費の膨張で財政規律が緩む契機となり、終戦後には急激に物価が上昇するハイパーインフレに陥っている」

高橋是清が行った政策によりどのような現象が生じたのでしょうか。
図表3は、当時の経済動向をまとめています。

図表3:1920年代・30年代の経済動向
http://www.facebook.com/photo.php?fbid=175691575814771

高橋是清が蔵相として政策を行う前は井上準之助が政策を行ったわけですが、緊縮政策と世界大恐慌の影響も相まって、日本経済は1920年代のマイルドなデフレが進む状況から10%超のデフレへと物価の下落は進み、実質GNP成長率も0%台という不況に陥りました。

しかし、高橋是清が蔵相として、金本位制の放棄と赤字国債の日本銀行引受けを実行すると、為替レートは半減するとともに、貨幣の増刷を伴う金融緩和の結果、物価上昇率は平均して2%、実質GNP成長率も回復するという状況になったのです。

高橋が行った財政政策が膨張的であったのかどうか。図表4は、政府消費と政府が行った投資が名目GNPに与える寄与度を見ています。

図表4:高橋財政時における財政支出の状況
http://www.facebook.com/photo.php?fbid=175691665814762

1932年においては政府が行った投資の寄与が大きく拡大しているものの、財政支出の膨張度合いを示す政府経常支出と政府の投資の合計の名目GDP比(図中の黒線部分)は年を追うごとに低下して安定化しています。

図表から明らかなのは、高橋在任時のインフレ率は安定しており、かつ財政支出も経済規模に見合う形で安定的に推移していたという事実です。そして、様々な文献から明らかな通り、高橋は政府支出が膨張することに大きな懸念を抱いていました。

図表3に着目すると、高橋財政時以降のインフレ率が急騰していることが読み取れます。これはなぜ生じたのかといえば、軍部の圧力に屈する形で、高橋の後の蔵相が経済の実態を無視した政府支出を行ったためです。

「一時の弁法」としての日銀の国債引き受けを行ったのは確かに高橋です。ただし、問題は高橋個人は過大なインフレや財政赤字を嫌っており、景気が回復した際には政府支出を抑制することを念頭に置いていたという点です。繰り返しになりますが、問題は高橋ではなく、高橋以後の蔵相であったのです。

さて桐山氏が指摘している戦後のハイパーインフレについてですが、
<以下、略>

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3.エール大学の書斎から2(第1回「アメリカで見る東日本大震災」)
浜田宏一(イェール大学)

1:「アメリカで見る東日本大震災」
<略>

2:イェール大学での救援活動
私の所属するイェール大学(米コネティカット州ニューへイブン)でも、元衆議院議員で現在イェール大学政治学助教授の斉藤淳氏、元参議院議員の田村耕太郎氏の尽力で大地震の救援活動、募金活動が行われた。

3月24日には、イェールの地震学の唐戸俊一郎教授の専門的講演に続いて、イェール東大の学術協力でこられている政治学の松田康博准教授、36代海上自衛隊司令官香田洋二氏が田村、斉藤両氏に加わってパネル・ディスカッションが盛り上がった。外国の大学にいて幸せと思うのが、このような境界を越えた議論が気軽に見聞きできることである。

それが終わると、中心のキャンパスで暗い中、各人がろうそくを手に持って祈るビジルと呼ばれる哀悼の集会が開かれた。私は、幸い家族、親族にも、近い友人にも地震の被害を受けたものはいなかった。

しかし、ろうそくを手に持ちながら、今から半世紀近く前、洞爺丸台風が日本列島を襲ったとき、貨物船北見丸の船長をしていて船を津軽海峡に退避させつつ殉職した叔父のことを思い出した。なんとなくハイカラな、私をかわいがってくれた叔父だった。事故の翌日東大の駒場で試験があったが、気が動転して答案に何を書いたかまったく覚えていない。

ビジルの後は、カレッジで軽食と寄付応募活動等が続く。翌日は大学院の卒業式も行われる大演奏会場、ウースリー・ホールで、日本の「バッハ・コレギウム・ムジコム」の演奏会が大学の好意で義援音楽会に変更され、「ロ短調ミサ」の悲痛なメロディーが全館に流れた。純益(数万ドルと聞いている)が日本に送られた。

ポピュラー音楽でも同様のことがあるらしい。来週は、イェールを活躍の場のひとつとしている「トーキョー・カルテット」が同様の音楽会を開いてくれるという。これらの義援演奏活動に携わってくれる音楽家の方々、日本のため犠牲を払ってくれる大学当局、そしてそれを説得してくださった田村、斉藤両氏には感謝でいっぱいである。

ただ、このような活動を組織するとき、「日本人は大学への寄付活動にそれほど熱心でない」という苦言を聞くことがあるという。確かに、アメリカは個人による公共への寄付活動が大変盛んなところである。イェールの図書館、法学部の本館、最高の名誉ある教授職には「スターリング」の名がついている。J. W. スターリングはフォード、ロックフェラーの顧問弁護士であったそうであるが、1910年代に1500万ドルをイェールに寄付した。戦間期にイェールで立てられたほとんどのめぼしい建物を寄付したといっても言いすぎでない。

もっとも日本人も、例外がないでもない。住友グループは、二回にわたってイェールの日本研究に対してそれぞれ多額の寄付をしている。個人としては、戦前にイェールに来て、日本語を教え、図書館で働き、(私を含め)留学生を世話し、数年前104歳の天寿を全うした岡田美代さんは、質素な生活で貯蓄した基金を日本からの留学生のために寄付している。

日本銀行は、長い間留学生を経済学部IDE(国際開発経済)プログラムに送ってきたが、卒業生が私的な寄付をまとめてプログラムに送っている。

現在必ずしも寄付活動を奨励するようにはできていない日本の税制等が変わっていくならば、加えてNGOの努力があれば、日本でも私的な義援活動が活発になる素地はあるであろう。

<次回は、ハーバードでの義援活動、地震のショックをどう日本経済が受け止めるかの問題について議論します>

続きは『The Neo Economist vol.5』で!⇒ http://www.mag2.com/m/0001243115.html

今週の目次
0.Neo Economistからのお知らせ
1.週刊『経済ニュースの基礎知識TOP5』
2.週刊『日本の経済論点』
3.エール大学の書斎から2(第1回「アメリカで見る東日本大震災」)
4.Q&Aコーナー
5.おわりに

片岡剛士(かたおか・ごうし)/記事一覧
1972 年生まれ。慶応義塾大学大学院商学研究科前期博士課程(計量経済学専攻)修了。現在三菱 UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。専門は応用計量経済学、マクロ経済学。著作に『日本の「失われた20年」-デフレを超える 経済政策に向けて』(藤原書店、2010年、第4回河上肇賞本賞受賞)等。

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