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アメリカのTPP復帰はあるのか? 現地紙も測りかねるトランプ氏の真意


Evan Vucci / AP Photo

 かつてはアメリカにとって最悪の合意だと酷評し、TPPからの脱退を就任早々に決めてしまったトランプ大統領だが、12日、政権のトップの担当者たちに、TPP復帰について検討することを命じた。米中貿易戦争が懸念されるなか、TPPをレバレッジに使う思惑があるという見方もあるが、突然の方針転換は、いつもの気まぐれではという声もある。

◆対中国を意識?TPP復帰に期待の声も

 トランプ大統領は中国の不公平な貿易に対し、関税措置で対決する姿勢を打ち出したが、中国も農産品などへの報復関税で応戦することを発表している。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)によれば、トランプ大統領が農産品の生産者を抱える州の政治家たちと会合を持った際に、市場を失うと苦情が寄せられたという。農業関係者は、トランプ氏と共和党の票田でもあることから、これがTPP復帰発言につながったと現地メディアは見ている。

 そもそもTPPは関税を引き下げて中国の太平洋地域への影響に対抗するものだった。よって再加入することで、トランプ氏は対中貿易戦争で、大きなレバレッジを得ることができるとワシントン・ポスト紙(WP)は述べている。また、中国が新しい関税を米国製品に課しても、アメリカの農業やビジネスに、さらなる海外市場へのアクセスをもたらしてくれるというメリットもある。特にTPP参加国の日本への牛肉や小麦の輸出に関しては、オーストラリアやカナダなどと同じ条件で戦えるとしている。

 トランプ氏のサプライズ発言を歓迎する共和党議員も多く、ネブラスカ州のベン・ザッセ上院議員は、TPP加入は中国の不正行為に抵抗する最良の方法だと賛辞を寄せる(WP)。サウスダコタ州のジョン・スーン上院議員も、中国の競争相手と取引を始めてしまうのが、中国への最良のメッセージとなると述べている(政治誌ポリティコ)。

◆復帰は甘くない。日本は再交渉に否定的

 期待は高まるが、各紙とも今からTPPに戻るのはそう簡単ではないと見る。アメリカがTPPから離脱した後、残りの国々は協議を重ね、TPP11として新合意を発表している。しかしトランプ大統領は、「(自国に)相当良い条件でなら」TPPに戻ることも考えるとこれまで発言しており、現状での復帰を目指していないことは明白だ。

 茂木経済再生担当相は、「TPPの意義や効果について正しく評価するものであれば歓迎したい」とアメリカの復帰について語ったが、TPP合意の再交渉や一部変更は非常に難しくなるとの見解を示している(ブルームバーグ)。戦略国際問題研究所のウィリアム・レインシュ氏は、日本は以前にできる限りの譲歩をしてきたと主張していると述べ、アメリカが望む形での復帰は複雑になりそうだとしている(NYT)。

 WPも、アメリカ復帰でTPPはより強力なものとなるが、すぐに考えを変えるトランプ氏には、いくつかの加盟国は用心深い目を向けていると指摘。カナダやメキシコはトランプ氏からアメリカ人労働者をカモにしていると批判され、日本は鉄鋼・アルミへの新関税からの除外を拒絶された経験もある。彼らがどのような条件で、アメリカ再加入を認めるのかは定かではないとしている。

◆そもそも本気?真意が分からないトランプ発言

 TPP復帰以前に、トランプ氏の発言の本気度を疑う意見も多い。あまりにも突発的な指示であったため、計算された提案なのか、いつもの気まぐれなアイデアなのか関係者のだれも判断できないとWPは述べる。同紙が匿名の関係者から入手した情報によれば、トランプ氏はTPP復帰に向けてのゴールや期限など、まだなにも設定していないという。

 NYTも、トランプ氏はこれまでも考えをコロコロ変えていると指摘し、相手を喜ばせるための大統領の発言が、必ずしも政権の政策になるわけではないという識者の意見を紹介している。ポリティコは、トランプ氏は今でも2国間協定の方がアメリカの利益になると信じており、TPPのメンバー各国との個別交渉のほうにより興味を示していると述べている。

Text by 山川 真智子

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