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【読書感想】ルポ東大女子

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 著者は、多くの現役の学生やOBの「東大女子」に取材をして、その肉声を紹介しています。

 駒場キャンパスで行われる「ジェンダー論」を担当している、東京大学教養学部の瀬地山角教授の話です。

――東大女子は、低学歴定収入でも家事・育児能力の高い人をもっと評価してあげればいいのにと、先生がコメントしているのをどこかの記事で読んだことがありますが。

瀬地山:それがなかなか起きないんですよね、基本的にはね。あまりないと思います。

――ですね。実際、東大女子と話をしていても、「早慶でもいいかなと思うんですけど」と聞きます。「早慶止まりなんだ!」みたいな。

瀬地山:彼女たち自身が、「早慶でもいいかな」って言うのは、私はあんまり聞いたことがないです。きっと彼女たちも早慶なら「全然OK」。ただ、「向こうが気にするかも……」っていうことを東大女子が気にしすぎるというのが、私の見ている感覚だと、多いです。

――「向こうが気にする」と東大女子本人が思ってるっていうことですね。

瀬地山:そうです。

 実際は、人それぞれ、ではあるのでしょうし、社会に出てみれば、その人自身に魅力があり、学歴なんて気にならなかった、という「東大女子」の話も出てくるのですが、周囲が反対したり、相手が気後れする、というケースは少なからずあるようです。

 しかし、「早慶まで」って言われると、ハードル高いな、とは思いますよね。しかも、「許容範囲」「全然OK」とか言われるくらいだったら、「早慶なんてすごいね」って言ってくれる相手と付き合ったり結婚したりした方がいい、と思う人が多いのではなかろうか。高偏差値の大学に行っている人は、それなりのプライドを持っているだろうし。

 これに関しても、東大男子が「早慶でも全然OK」と言うのとは、ちょっと違った感情というか、反感みたいなものを抱いてしまうのは、僕が「早慶レベルにも届かない男性側」だから、なのだろうか。

 同じくらいか、男のほうが学歴が上のほうが「自然」である、という考え方は、2018年でも、根強いものがあるのです。
 そして、「仕事と家庭の両立」は、もはや、男にとっても避けて通れない問題になっています。 

  この本のなかには、こんな話も出てきます。

「ビスケット」は2016年の春、東大女子で集まって恋愛について語り合おうというイベントを主催した。会場は渋谷駅近くの薄暗いカフェ。ゲストスピーカーとして、30代の東大OGと元ミスター東大も駆けつけた。

 実は私(著者)もその場にいたのだが、そのときの様子を、これまた東大生によるwebメディア「UmeeT」の記事が面白おかしく伝えている。記事のタイトルは「【東大女子こじらせ】男2人がbiscUit主催の東大女子会に潜入してみたら、本音が聞け過ぎて変な汗出てきた件」。現役東大男子の視点から覗いた現役東大女子会のレポートである。
 東大女子には、普通の女子には考えられないような、偏差値のたか~い恋愛の悩みがある。

「彼氏と話しててても楽しくなくて、それなら家で本読んでるほうが楽しいなって」
「『今、彼氏いるんですか?』って聞かれた際に、『それって必要な情報ですか?』って訊き返してしまいました」
「勉強はやっただけ成果が出るけど、恋愛はそうじゃない。生産効率性を求めた結果、恋愛から遠ざかってしまいます」
「相手の行動パターンが大体読めるようになると、学習完了。そろそろ別れたほうがいいのかな…と思っていました」

 しかし、彼女の悩みは、これぞ東大女子というものでした。
「スキルとして、彼氏との円満な別れ方がわからない」
 何に対しても、理屈や妥当性の高い方法論を欲してしまうのです。

 なんてめんどくさい人たちなんだ……
 それと同時に、僕はこんなことも考えてしまうのです。

 こういう人たちが、あえて「恋愛」に足を踏み込む必要があるのだろうか?
 恋愛なんて、大概、非効率的なものなのだから、興味が持てず、ひとりで生きていける人は、あえて参入しなくても良いんじゃない?
 実際、結婚や出産に対する、社会からの理不尽な圧力が少なくなってきた現在では、婚姻率は下がっているし、子どもの数も減っています。

 女子大女子と結婚した東大男子は、家のことはすべて妻に任せて自分は仕事だけに集中できる。一方自己実現志向の強い東大女子を妻にもつ東大男子は、自分も家のことをしなければいけなくなる。それが円環的に仕事に好影響を与えることは十分に考えられるが、短期的に見れば、出世競争において不利に働く可能性は高い。

 世帯収入については共働きの東大婚夫婦のほうがおそらく圧倒的に多くなるが、東大男子が自分の自己実現欲求を満たすことを優先するのであれば、女子大女子を選んだほうが合理的だということになる。

 そこは東大男子の人生観が決定的に問われるところといえる。
 逆に言えば、妻のキャリアを犠牲にしてでも自分の男としての価値を証明したいと躍起になってしまう男性が依然多いのは、「男なら、ひとりで家族を養えるくらい稼げないと」という社会的圧力が根強いからである。

 一部の東大男子が端から東大女子を結婚相手と見なさない無意識の理由もこのあたりにありそうだ。当然東大女子も東大男子は避ける。その試金石の一つがインカレサークルなのである。

 東大男子が「自分のキャリアを支えてくれる、女子大女子」を選ぶことが多いように、高学歴女性も、「学歴は低くても、家庭的な男性」を選んでくれれば、丸く収まるのかもしれません。
 今の世の中では、そういう男性も少なからずいると思うし。

 ただ、本人はそういう志向でも、周囲から「ヒモ男扱い」されてしまうこともあるし、東大女子の側も「早慶なら全然OK」と、選択肢を狭めてしまっている。
 個人的には、どうしても働きたい超有能なカップルは、住み込みのお手伝いさんに全部任せるくらい割り切るしかないんじゃない?とも思うのです。
 当直や救急呼び出しがある病院で働いている医者どうしの夫婦なんていうのが「仕事も家庭も」というのは、根本的に無理がある。
 世の中には、そういうことを極限まで効率化してこなしてしまう人がいて、そういう事例がネットで拡散されることによって、「できない人たち」が追い詰められてもいるのです。

 あの人たちはやっているのに、あなたは、なぜ、できないの?

 本当は「できないのが普通」なんですよね。

 子供の数は減っているし、家事も育児も、昔ほど「母親任せ」ではなくなっています。さまざまな家電で、家事にかかる時間も以前よりは減ってきている。

 それなのに、なぜ、女子も男子も、こんなにプレッシャーを感じているのだろうか。
 いまが過渡期で、これからいろんなことが改善されていくのか、それとも、大部分の人が、行き過ぎた理想像を追いかけるのをあきらめるようになるのか。

 東大に入ってしまうと、人生、そう簡単に妥協できないのだろうなあ。

fujipon.hatenadiary.com

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