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ザッカーバーグがぼやかす問題の本質 下

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マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者 出典 Brian Solis

岩田太郎(在米ジャーナリスト)

【まとめ】

・ユーザーデータを利用し数兆億円規模の収益を上げるフェイスブックの体質は変わらない。

・フェイスブックは“広告表示なし”版の有償提供を考えている。

・フェイスブックは情報と権力の非対称性に特徴づけられ、構造的に一方通行。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=39433でお読みください。】

世界最大の交流サイトであるフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が米議会での公聴会で行う証言に、世界の注目が集まっている。

米『Inc.』誌は、①心からの謝罪をするか、②言い訳がましくならないか、③「弊社」や「我々」の代わりに「私」を使ってCEOとしての責任を取るか、そして④最初から勝ち目のない論争に勝つのではなく、議員に良い印象を与えられるか、が見どころだとする。

だが、たとえザッカーバーグCEOがこれらの高いハードルをクリアして、議会証言というショーを切り抜けられたとしても、臭いものに蓋をしただけに終わるだろう。ユーザーの知らない間に追跡・監視を行い、そのデータを徹底利用して数兆億円規模の収益を上げるフェイスブックの体質は変わらないからだ。

情報と権力の非対称性という根源的な問題は温存される。そして、それはユーザーとの関係性が歪み、持続性に欠けるため、必ず再び問題化して頭をもたげる。

■プロファイリングは一方通行

フェイスブックは、セキュリティのためと称してユーザーから提供される電話番号や、フェイスブックのメッセンジャーや傘下インスタグラムにおけるアクティビティの内容も、アンドロイドスマホにおける通話記録やメッセージの中身も、訪問したウェブサイトの履歴も、すべてを追跡・記録して、ユーザーの知らぬ間に広告対象としてのユーザー像を組み立てるために使っている。

加えて、フェイスブックは、プラットフォームでつながった他サイトやアプリを通じてデータを収集している。「いいね」ボタンやウィジェット、フェイスブック上の広告からも、あらゆるシーンでデータは収集・分析されている。

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▲写真 フェイスブック本社 Flickr : Anthony Quintano

だが、ザッカーバーグCEO自身はそのような追跡や分析から逃れている。彼の認証済みフェイスブックページを見ると、フォロワーが1億652万人以上いることが分かるが、「友達」はだれもいない。ユーザーの性向や嗜好を知るために必須の「友達」が、誰か分からないのである。

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▲写真 マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO) 出典 ザッカーバーグ氏Facebookページ

ザッカーバーグ氏はユーザーの関係性を知り尽くしているが、ユーザー(あるいは同氏のプロファイリングをしたい人物)は、彼の交友関係をフェイスブック上で調べることはできない。ユーザーのプロファイリングは関係性抜きでは不完全なものとなるため、この非対称性は決定的な力の格差を生む。「友達」を隠すのは、204万人のフォロワーを抱えるシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)も同じだ。

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▲写真 シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)出典 cellanr

なぜ隠すのだろうか。巨大企業の長であるから、また殺到する友達リクエストから解放されるためという言い訳も立つだろう。だが、そうであるなら、世界第3位の経済大国である日本の、我らが安倍晋三総理はどうか。58万8千人のフォロワーを持つ安倍晋三総理は、「友達」を隠していない。オープンである。総理の思想傾向や嗜好が、「友達」から一発で分かってしまう。

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▲写真 安倍首相 出典 安倍氏Facebookページ

アッキーこと明恵夫人が「友達」であることは当然として、他の「友達」はほとんどが自民党関係者と見られ、首相とのツーショットをプロフィール写真にしている人も多く見かける。さすが「お友達内閣の長」と揶揄されるだけのことはある。そのなかで、愛くるしいうさぎを抱いた片山さつき氏が出てくるのは、ご愛敬だ。

他にも、タレントである「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳氏や米国務省元日本部長のケビン・メア氏、弁護士のケント・ギルバート氏も「友達」だ。さらに、あるクラブのオーナーママが「友達」なのも微笑ましい。

一国の総理の交友関係がこれほどオープンになることは、国防上・防諜上好ましくないのではとも思えるが、「オープンな世界を作ることが夢」と公言するザッカーバーグ氏の自己矛盾に比較すれば、安倍首相は開放性を実践しており、(モリカケ問題などを除けば)民主主義を体現している。ザッカーバーグCEOが安倍首相並みのオープンさを見せれば、フェイスブックへの信頼が少しは回復するかもしれない。

■ザッカーバーグCEO専用の削除機能

こうしたなか、ザッカーバーグCEOとユーザーの決定的な力の格差は、さらに露骨な形で現れている。フェイスブック付属のメッセンジャーから、ユーザー受信者に何の通知もなく、ザッカーバーグCEOからのメッセージが削除された。過去の都合の悪い発言をなかったことにするため、受信者の許可も得ずに、自分のメッセージだけをユーザーの受信箱から削除したのだ。ユーザーにはないCEO特権である。

この件で非難の嵐が巻き起こり、フェイスブックは慌てて、この取り消し機能を一般ユーザーも使えるようにすると発表した。だが、後付け処置であることは否めない。

さらに、メッセンジャーでやりとりされた全てのメッセージや写真の内容を検閲し、児童ポルノなど違法なものを削除していることも判明し、同社の権力の絶大さが改めて認識されている。また、同社のアプリで「何かを許可しないと何かの機能が働かない」との表示が出て、本当は必要のないデータまでフェイスブックに渡す選択を強いる仕様が強い批判を浴びている。実質上「はい」の選択しかない「選択」など、選択ではないからだ。

オープンで民主的であり、「感情」が大切にされる交流サイトであるはずのフェイスブックの真の姿は、情報と権力の非対称性であることが明らかになってきた。のぞき放題、もうけ放題、やりたい放題、だがザッカーバーグCEOの情報は守り放題だと見られれば、ユーザーの理解を得ることは難しくなる。

■民主主義ITモデルの勝利か

こうしたなか、サンドバーグCOOが「広告ターゲティングの対象になりたくないユーザーのため、広告表示なしのフェイスブックを有償提供することも考えている」と発言した。

しかし、そのようなバージョンで個人情報の収集や分析が行われないのかについて、同COOは言及を避けた。また、フェイスブックの構造上、「友達」とのつながりや個人ページ閲覧のデータは蓄積されるため、やはりフェイスブックがユーザー以上にユーザーのことを知っているという構図に変わりはない。それを利用してフェイスブックが収益をあげても、それでも料金を課すのかを公表する必要があるだろう。

りそな銀行のチーフ・マーケット・ストラテジストである黒瀬浩一氏は、「(フェイスブックなど米IT大手の)競争力が低下する規制強化は回避されなければならない」とする。中国のデータ統制による非民主主義的な資本主義の統治モデルを勝利させないためである。

だが、民主主義を標榜する米国のフェイスブックは情報と権力の非対称性に特徴づけられ、構造的に一方通行だ。フェイスブックはオープンさと公平さと平等性において非民主主義的であり、中国の統治モデルと本質的に変わらないのではないか。ザッカーバーグCEOの議会証言は、同氏の論点そらしにもかかわらず、民主主義ITモデルの矛盾点を浮かび上がらせるものとなろう。

 (了。の続き)

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