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前代未聞、1トピックに3種類の記事提供サイト

トランプ大統領が使い出した<fake news>という単語、すっかり人口に膾炙し、当たり前の感覚になったのでしょうか?

今週初め、米国のMonmouth大世論調査研究所が公表した最新調査によると、「米国人の77%が、大手の新聞、テレビはfake newsを報じていると信じている」という結果になったそうです。

党派的な違いも顕著で、民主党支持者間では、誤った情報(misinformation)をメディアが広めているとする人は61%ですが、共和党支持者では89%にも達しました。昨年は、それぞれ43%と79%でした。

そこで思い出したのが、昨年1月に、お馴染みPew Research Centerが公表したデータでした。前年の大統領選で有権者が、政治ニュースをどこから入手していたかを問われて、クリントンに投票した人はCNN(18%)のほかMSNBC、ABC、NYタイムズなど様々なリベラル系のメディアを挙げたのに対し、トランプへ投票した人はFoxNewsが40%とダントツでした。

民主、共和支持者間でリベラル系か保守系かのメディア選択の相違が著しく、それが、自らが接しないメディアは<fake news>を垂れ流しているという”思い込み”に繋がっているという構図でしょうか。

そんな空気の中で新たに登場したのがKnowhereという新たなニュースサイトです。4月7日付けの「政治」セクションのトップ記事はこれ。

一見、他のニュースサイトと変わりません。トランプ大統領は昨年、就任直後に対立していたホワイトハウス記者会主催の晩餐会に慣例を破って出席せず、今年もサボる、という記事ですが、トランプの写真の上に「Impartial」(公平、公正)とあって、左右に小さく「Left」「Right」ともあるのに注目してください。

Leftの文字列をクリックすると、こういう記事になります。

で、Rightの文字列をクリックするとこれ。

同じことを伝えていますが、2つめの「Left」の記事についた見出しは「トランプは2年目も、記者会晩餐会に剣突を食わせた」と、なんだかトランプをヒールに仕立てたような印象を与えます。しかし、3つめの「Right」の記事では、「今年は、サンダース報道官が出席する」と、記者会に歩み寄った印象の見出しです。

記事本文も見出しに添って、ニュアンスを変えていますので、ご興味のある方はぜひ、ご一読ください。

つまり、この新顔ニュースサイトKnowhereは、政治記事については全て「左翼」「中立」「右翼」的観点から書かれた3つのバージョンを用意するという前代未聞の試みをしているのです。

さらに、記事の末尾には、そのトピックを伝えたメディアの記事の一覧が表示される仕組みで、この件ではワシントンポストなど8つの元記事が列記されています。

これを紹介したMotherboardの記事によると、共同創立者にして編集長のNathaniel Bailing氏は「Fake newsやロシアの意図的誤報スキャンダルなどなど、今はあまりに情報が早く動き、スケールも広がる中で、個人がニュースを解析し、理解するのが大変になっている時代だ。そこで、完全に公正なニュースは難しいが、多面的にニュースを報じることにした。これこそが未来のジャーナリズムだ」という趣旨のことを語っています。

Bailing氏によると、Knowhereは自ら取材をするニュースサイトではなく、「数千」にも及ぶというニュースサイトから、ほぼリアルタイムで新たなニュース記事を収集し、それをトピックごとに分類、データベース化して、載せるべきトピックをキマて行くそうです。

そして、編集者が、AI(人工知能)を駆使、独自のソフトと自然言語生成技術で、3つのバージョンを作り上げて行くのだとか。その過程で、少なくとも2人の編集者が、エラーがないかなどをチェックする仕組みだそう。

fake newsの拡散に加担しないように、あるトピックについて、NYタイムズといった、少なくとも5つの信頼できるサイトが記事を出すまでは公表しないという方法をとっているとしています。

Knowhereはバンチャーキャピタルからの投資を受けており、Bailing氏は「これこそがジャーナリズムの本当の未来を築こうとするものだ。ラジカルな変革が起きている」などと意気軒昂。将来は有料購読、記事のメタデータの販売などのビジネスプランを持っているとか。

しかし、Motherboardの記事では、AIに詳しいニューヨーク大学教授の「人間参加型(human in the loop)のシステムがジャーナリズムの未来だと思うが、マシンではなく人間がその中心にいなければならない。しかし、彼らは他人のオリジナル記事をマシンでリライトしているに過ぎない。それは報道じゃない」という批判的な見方も紹介しています。

それに、マシンでリライトすれば著作権問題がクリアできるのか、という疑問もあります。でも、ニュースアグリゲーターサイトの一つの進化形として興味深くもあります。なんだか「朝日」「日経」「読売」を並べて読むような感じが得られそうですから。

あ、そういえば日本には、この3社による「あらたにす」というニュースサイトがありましたね。2008年スタートで4年後に終了しました。考えてみれば、時代を先取りしてたのかも。

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