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社会保障と税制(1)

これまで政府与党内で行われてきた、税と社会保障の一体改革に関する議論は、通常国会での大きなテーマとなりますが、国会での議論に入る前に私自身の基本的な考え方を述べておこうと思います。

言うまでもなく、財政健全化と社会保障制度改革は、経済面で日本が解決しなければならない大きな問題です。この二つは非常に密接に結びついており、だからこそ政府も税と社会保障の一体改革として形だけでも取り組んできているのです。何故この二つが密接に結びついているのか、まずそこの確認をしておきましょう。その為には、国家予算を見てみれば一目瞭然です。

平成23年度の当初予算ベースで見ると、一般会計の歳出は全部で92.4兆円で、そのうちの基礎的財政収支と呼ばれる部分が70.9兆円です。これは、予算総額から国債関連費などを除いたものです。この70.9兆円のうち、社会保障費が28.7兆円にもなります。社会保障費は大きいというだけではなく、年々増加しているという特徴があります。これは同じ給付水準で高齢化が進めば当然のことですが、23年度では約1.4兆円増加しました。他の予算項目がすべて前年度比据え置きや削減を目指している中、「自然増」が続いている唯一の項目です。

ちなみに歳入側を見てみると、23年度の予算ベースでは租税・印紙収入が40.9兆円、税外収入が7.2兆円です。国家財政は基本的に租税収入を歳入のベースにしていかなければなりませんから、40.9兆円の収入で70.9兆円の支出をし、そのうち28.7兆円が増え続ける社会保障費というのがざっくりした姿です。

また、一般会計と特別会計を合算して見てみると、23年度では全体で220.3兆円の規模になっています。この中で一番大きな歳出項目は償還や利払いの国債費で82.2兆円です。その次が社会保障関連で75.0兆円です。その他、地方交付税が18.9兆円、財政投融資が15.2兆円とあり、公共事業や防衛費、文教費などは合計で28.9兆円しかありません。

社会保障給付の全体に注目してみますと、実は社会保障は全額が国の負担となっているわけではなく、地方、企業、個人が税や保険料のかたちで相当部分を負担しています。平成23年度で見ると、社会保障給付全体で支払いが107.8兆円になっています。このうち、年金が53.6兆円、医療が33.6兆円、介護・福祉他が20.6兆円です。社会保障にかかるお金は給付金だけではなく、関連費用もあります。

社会保障給付に使う財源としては、一番大きなものが保険料で59.6兆円で、国税、地方税の負担が合わせて39.4兆円。これだけだと99兆円ですので残りをなんとか資産運用収入でという状態です。実際には積立金の取り崩しを行って帳尻を合わせています。

このように見てくると、いかに社会保障関連の支出が、額だけではなく国家予算に占める割合としても大きいかがおわかりいただけると思います。日本の財政を考えるときに本丸とも言えるのが社会保障関連費なのです。しかも今後の高齢化に従って、何もしなければ支出はどんどん増えていきます。その様なことをふまえ、平成21年の税制改正で(最近よく言及される附則104条です)平成23年度までに抜本的な税制改革を行う為の法制上の措置を講ずることが定められ、さらに消費税の全額が「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充てられること」を前提として消費税の税率を検討することが定められました。

さて、最初に財政健全化と社会保障改革という二つの問題を日本は解決していかなければならないと書きました。そして、社会保障関連支出が額としても割合としても非常に大きなものなので、財政健全化と社会保障改革は密接に結びついていると言うことをご説明しました。それでは、何故財政健全化が必要なのでしょうか。

財政健全化というのは、国の借金を減らすことです。日本の毎年の財政赤字や累積された政府債務が莫大な量に上っていることは周知の事実です。しかし、今のところ日本国債の市場は安定しており金利も低いままです。勿論何時何が起こるかわかりませんので、債務管理は慎重に行わなければなりませんが、ギリシャやイタリア、スペインなどが大変なことになっているから財政健全化が必要だという単純な話だけでは無いのです。

財政を中長期的には健全化させなければならない二つの大きな理由があります。第一に、政府の財政出動余力の確保です。東日本大震災や、リーマンショックなど、大きな財政出動が求められる局面が続きました。今後も不安定な世界情勢が続き、グローバル化の影響によって世界各地での出来事が日本経済に影響を与えることが予想されるならば、政府が財政支出を一時的に拡大する余力が重要になります。伸びきったゴムはそれ以上伸ばせません。何とかして一旦ゴムを弛ませなければならないのです。

もう一つの理由は、政府が大きな借金を抱え続けると言うことは、それだけ民間に資金が流れないということです。民間における資金需要が少ないから銀行は貸し出しができず国債を買っていると言われますが、鶏と玉子のようなところもあります。明らかに言えることは、国内の資金供給(貯蓄)は政府に貸し出される(国債)か民間に貸し出されるかのどちらかになりますから、政府借入が多ければ民間借入は大きくなれません。あるいは、民間借入が大きくなり始めれば政府借入は縮小せざるを得ず、それがスムーズにできなければ金利の暴騰を招きかねません。その意味でも、政府の借金は中長期的には減らしていく必要があるのです。

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