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常に経済よりも政治が優先する中国 - 澁谷 司

 周知の通り、今年(2018年)3月末、金正恩委員長が電撃訪中を果たした。

 米国を中心とした国際社会が、北朝鮮に対し経済制裁を厳しく行った。その結果、北の経済が行き詰まったと考えられる。そこで、金委員長は(個人的には大嫌いな)習近平主席に泣きついたという構図だろう。

 これを契機に、中国共産党は、北朝鮮へカネ・食糧・エネルギーの支援を再開したと考えられる。もし北朝鮮が米国に挑発行為を継続し、米朝戦争(第2次朝鮮戦争)が勃発したら、同党としては迷惑千万だろう。北朝鮮への援助で済めば、それに越したことはない。

 一方、習近平政権としては、再び北朝鮮への影響力を行使できる(「北カード」を掌中に収める)ので、金正恩訪中は大歓迎だったのではないか。

 さて、その北京での中朝首脳晩餐会で、何と1本が128万元(約2176万円)もする茅台酒(1960~80年代限定の「矮嘴」)が2本(約4352万円)振舞われた事実が発覚した。習近平主席は金正恩委員長に対し大盤振舞いをしたのである(「国賓級」待遇だったのは間違いない)。

 また、習主席は、金委員長に対し総額183.5万元(約3120万円)にのぼる贈物を、また、彭麗媛夫人は、李雪主夫人に対して総額63.6万元(約1081万円)に及ぶ贈物をしたと見られる。

 実は、2012年12月、習近平総書記が就任して間もなく、中央政治局会議が開催された。その際、「中央8項規定」(「習8条」)を採決した。第8項では、勤勉・節約を奨励している。そのため、「習8条」は別名「贅沢禁止令」とも呼ばれている。

 2017年12月2日付『多維新聞』の報道によれば、「贅沢禁止令」が公布されて以来、約5年間で1日平均140人以上が処分を受けたという。2012年12月から2017年10月まで約5年間で、違反件数が約19.3万件、処分を受けた人数が26.3万人近くにのぼる。

 ところが、中国国内で国際イベントが開催されるたびに、習近平主席は、「贅沢禁止令」を無視した。例えば、2014年11月の北京APEC、2016年9月のG20杭州サミット、2017年8月の新興5ヵ国(BRICS)首脳会議では、毎回、数兆円が投入されたと言われる。

 中国では、常に政治の論理が経済の論理より優先される傾向がある。また、法令やルールは軽視される。ただ、習近平政権樹立後、それが目立つ。

 ところで、昨今、国有企業はもとより、民間企業・外資系企業でも(王滬寧が創造した)「習近平思想」学習が義務付けられた。だが、たとえ「習近平思想」を勉強しても、果たして企業の業績が伸びるだろうか。

 また、重要な企業決定に関しては、いちいち中国共産党にお伺いして、同党が決定を行う。同党は、いつから「神」になり、正確な経営判断を行えるようになったのだろうか。大きな疑問符がつく。

 このように、政治優先の経済は、成長するだろうか。無論、答えは否である。それどころか、政治が経済の足を引っ張るに違いない。

 我が国の一部マスメディアは、相変わらず、中国共産党の“創作”したGDPを殆ど検証もせず垂れ流している。同党は自ら、近年一部地方(ほぼ全省市?)のGDPを20%程度水増ししたと認めている。それにも拘らず、彼らは、本当に中国のGDPが未だ6%台だと信じているのだろうか。

 直近では、2015年、中国経済はマイナス成長だった事はほぼ間違いない。

 何故か。基本的な重要数字を見れば明らかである。例えば、(1)貿易額がマイナス7%成長、(2)総発電量がマイナス3.0%成長、(3)貨物輸送量がマイナス5.0%成長、(4)固定資産投資が前年(2014年)の15.0%から10.0%と下降。これらを見れば、同年、GDP6.9%の達成は殆ど不可能ではないだろうか。

 以上のように、最近、中国の景気は良くない。そのため、習近平政権は我が国へ秋波を送って来ている。北京は、余程苦しいのではないか。

 また、習政権は、今年2月末、新対台湾政策「恵台(台湾に恩恵を与える)31項」を発表した。台湾との「平和統一」を見据えた措置だと考えられる。しかし、ひょっとすると、これも北京が台湾からの投資を引き出すために打ち出した“苦肉の策”かもしれない。

 今後、「米中貿易戦争」が更にエスカレートすれば、出超の中国が圧倒的に不利となるだろう。中国経済は、輸出依存度が高いからである。

 以上のように、暫く中国の景気は回復するまでに、かなりの時間がかかるに違いない。

澁谷 司(しぶや つかさ)
1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。2004~05年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011~2014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、同大学海外事情研究所教授。
専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

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