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ソブリンリスクとは何か

 信用リスクとは、どこかに貸したお金が約束どおり返ってこないとか、あるいは購入した債券の利息や償還金をあらかじめ決められた条件で支払うことができなくなる(債務不履行)リスクのことを示す。信用リスクはデフォルトリスクといった使われ方もするが、企業が倒産したり、国の財政が破綻してしまうケースだけでなく、倒産する可能性が高くなることで債券の価格が下落することなども信用リスクに含まれる。

 債券市場における信用リスクは、市場においてリスクフリー金利に上乗せされるプレミアムといった形で表され、それはひとつの信頼感の証とも言える。債券の発行体などに対してどの程度信用できるかはその上乗せ金利(スプレッド)という数字で表現される。その元になるリスクフリー金利は通常、国債の金利となっている。

 そして、国債にも信用リスクが存在し、それはソブリンリスクもしくはカントリーリスクと呼ばれる。ソブリンリスクとは政府などに対する融資のリスクを意味し、ソブリン債は政府もしくは政府機関の発行する債券のことを示す。これに対してカントリーリスクとは海外投融資や貿易の対象となる相手国の政治、社会、経済などの環境に基づいた信用度の事である。

 信用リスクを確認するために使われるものに格付がある。格付けとは、債券などの元本や利息が、約定通りに支払われるかどうかの確実性を、専門的な第三者である格付け会社が評価して段階的に表示したものである。格付け会社は企業の格付けのほかに、独自でソブリンの格付けを実施している(勝手格付け)。

 債券が債務不履行(デフォルト)に陥るリスクに備える保証料を示すCDS スプレッドも信用リスクを見るためのひとつ参考になる。通常5年物国債のCDSスプレッドが取引されている。この場合のCDSスプレッドとは、その5年物国債の年間保証料といえるものである。ただしCDS市場そのものの規模は小さく、参加者も債券市場に比べて極めて限定的である。このためソブリンのCDS スプレッドの変化については思惑的な動きによることも多く注意する必要がある。

 ソブリンリスクが意識された例として、1990年代後半の世界的な通貨危機があった。1998年1月にタイのバーツが暴落したのを受けたのを契機に、通貨不安がインドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、香港などアジア新興地域を襲った(アジア危機)。アジア諸国の動揺は、南米諸国やロシアに波及した。特にロシアは、財政悪化と主要産業である天然資源の価格下落を受けて、ルーブルの価値下落に歯止めをかけられず、対外債務の支払いを90日間停止した。この債務不履行は国外への資金流出に拍車をかけ、混乱を極めたのである(ロシア危機)。

 そして2010年にユーロ圏における信用不安が発生した。2010年1月に欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、ギリシャの財政状況の悪化が表面化したのである。格付け会社によるギリシャ国債の格付けの相次ぐ引き下げからギリシャ国債は暴落し世界全体な株価下落へとつながった。これをきっかけにユーロ圏諸国の信用不安が引き起こされ、ギリシャ以外にもスペインやポルトガル、イタリアなどの国債も大きく売られたのである。外為市場ではユーロが対主要通貨に対して大きく下落した。

 こうしたユーロ圏におけるソブリン危機により、安全資産としてユーロ域内ではドイツ国債が買われ、また米国債、英国債が買い進まれ、そして日本国債にも海外投資家からの買いが入ったのである。

 ユーロという単一通貨でありながら財政主権は各国に残されていたことなどが影響し、ギリシャに対する信用低下による国債価格の下落は、ポルトガル、スペイン、イタリアといった財政が悪化していた国に波及し、それらの国の国債を保有しているユーロ圏内の銀行にも影響を与えかねないとして、フランスなどにも影響が広がったのである。

 日本については、ユーロの信用不安による直接的な影響は限定的であった。このため、むしろ安全資産として円や日本国債が買われる結果となった。GDPに対する債務残高ではOECD諸国の中で日本は突出して大きくなっているが、国債の利回りを見てもソブリンリスク、つまり国の信用リスクについてはほとんど無視されている状況が続いている。

 これには日本の国債の95%近くが国内の資金によって賄われるなど、国内資金でカバーできる間は需給に対する不安がなく、デフレなどにより国内資金も国債に向かいやすい状況となっていることが大きな要因となっている。

 ただし、今後は日本の経常黒字の減少も懸念されており、また、国家予算の半分近くを借金で占めるような状況がこのまま何年間も継続できることも考えづらい。いずれ日本のソブリンリスクが市場で認識され、それが国債の利回りに反映されてくる可能性については否定できないと思われる。

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