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安倍外交の成果を問う

 トランプ大統領は選挙期間中から、「貿易赤字が米国の雇用を奪っている、貿易赤字の原因は相手国の不公正な政策のためである」と、訴え続けてきました。そして、相手国の政策の変更を求め、聞かない場合には関税をかけ、赤字の削減を求めると宣言していました。

 大統領の反自由貿易姿勢は、長年抱いてきた筋金入りの信念でしょう。しかし、この考え方は根本的に間違っています。米国は貯蓄率が低く、旺盛な消費によって消費財の輸入規模が大きい国です。一方、賃金等の生産コストの上昇により、製造業は比較優位を失い、競争力が低下しています。この米国の経済構造こそが、輸出の減少・輸入の増加を招き、赤字の要因となっています。

 単に関税をかけ輸入を減らすという手法は、真の貿易赤字対策にはなりません。報復合戦が始まり、保護主義が連鎖拡大すれば、世界中が不利益を被ることになります。

 しかし、米国は3月23日、鉄鋼輸入への関税25%とアルミニウム輸入への関税10%を課す措置を発動しました。本年11月に中間選挙(大統領選挙の中間の年、4年に1度実施される上下両院議員の選挙)が行われますので、トランプ支持層にアピールしようという狙いでしょう。

 自国中心主義の「米国第一」よりも、もっと了見の狭い「支持者ファースト」といえる愚行です。しかし、各国は大統領を翻意させることも有効な対策を講じることもせず、関税措置の適用免除を得ようと躍起になりました。そして、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、欧州連合(EU)、メキシコ、韓国は関税の適用を免れました。

 今回適用を免れた国々はみな、安全保障上の脅威を理由に米国が課した関税について、自国の輸出は米国の国家安全保障を脅かすことはないと強調したようです。国家安全保障のリスクという観点からすれば、日本の鉄鋼等の輸出もそのようなリスクはないはずです。けれども、日本は中国やロシア等と同様に関税措置の対象となってしまいました。

 世界のリーダーの中で安倍総理ほどトランプ大統領との協調に前向きな人物はいなかったはずです。総理は大統領就任前のトランプ氏と他国の指導者に先駆けて真っ先に会談しました。その後も、彼の別荘を訪ねたり、一緒にゴルフに興じたり…。日米首脳間の個人的信頼関係は、日本外交にとって当面の好条件だと思われていました。

 ところが、「日本の安倍総理らは、これほど長く、米国を上手く利用できるなんて信じられないとほくそ笑んでいるだろう。だが、こうした日々はもう終わりだ」と、トランプ大統領は言い放ちました。日本の対米黒字を標的にした2国間交渉を仕掛ける腹でしょう。

 大統領自らが選んだ政府高官が次々とくび、あるいは辞任しています。同盟国といえども「トモダチ」などという生ぬるい関係ではなく、不利な政策転換が冷徹に迫られる可能性が大だと覚悟しておくべきでしょう。

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