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焦点:金正恩氏の電撃訪中、米朝会談に向けた足場固めか

Christian Shepherd and Heekyong Yang

[北京/ソウル 28日 ロイター」 - 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が訪中し、離れつつあった冷戦時代からの同盟国・中国との関係の修復に動いたことは、トランプ米大統領との首脳会談に向けて、北朝鮮の交渉の足場を強化することになりそうだ。

中国の習近平国家主席にとっては、問題を起こしてばかりの隣国の首脳と会談することで、米朝首脳会談で何らかの合意が打ち出される場合に「蚊帳の外」に置かれる事態を防ぐ狙いがあった、と専門家は指摘する。

正恩氏の極秘訪門により、冷え切っていた中朝関係が、唐突に雪解けを迎えたようにみえる。謎めいた北朝鮮代表団の移動に合わせて、北京の街には厳戒態勢が敷かれた。

中国側が、正恩氏から朝鮮半島の非核化について誓約を得たと語る一方で、北朝鮮国営メディアは、習主席が平壌への招待を「喜んで」受け入れたと報じた。

正恩氏と習氏の会談には、中朝両国の足並みをそろえ、史上初となる米朝首脳会談に向けて、北朝鮮が強い立場で交渉に臨むことを可能にする効果がある、と北京にある察哈爾(チャハル)学会の北朝鮮専門家Wang Peng氏は言う。

「北朝鮮は保障を求めている。中国との関係を早急に改善することで、米国により余裕をもって対峙し、好ましい結果を得る自信を持ちたがっている」と、Wang氏は分析する。

北朝鮮は国連の制裁強化によって打撃を受けており、貿易制裁の緩和を実現するには中国政府の支持が必要だとアナリストは指摘する。

中国には、北朝鮮の友好国としての自身の重要性を示し、米国と韓国による交渉によって脇に追いやられる懸念を和らげる意図があった。

「結局のところ、中国は非常に大きな関心を抱いており、交渉のテーブルに着けないことを快く思っていなかった」。カーネギー清華グローバル政策センターのディレクターで、2007─2009年に行われた北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議でホワイトハウスの代表を務めたポール・ヘンリー氏はそう指摘する。

「金正恩が会談した最初の外国首脳は、中国の国家主席だった。率直に言って、中国の立場からすればこれは非常に正しい行動だ」と、同氏は付け加えた。

ジョン・ボルトン元国連大使のような強硬派を新たに大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に起用したトランプ氏の決断も、米朝首脳会談に向け北朝鮮に対する圧力を高めた可能性があると、韓国の延世大の中国専門家、韓碩熙(ハン・スッキ)教授は言う。

「長年の同盟国である中国の支持と助けなしには、北朝鮮には米国と対峙する準備ができていないようにみえる」と同教授は語る。

<蜜月復活か>

中国は、北朝鮮の最大の貿易相手国であるだけではない。2万8500人の米軍が駐留する韓国との間に、北朝鮮という孤立した緩衝地帯を維持することに、中国は大きな戦略的関心を抱いている。

中朝両国には、長年に渡る深い絆がある。中国は、1950-53年の朝鮮戦争を共に戦った北朝鮮のことを「血を分けた兄弟」と呼ぶこともある。

両国は、朝鮮戦争後の数十年間、緊密な関係を保っていたが、正恩氏が権力の座に就いてからは、距離が生まれていた。

北朝鮮による核・ミサイル実験の急速な拡大に、昨年マレーシアの空港で正恩氏の義兄が暗殺された事件が重なり、中朝の外交関係は歴史的な低位にあった。

厳しくなる一方の国連による北朝鮮制裁に中国が同調したことを受け、北朝鮮の国営メディアは大っぴらに中国批判を展開し、時には脅すことすらあった。

「中国は、北朝鮮の経済的苦境を即座に和らげる能力と意思のある唯一の国だ」と、インターナショナル・クライシス・グループのシニアアドバイザ-、クリストファー・グリーン氏は言う。

経済的、政治的な中国依存を不本意に感じつつも、北朝鮮は中国との緊密な関係を手放す意図はなかったと、同氏は付け加えた。

韓国平昌で開催された冬季五輪を契機に南北関係が改善に向かい、トランプ大統領と正恩氏、そして韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が参加する首脳会談の計画が浮上する中、中国には、昨年以来ほぼ断絶していた北朝鮮との接触を再開する理由があった。

習主席は正恩氏に対し、過去の中朝指導者が「親戚の様に頻繁に」相互訪問を実施していたと述べ、両国指導者が新たな連絡手段を開設するよう提案したと、中国国営の新華社通信は28日報じた。

中国国営メディアは、北朝鮮が核とミサイル実験を停止し、米韓が軍事訓練を中断するという「凍結には凍結」というアプローチを中国政府が提案したことが、米朝会談の実施合意に不可欠な役割を果たしたと強調している。

「中国の支持や参加なしに、北朝鮮が示した前提条件を満たす実現可能な非核化プロセスの道筋を米国が示すのは極めて困難だ」と、中国人民大学の北朝鮮専門家Cheng Xiaoheは言う。「中国は、同国を置き去りにすることはできないと、示したがっている」

<必要な友人>

習主席主催の晩さん会で、正恩氏は、訪中の打診を快く受け入れ、短期間に上首尾な訪問に向けた準備を整えた中国指導部に対する感謝の言葉を述べたと、北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は伝えた。

中国政府は、北朝鮮に対する圧力と対話の双方を重視する戦略を依然支持しており、圧力の最大化を目指すトランプ政権とは路線が異なる。

この違いが原因で、北朝鮮情勢が緊迫する中、同国に圧力をかけて譲歩を迫ろうとカナダで開催された国際外相会議の参加を見送るなど、中国が脇に追いやられる場面もあった。

通商摩擦や南シナ海の領有権問題を巡り緊迫する米中関係を利用し、北朝鮮が中国を引きつけようとしている可能性もある、と北京大国際関係学院院長で、政府に外交政策の助言も行う賈慶国氏は言う。

「中国は北朝鮮の非核化を望んでいるが、米中関係が急速に悪化している時に、北朝鮮を遠ざけようとは考えていない」と賈氏は語る「北朝鮮を非核化させたいが、同時に、北朝鮮の友人でもありたいと考えている」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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