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子ども引渡しの強制執行

読売online:子供の強制引き渡し、年120件…家裁決定で

 子どもの引渡しを命じる家裁審判の強制執行は、間接強制と直接強制とがありうるが、そのうち直接強制が年120件行われていたというニュースである。

もっとも、記事の中では「最高裁が10年の執行の実態を調査した結果、全国の地裁で計120件の直接強制が実施され、このうち58件(48%)で実際に子供が引き渡されていた」とあり、これを素直に読めば10年間で120件ということになるが、前半部分では「裁判所の執行官が子供を一方の親に引き渡す「直接強制」が、2010年に全国で120件行われていたことが最高裁による初の調査で明らかになった」とあり、一体どっちなんだと疑問だ。

直接確かめる統計を持ち合わせていないが、手がかりとなる数字としては、平成20年に子どもの引渡しを命じる審判前の保全処分が597件申し立てられており、同年の認容率は既済事件に対してではあるが、約4分の1となっている。つまり審判前の保全処分の段階で年に120件程度の引渡しを命じる决定がでている。これに審判で命じられたものも相当数あるとすると、執行に進んだのが年に120件というのも頷けるところである。

それで、58%が実際に子どもを引渡し、残りは拒否されて執行できないでいるという報道だが、直接強制というと執行官が力づくで取り上げるシーン、あるいは抵抗を警察の援助を得て排除して無理やり取り上げるというシーンを想像していると、違和感があるかもしれない。

こうした無理矢理取り上げるシーンは子ども引渡し義務の直接強制に反対する人たちの抱いているイメージでもあろう。

実際には、子どもを抱きしめて離さない親から無理やり、体に手をかけて強制的に引き離すというようなことはしていないわけである。
この点は以前にも紹介した『民事執行における「子の引渡し」画像を見る』に詳しい。

それで直接強制といえるのかというと、直接強制というのは要するに執行官が現場に行って引き渡すよう働きかけるということから行われていて、最終的に抵抗を排除して実行するということを必ずしも意味するわけではない。
そして子どもの引渡しの強制執行は、当該子どもの心情に配慮する必要があり、傷を付けたら一大事であり、心理的な傷だって重大であり、子どもを物理的に引き離したり親を子どもの目の前で逮捕したりということは中々できることではない。従って、直接強制の手続の中でも、執行官が裁判所の决定で従わなければならないことを説得し、子ども引渡しに応じるように働きかけたり、あるいは子どもが一人でいるところを見計らって確保して、取り返そうとする債務者には説得をしたりと、そのような形で執行するのだ。

直接強制に反対する説というのは、このような説得を中心とする引渡しの働きかけを執行官が行うことも否定してしまうことになるので、その意味では妥当ではない。

なお、今この子どもの引渡しの強制執行が注目される背景には、当然ながら国際的子の奪取の民事面に関するハーグ条約に参加するための基盤整備ということがあるだろう。
同条約では子どもの引渡しを海外から求められる場合に、これに応じる手続が必要となる。現在の法制審議会の議論では、子どもの引渡し執行を間接強制で行うことでどうかと考えられていたが、海外の状況を見ると、それでは十分ではない。

少なくとも、上記のような説得を中心とする直接強制は行う必要がある。それを超えて、どこまで強制手段を働かせるか、学校や保育園などの協力を求められるようにするかどうか、警察力を用いるかどうか、特に裁判所の命令に反して子どもの引渡しをしないことを犯罪とするか(諸外国ではそうした法制が結構あるし、日本でも人身保護法はそういう法執行を用意している)、検討する選択肢は多彩にある。

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