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自民党「改憲案 「9条の2」を解釈する

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■自民党 憲法9条改正案 9条の2

自民党憲法改正推進本部は、現行憲法9条1項と2項を変更せずに、新たに「9条の2」を加える改憲案で行くという。

この憲法9条改正する趣旨を、安部首相は、「自衛隊の違憲論の余地をなくすため」と名言しています。言い換えれば「自衛隊と憲法9条との矛盾を解消する」ことです。

この「9条の2」を挿入すると、日本国憲法「第二 の戦争の放棄」は次のようになります。
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第9条の2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

2 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

■事実論 自衛隊の現実

法律解釈を離れて、自衛隊の「現実」を見てみましょう。
わが国の自衛隊は、2015年の「世界軍事力ランキング」(アメリカのグローバルファイヤーパワーという軍事力評価機関)では日本の軍事力(自衛隊)は世界第7位です。

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ちなみに、韓国は12位で、北朝鮮は23位だそうです。

自衛隊の保有する銃弾、砲弾、ミサイルは他の国と当然に同じものですから、この世界第7位の自衛隊が憲法9条2項が禁止する「陸海空軍のその他の戦力」にあたらないことはありえません。この「現実」を誰も否定できないでしょう。

歴代政府は「自衛権を保持する以上、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは許容される」と解釈してきましたが、現実を踏まえるかぎり、説得力がありません。世界第7位にランクされる日本の自衛隊を「必要最小限度の実力」の範囲内と解釈するのは無理があります。

また、長谷川恭男教授や木村草太教授のような「自衛隊合憲論」の立場にたつ護憲派(現状維持的護憲派)の解釈も御都合主義であり、自衛隊の「現実」を前にしては何ら説得力はありません。この護憲派が言うような、「現行憲法でも自衛隊は合憲だ」との解釈は、憲法規範を軽視するものであり、立憲主義の観点から大いに疑問です。


憲法9条に矛盾する疑いのある軍事力(軍隊)を憲法で明記しないで放置し、「砂上の楼閣のような解釈」でごまかす「現状維持的な護憲派」の立場は、立憲主義の見地からは許容できないと思います。

■事実を踏まえる立憲主義の観点から

そうすると、「政治権力を縛る憲法」を重視する「立憲主義」の観点からは、憲法9条と自衛隊との関係について、論理的には次のどちらかの立場をとるしかないと思います。
A【自衛隊縮小ないし廃止】
 現行憲法の既判力を尊重して「自衛隊を廃止する又は戦力でないレベルまで自衛隊を縮小する」という方向

B【憲法改正して自衛隊を憲法に定める】
 憲法を改正して自衛隊の保有を明記する。
しかし、Aの自衛隊廃止は非現実的です。(自衛隊を廃止する現実的条件や実現可能性が存在しません。)

この点では、安部首相が自衛隊と憲法との関係を憲法上明確にしようというのは一理あると思います。

では、自民党案の9条の2を加えることが適切でしょうか。法律論として、自民党の提案する「9条の2」を解釈してみます。

■法律論として「9条の2」を考える

 法文を文理解釈して、この憲法9条改正案を検討してみます。
 9条と自衛隊との関係については、2014年7月の閣議決定の憲法解釈変更により、「限定的な集団的自衛権」を容認しました。これに基づく安保法制の改正により、憲法9条の下で許容される自衛措置行使の要件は次のように決められています(防衛省のウェブサイトの引用)。

【憲法第9条のもとで許容される自衛の措置としての「武力の行使」の新三要件】

◯ わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること

◯ これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと

◯ 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
ところで、新たな「9条の2」は「必要な自衛の措置」とのみ定めています

この条文には、現在の政府解釈の「わが国の存立を脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求権が根底から覆される明白の危険」や「必要最小限度の実力行使」という縛りは記載されていません。
そこで、9条2項の「戦力の禁止」定めが「9条の2」にも及ぶか(言い換えれば、9条の2が定める「必要な自衛の措置」も9条2項の「戦力」であってはならないと解釈されるのか)否かが問題となります。

文理解釈上は、肯定説と否定説が成り立つでしょう。

《否定説》
 9条の2の「必要な自衛の措置」は、9条2項の「戦力」禁止の例外として、戦力に該当しても許容されるとする見解。

 否定説の理由は、9条の2が改正で加えられる以上「後法優先の原則」から、9条2項の「戦力禁止」条項は、9条の2の「必要な自衛の措置」に及ばない。さらに、集団的自衛権は「国際法上の自衛権に含まれる」と現在の政府は解釈していますから、「わが国と密接な関係のある国への攻撃により、わが国の存立を危ぶむ場合」という限定もなくなり、法文上は、フルスペックの集団的自衛権の行使も許容できることなります。

《肯定説》
 9条の2の「必要な自衛の措置」にも9条2項の戦力禁止条項が及ぶのであり、「必要な自衛の措置」も「陸海空軍のその他の戦力」であってはならない(9条2項)とする見解。

 肯定説の理由は、そうでなければ9条2項は死文化することになってしまい、9条2項を廃止すると同然の結果となり、9条1項、2項を存続させた意味がなくなるからです。
肯定説だと、今後も9条の2を根拠に定められた自衛隊の自衛の措置も、戦力に該当しないかどうかが常に検討されることになり、結局、自衛隊ないし自衛権行使の範囲について、違憲論は引き続き憲法問題として続くことになり、安部首相の言う「自衛隊の違憲論の余地をなくす」という改正の趣旨は達成されません。そうなると、自民党の石破氏が言う通り、「じゃあ、何のために改憲するのか」ということになってしまいます。

そこで、仮に9条の2が国民投票の結果で承認されたとしたら、この9条の2追加の趣旨・目的が「自衛隊の違憲論の払拭」である以上、《否定説》を国民が承認したことになります(少なくとも、政府はそう解釈でするのは間違いない)。

そうなれば、9条の2が加えられた場合には、9条2項の「戦力禁止」条項は死文化してしまいます。法律で「必要な自衛の措置」の範囲を決めさえすれば、憲法9条2項の戦力禁止規定の効力は及ばないことになり、自衛の措置が必要最小限度であるか否かも、憲法上の要請ではなくなることになります。

これでは究極の権力の行使である「自衛の措置」(戦争を含む)を憲法でチェックできなくなり、立憲主義の観点からは賛成することはできません。

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