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「分厚い中間層」復活へ、社会保障の充実と公益資本主義

【世界に打って出る以外に道はない】
「日本の美しい農村を守る、伝統文化を守る、医療皆保険制度は堅持する」、時の総理の言葉でありますが、私も思いは全く同じです。TPPや税と社会保障の一体改革など、国の行く末を左右する重要な論争がなされる今、議論を本質的なものとするためにビジョンを語ることは不可欠です。
わが国の先人は、豊かで便利な文明社会を築いてきたわけですが、現実論として、私たちの社会を回すためには、資源小国である以上、エネルギー燃料や原材料を中心に相当な輸入をしなくてはなりません。
現在、わが国の輸入総額はざっと60兆円。中心は原油や天然ガスなど鉱物性燃料が約18兆円、食糧(小麦等)は約5兆円、医薬品や肥料などの化学製品が約5兆円と言ったところです。これらを購入するために、主に自動車をはじめとした輸出機器15兆円、機械・機器関連で25兆円等、加工品等、総額70兆円弱を輸出しています。近年、原油や天然ガスの高騰が続き、コストが上昇する一方で、円高や新興国の技術力も上がり、日本の輸出が脅かされています。我々は、厳しいグローバル競争に対峙せねばならぬ宿命にあります。従って、生きていくために輸入をせざるを得ない以上、世界に打って出る以外に道はないのです。

【雇用を守り、一定程度の輸出力を維持する】
企業の海外移転が進む要因は、円高の他、雇用のコスト競争力です。アジア新興国の賃金コストは、1人あたりの年収が50万円未満の地域も多く、5倍から10倍の差が出てきます。同じ製品を作るならば、断然、コストの安い国に工場を移転した方が競争力は高まります。しかし、国内雇用の流出は、わが国にとっての損失です。そこで、やむを得ず日本の雇用を守るために、企業は賃金コストを安く抑えることになります。
仮に労働コストを抑えずにそのまま操業したとすれば、韓国や中国、ベトナムなどに破れてしまいます。既に新興国の安い製品は、世界を席巻し、競争は激化しています。せめてわが国が比較優位を保つ分野での雇用を守り、一定程度の輸出力を保持しなければ、我々は今の生活を送ることができないのです。

【子育てや医療・福祉を厚くし、社会全体で支え合う】
結婚をして子どもを産み、教育を受けさせ老後を平穏に送る。この典型的な日本人のライフスタイルの前提は、終身雇用制と右肩上がりの賃金体系によるものでした。今、この前提が崩れつつある以上、子育てや老後を支える一定部分を、個人依存から社会全体でサポートするべきであると考えています。高校生や大学生を持つ親の家計は大変ですが、今の時代、親の年収は思うように増えていきません。そこで、高校無償化や給付型奨学金の創設をし、中間層が子育て費用で圧迫されないような社会をつくりたいと考えています。

【ヒントとなる考え方、「公益資本主義」】
「分厚い中間層」の復活は、厚い社会保障制度の上に成り立ちます。これは、政治の力によってのみ達成されるものではありません。経済社会のあり方も問われます。そのキーワードが「公益資本主義」です。公益資本主義とは、ベンチャー・キャピタリストの原丈人氏が唱える考え方で、「会社は社会の公器」と捉え、そこで働く従業員、顧客、取引先、地域社会への貢献をすることが会社の使命、とするものです。
一部にある、株主の短期的利益還元に走ったり、金融の本質的潤滑油機能よりも暴利を貪る姿勢には、危機感を覚えます。秩序なき競争の行く末は破滅です。私たちを幸せにする資本主義には、公益性が備わっているはずです。つまり、冒頭で触れた総理発言、「日本の美しい農村を守る、伝統文化を守る、医療皆保険制度は堅持する」は、資本主義と公益性がマッチした上でこそ達成できる価値観です。ビジョンを持ってこの国を守り、発展させる、そのために本年も邁進します!

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