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シンガポールが世界一高コストな都市である理由

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■世界一生活コストが高い都市、シンガポール

シンガポールが5年連続で世界一生活コストが高い都市に選ばれました

2位はパリとチューリッヒがタイ、4位香港、6位ソウル、10位シドニー。東京は前回7位から11位に。ドル安の影響でニューヨークも13位と順位を下げました。

そんなものなのかなとも思いますが、シンガポールで日常暮らしている身からすると、シンガポールと東京の生活費にそれほどの違いがあるとは思えません。それどころかシンガポール人には、東京は何でも高くてとても旅行になんか行けないと主張して譲らない人が少なくありません。

このギャップはどこからくるのか? 

シンガポールで最もコスト高なのは、記事中にもある車の価格。

シンガポール政府が台数を厳しくコントロールしているため、マイカーをもつには関税や登録料、車をもつ権利などの費用を支払わなければならず、日本と比べるとだいたい3〜4倍の費用がかかります。

我が家も8年前に4年落ちの中古日産サニーを購入しましたが、約450万円もしました。

もう一つは住居費。

東京23区内ほどの面積しかない国に世界中から人が集まってきますので、土地は貴重な資源です。シンガポールはアジアでは香港に次いで不動産価格が高いと言われますが、私の感覚ですとだいたい東京の2倍くらい。

例えば、日本人駐在員にも人気のオーチャード通りに近い新築マンションですと、3LDK90㎡で1億7千万円くらいから。ちょっと郊外でダウンタウンまで1時間弱程度のマンションでも1億円くらいから。田園調布に似た高級住宅街の一戸建てになると、20億円、30億円の物件はざらにあります。

外食や買い物も同様。

不動産価格が高いので家賃も高く、ショッピングモールや飲食店などのテナント料も当然高くなります。家賃分は商品やサービスに転嫁されますので、いま人気の日本のラーメン店でもラーメン1杯食べるだけで1,000円以上します。日本からの輸入食材には運賃もかかるので割高なのはわかりますが、さすがに明治屋でみかけた400円のおかめ納豆には手がでませんでした。

このように見ていくと、シンガポールで東京と同じような暮らしをしようとすれば非常に高くつくことがわかります。それもそのはずで、この調査は外国人駐在員がその都市で暮らした場合のコスト比較をしているのです。

駐在させる会社も事情はよくわかっていて、例えばある欧州企業では、アジア統括部門をシンガポールとマレーシアにおき、一定ランク以上の管理職はシンガポール勤務になるけれど、それ以下は同じ部署でもクアラ・ルンプールに駐在という規定だそうです。

■駐在員とシンガポール人の生活コストはこれだけ違う

ところが、一般のシンガポール人の生活コストはとなると、まったく話は違います。

まず、住居。

シンガポール人の8割が住むHDBという公団住宅はシンガポール人であれば購入できます(高級マンションに住んでいるシンガポール人もほとんどがマンション以外にHDBを所有しています)。

その価格はというと、90〜93㎡の3LDKで約2千万円〜3千万円程度といっきに東京より安くなります。

HDBには、ホーカーという屋台のフードコートが必ず併設されています。政府の持ち物なので家賃は安く、ここでローカルなラーメンなら300円もあれば食べられます。フードコートの隣にはウェットマーケットと呼ばれる市場もあって、朝は魚や肉、野菜などを買う人でごった返します。

また、大規模なHDBの中心地(ハブと呼ばれます)には地下鉄の駅や大きなバスターミナルがあり、公共交通機関は格安。地下鉄であれば片道100円前後、バスで短距離であれば2,30円で乗れますので、HDBに住む人の多くが通勤や通学に利用しています。

さらに駅ビルにはたいていFairPriceという政府傘下のスーパーマーケットがあり、シンガポール家庭料理に必要な食材はたいてい日本より安く(お隣のマレーシアやインドネシアからの輸入品が大半ですが、野菜や魚、調味料などシンガポール産も少なくありません)手に入ります。主食の米の価格も政府がコントロールしているので、いつも安定しています。

同様に、HDBハブの駅ビルやショッピングモールなどには個人営業のテナントが多く入っていて、食品以外の日用品や衣料品、その他の商品やサービスも手頃な値段で手に入ります。衣料品の価格はユニクロなどのファストファションよりも安い店が大半です。

要約すると、駐在員のような生活をすればシンガポールは世界一高コストな都市になりますが、公団住宅に住むシンガポール人の生活コストは東京よりもずっと安くあがるというのが実態なのです。

■外国人にお金を使わせて国民に還元するシンガポール方式

なぜこのようなダブルスタンダードがシンガポールで可能なのか?

それはひとえにシンガポール政府の政策のおかげです。

車の取得や維持にかかわる税金、土地のリース代(シンガポールはイギリス植民地でしたのでほとんどの土地が政府による99年リースになります)、固定資産税などなど、毎年政府には莫大な税収が入ります。外国人が高級マンションのテナントになれば、オーナー(たいていシンガポール人ですが外国人がマンションを買う場合には取得税が非常に高額)の家賃から所得税が入ります。

外国人がシンガポール国内で働くと所得税が納付されますし、外国人用のスーパーで買い物をしたり高級レストランで食事をすれば、お店の利益からも税収があります。

このように政府は所得が高い外国企業の外国人を呼び込んでシンガポールで働いてもらい、かつお金を使ってもらうことにより、国内産業を発展させかつ税金も得ているのです。そうして得た税金をもとに、政府は公団住宅や地下鉄などを整備してシンガポール国民に安価に提供。

つまり、外国人にとっては非常に生活コストが高いシンガポールでも、一般庶民にとっては物価が安くて暮らしやすい街になっているのです。

シンガポール国民の人口は2017年で344万人。これに対して、建設労働者やメイドなどを除く外国人労働者は37万人。

シンガポール国民の1割程度の数の外国人がシンガポールで働いて生活することにより、シンガポール国民の生活向上に貢献しているという非常に興味深いシステムの結果が、「世界で一番生活コストが高い都市シンガポール」の実情です。

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