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「人生を充実させるには”確率”を上げておくのが大事」~レジェンド山本昌が語る野球・趣味・セカンドキャリア…

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元プロ野球選手の山本昌氏(52)は2015年、50歳1カ月26日という日本球界最年長登板記録を樹立した。40歳を超えてなお一線で活躍し続け、プロ32年で一度も肩、肘を故障しなかった「レジェンド」の現役生活は、今もファンの間では語り草となっている。

現役を引退した現在は、プロ野球の解説だけでなく、野球の普及活動やラジコンレースにも携わるなど、多角的なセカンドキャリアを歩んでいる。

40歳前後の「ロスジェネ世代」が、いかに前向きに今後を歩んでいくか。今年1月に発売された著書「笑顔の習慣34 ~仕事と趣味と僕と野球~」にもつづられている人生のヒントを、あらためて語ってもらった。(取材・塩畑大輔 構成・永田 正行)

「周りに大変と思われることは、習慣にしてしまえばいい」

撮影:弘田充

――レジェンドのお話をうかがうということで、緊張しております

山本昌氏(以下敬称略):そんなことないでしょう(笑)。まあ、私も現役のときは緊張するほうで、引退するまで変わりませんでしたね。若い頃は、ベテランになったら緊張しなくなると思っていましたが、そんなことはなかった。「緊張はするんだ、付き合うしかない」と、40歳くらいで割り切りました。

――緊張との付き合い方とは

山本昌:最悪のことを想定してマウンドに上がり、想定した「最悪」にならないようにしていたんです。

結局、緊張感と言うのは、「恥をかきたくない」「がんばったから成功したい」「むくわれたい」といった気持ちだと思うので、勝負している以上はなくならない。だからうまく付き合えるようにと考えていました。

――昌さんの活躍に勇気をもらっていたであろう40代の会社員などは、社内での立場もあって、まさに「恥をかきたくない」と思いながら仕事をしていると思います。

山本昌:僕もベテランになるにつれ、そういう気持ちも芽生えてきました。でも同時に、表向きは偉ぶっている人も、実は失敗できない緊張感の中で、必死にやっているというのも見えてきました。みんな同じなんですよ。それを知ってすごく気楽になりました。

――誰もが弱さはかかえていると

山本昌:ミスしたらいけないんですけど、一方で誰にでもミスはある。だから大事なのは、恥ずかしくないミスの仕方ですかね。失敗したとしても、周囲は過程を見ていますから。

自分はベテランになってからは、すごい成績を上げたわけではないですが、それほど批判の矢面に立つことはなかった。それは、やるべきことをきちんとやっていたからじゃないかと思っています。

――200勝をはじめ、数々の最年長記録。これらは「すごい」と言えるのでは

山本昌:確かに、通算200勝を達成して、みなさんにほめていただけるような成績も残せました。でも、そんな自分は、実際は「こんなもん」。だから、周りも実際にはそんなにすごくないだろうと。そういう風に、気楽に考えることができるようになった部分はありますね。

――割り切れるわけですね

山本昌:それでも絶対に失敗できない部分はあるので、そこはしっかり準備する。そして思い切ってやる。ラジコンのレースでも、日本選手権の決勝まで行くと、失敗はできませんから足も震えるぐらい緊張します。

でも他の人よりも場慣れしているだろうという自信はありました。自分がこうなんだから、みんなもっと緊張しているだろうと。だからとりあえず全力を尽くそう、という風に普段はマイナス志向でも、土壇場でプラス思考になれるんです。

――しっかりとした準備というのは、地道な作業で、根気もいります。長いプロ生活、どうやってモチベーションをつないでいたのでしょうか。

山本昌:周りに大変だねと思われることは、習慣にしちゃえばいい。そうすれば、大変かどうかとか、考える必要すらない。顔洗ったり、歯を磨いたりと同じですから。

確かに50歳になって、18歳と同じ練習をしないといけないというのは、キツいこともありました。でも、死ぬまでやるわけじゃないから、がんばってみようと。

――頭が下がります

山本昌:いやいや、僕からしたら、毎日満員電車で通うのこそすごいですよ。現役時代、ラッシュの時間帯に代々木上原から小田急線に乗ったことがありました。急行に乗ったら、すし詰めの車内で、僕の体が浮いた。もののたとえとかじゃないですよ。本当に浮いたんです。つり革につかまったまま、斜めになった。これを毎日やっている人はすごいなと。

でも、毎日やっている人たちは習慣になっているんだと思うんです。少し空いているとか、珍しく座れたとか、そういう小さなことでも喜びも感じることができるのかなと。置かれた環境の中で、何か楽しみを探す。それは大事だと思います。

社会人の方を対象にした講演でもよく話をさせていただきますが、自分の思っていたような職場に入れなかったとしても、まずはそこで全力を尽くすことが大事です。その中で何かをやれない人は、おそらくどこに行っても何もできない。

ふてくされて、職を変えるよりも、今の環境で必要な人材になる。頼りにされることで、喜びも覚える。もしかしたら、ものすごく楽しいかもしれないし、貴重な出会いがあるかもしれない。

――プロ入り5年目で「望んでいなかった」米国留学も経験されていますが、そのときも前向きに捉えられたのか

山本昌:いえ、その時は前向きにはなれなかったですね。人生の転機だったと気づいたのも、後からでした。でも一生懸命にはやっていた。人生なんて、大半は勝負どころを過ぎてから「あそこが勝負どころだったな」と気づく。だから、常日頃から準備をしていたり、行動していたりすることが大事。その場だけでがんばっても、踏ん張りはきかない。

――やはり、大事なのは準備

山本昌:普段からがんばっている人こそが、いい転機を生かせる。たとえば受験で、一夜漬けみたいな感じでやって、合格する人もいるかもしれない。でも普段から勉強している人のほうが、確率は高いと思うんです。僕は野球という、確率のスポーツをしてきた。だから人生も、良くするには確率を上げておくのが大事だと思っています。

普段だらしなく過ごしている人は、確率が低いと思う。転機が来るのが、40歳なのか50歳なのか分からないけど、確率を上げる努力をしている人には、いつか必ず来る。1%の確率をつかむ人も中にはいるけど、何かやりたいことがあるなら、成し遂げるための確率を普段から上げておくべきだと思います。

「最近の若いもんは」という言葉がきらい

共同通信社

――若い世代とのコミュニケーションは、世の40代、50代がみな悩むところです。高卒ルーキーなどと接するのに、難しさを感じたことはありませんか

山本昌:僕は平気でしたね。野球という共通の価値観があるので。

それに最近の若い子はすごくしっかりしていると思うんですよね。野球に関しては特に。僕の高校時代に比べたら、レベルが高いです。そういう意味でも「最近の若いもんは」という言葉がきらいです。

アマにはすばらしい指導者がたくさんいらっしゃいますし、プロ野球だけでなくサッカー、ラグビーにいたるまで、トップ選手の練習法をスマホひとつで読める時代でもあります。そういう中で指導されてきた選手のレベルはやはり高いし、僕なんかは新入団の選手に練習方法を聞くようにしてましたよ。

――レジェンドに質問されたら、若手の方が驚くと思います

山本昌:そんなことないですよ。僕は精神年齢も低いんで、同じレベルで話せます(笑)。あとは何か聞かれたら答えてあげよう、とは思っていました。そのために、何気なくみんなの投げ方は見ていました。

僕、好きなんですよ。フォーム見て、分析するのが。理屈が好きなんでね。こういうフォームだから、こういうボールになるんだよと。基本的には「ドラゴンズのしきたりには従ったほうがいいよ」ということだけ伝えて、押し付けるようなことはしませんでしたけど。

――ドラゴンズは、投手の育成に定評がある球団ですね

山本昌:投手に関しては、いい畑がある球団だと思います。練習の内容から、普段話す内容にいたるまで、レベルが高い。

他球団でプレーしたことはないし、評論家として、すべての球団を見て回れるようになってまだ2年目ですけど、おそらくそうだなという確信はあります。いい伝統が伝わっている。こういうキャッチボールの方がいいとか、こういう練習が実戦につながるよとか、投球練習はこうした方がいいとか。

毎年ドラフトでいい素質の子たちが入ってくるわけですから、いい練習をさせることさえできれば、自然と伸びてくる。ここも確率の問題ですね。野球って、1人いい選手がいる、いないの差が非常に大きい。強いチームと弱いチームの差は、選手1、2人分の差ですから。

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