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JUST DO IT!「正法眼蔵随聞記」

 仏法ライフハック。

リンク先を見る 道元禅師から聞き書いた仏道修行の至要をまとめたものとして有名。歴史や倫理でタイトルだけは見知ってたし、やたら持ち上げる人がいるのも知ってる。だが、難しがることもありがたがることも無用、シンプルでパワフルなライフハックと思えばよろしい。

 たとえば、「病気が治ってから仏門に帰依しよう」とか、「この事業が完遂したら修行を始めるぞー」なんて言ってるうちに人生終わる。「この戦争が終わったら、故郷に帰ってフィアンセと結婚するんだ」と一緒やね。死亡フラグにならないよう、お灸とかで症状をだましながら修行しなさいと説く。

 あるいは、語録や問答を集めた本を読んでもダメダメという。そんなの読んでいるくらいなら、ひたすら坐禅せよとくり返し述べる。ライフハックとか称して、「○○の効率を10倍にする20の方法」なんかをリッピングしてるよりも、素直に○○をやれと同じ。中学の頃、学習雑誌の勉強法特集を読みふけってばかりで、一度たりとも徹底したことがなかったことを思い出す。勉強法が仕事術に変わっただけで、同じことをくり返していおり、痛々しくて、情けなくて、恥ずかしい。

 きわめてプラクティカルな考え方も学べる。海の向こうでは、「七軒だけ托鉢せよ」と言うけれど、この国は庶民が貧乏だから七軒じゃ足りなくね? とか、そもそも道が汚いから、袈裟つけてたら汚れちまうだろという。それぞれの場所、時勢、風俗習慣に即した修行をすればいいと割り切る。郷に入ってはの精神やね。さらに究極の問題→「老母の介護と仏道と、どっちが大事」という難問には、「よく考えてね」と突き放す。とはいえ、彼のアドバイスはこうだ。
もし、この一生を捨てて仏道に入ったならば、老母はよしんば飢え死にしても、ひとり子をゆるして仏道に入らせる功徳は、将来道を得るすぐれた因縁ではないか。また自分も、今までの長い長い間、生まれ変わり死に変わりしても、捨てることのできなかった恩愛の情を、今この世に人として生を受け、難値難遇の仏の教えにあった時に捨てたならば、これこそ真実の報恩者というべき道理である。どうして仏の心にかなわないことがあろうか。
 しかし、疑問なトコもある。「我見を離れよ」だ。この身に執着するな、自分のために仏法を学ぶな、自分の身も心も一切捨て去って、仏法にむかって投げ捨てよと、これまたくり返し主張する。道を得ようと「望む」「願う」「求める」こと、それ自身が我執に囚われているとまで言い切る。これが分からない。

 なぜなら、我そのものを本当に捨て去ってしまったら、仏法を「学ぶ」「行する」「得る」存在はなくなるから。我があるからこそ認識できるその意識を捨てたら、もはや主体なしの世界になってしまうではないか。まっすぐに読んだら、只管打坐で心神喪失をめざせ、になる。理由は言葉で伝えられない、そういう境地に至ったら自ずと悟るよという逃げもアリだが、それなら言葉で伝えようとする行為を否定しているではないか。ひょっとすると、わたしの誤読で、「我=我欲我執」かもしれないし、「自分を捨てる覚悟で」という方便なのかもしれぬ。凡夫の仏教ではなく、法の仏教か。ありがたがるより JUST DO IT! 分かった気になって威を借るよりも、この「分からない」を核に進めよう。

 本書はfinalvent氏に背中を押された一冊。いい出会いでした、ありがとうございます。

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