トップ画像:カーター元大統領(2002年ノーベル平和賞受賞時) 出典 Carter Presidential Library Official Instagram
島田洋一(福井県立大学教授)
【まとめ】
・小泉元首相の森友学園への国有地売却を巡る財務省の決裁文書改竄問題に関する発言は無責任。
・米カーター元大統の発言は、常識的世論を代表しているものが多い。
・日本の元首相達は「長老の智慧を象徴する存在」という自覚がない。
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3月13日のBSフジの番組で、森友学園への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改竄問題に関し、小泉純一郎元首相がこう語ったという。
「(安倍晋三)総理が『私や妻が森友学園に関係あったら、総理も国会議員も辞める』と言った。総理の答弁に合わせないといけないということで、この改竄が始まったと私は見ている。忖度したんだよ。関係あるような書類は全部変えないといけないと思ったんじゃないか。私はそう想像している」。
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▲写真 小泉純一郎元首相とアメリカ合衆国元大統領ブッシュ(2006年6月29日) 出典 The White House
一部メディアの偏った報道を無批判に受け入れた無責任な放言と言わざるを得ない。元首相ともなれば、床屋談義の感覚で政争に首を突っ込むのではなく、国が無意味な分裂や迷走に陥らないよう、大所高所からの常識論を心掛けるべきだろう。
その点、近時感銘を受けたのは、カーター元米大統領の発言である。カーター氏と言えば、「史上最低の大統領にして史上最低の元大統領」と米保守派が批判してきた存在である。現職時代の内外政策もひどかったが、退任後の独自外交もひどいという意味である。
ところが、そのカーター氏がニューヨーク・タイムズ2017年10月21日付インタビュー で語った内容は、立場を超えて広く常識人を頷かせるものであった。
氏はまず、ロシアとトランプ陣営が共謀したとされる選挙干渉疑惑に関し、「私は、ロシアの行為が選挙結果を左右するほどに票を動かした、あるいは少しでも動かした証拠があるとは思わない」と言い切る。そして、「私たち夫婦は(民主党予備選で)サンダースに投票した」という。すなわち結局のところ、ヒラリー候補に魅力がなかったから負けたというわけである。
続いて主流メディアの報道姿勢に触れ、「メディアは、過去のどんな大統領よりもトランプにきつく当たってきた。何を言っても構わないという感じで、精神異常だ何だと平気で口にする」とその行き過ぎをたしなめる。
さらに全米各地で進む「差別的」な記念像の撤去について、「(南北戦争時の)南部関係者の銅像撤去が続いているが、私にとっては難しい問題だ。私の曾祖父は、ゲティスバーグの戦いを南部側で戦った。私は、ストーン・マウンテン(カーター氏の地元ジョージア州にある。山腹に南軍のリー将軍ら3人の像が彫られている。)に人種差別的意図を感じたことは一度もない。黒人たちの嫌悪感は分かるが、しかるべき説明文が付されていれば問題はないと思う」と語る。
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▲写真 ジョージア州ストーンマウンテン 山腹の彫刻 Photo by KyleAndMelissa22 Public Domain