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  • Dain
  • 2011年03月29日 21:35

「日本沈没」再読

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 いまも怖いし、不安だ。そんなわたしが、たとえ一時でも自分を騙すために、再び手にした。

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 「ネタバレ:日本は復興する」 tumblr や twitter でこんなメッセージを目にする。これは、リアルでも小説でも同じ。被災者・被災地ではなく、復興者・復興地だ。本書は(物理的に)日本が沈む話であるにもかかわらず、「日本は復興する」確かなメッセージを端々に見て取ることができる。

 最初は小学生、「復活の日」の次にデザスタものとして読んだ。オトナになってからは、映画の予習として再読(ただし映画は未見)。そして今回、この時期に、こんなの読んでてよいのかしらと幾分後ろめたい気分で進めながら、ここン十年ぜんぜん変わっていなかったことを思い知る。小松左京の炯眼恐るべし。初版は1974年だが、「大災害に対する日本人の反応」的な部分は、まるで今を見ているようだ。原発事故による放射能もれやSNSによる議論・風説の共有は無い。だが、日本人というものが、災厄に対して、いかに粘り強く立ち向かっていくかが、綿密に書かれている。
台風国であり、地震国であり、大雨も降れば大雪も降るという、この小さな、ごたごたした国は、自然災害との闘いは、伝統的に政治の重要な部分に組み込まれていた。だから多少不運な天災が重なっても、復旧はきわめてすみやかで活発におこなわれ、国民の中に、災害のたびにこれをのり越えて進む、異国人から見れば異様にさえ見えるオプティミズムが歴史的に培われており、日本はある意味では、震災や戦災やとにかく大災厄のたびに面目一新し、大きく前進してきたのだった。
 しかし、あたりまえだが、現実のほうがはるかに深刻で悲惨だ。小説のなかで、どんな阿鼻叫喚が展開されていたとしても、それは物語としての惨事。3.11 からの出来事を写した、どの一枚にもかなわない。フィクションとしての薄っぺらさをあげつらうことは可能だが、そこに「逃げる」ことができる。テレビを消して、ネットから離れ、「物語」の殻に心を放つ。不安に浮つくわたしのこころを、いっとき「物語」に向けるのだ。いま揺れている足元はどうしようもないが、自分のこころは飼いならすことができる。たとえ、わずかな一時でも。

 現実はあまりにも苦く・恐ろしい。だが、そんな現実をデフォルメし、因果の流れに組み込んで、「飲める」ように仕立てたのが物語。耐え難い不安や不満に苛まれるとき、その現実に似た「物語」を摂取する。薄めた"リアル"で抗体をつくり、心を慣らすのだ。「おおつなみ」というコトバは、未来少年コナンのインダストリアで耳にした(最近ならポニョか)。児戯かもしれない、「逃げ」かもしれない。でも、フィクションのおかげで現実に引っ掛かることができる。ともすると流されそうになる心をつなぎとめておくために、物語はありがたい。

 日本沈没―――最初に結論を述べると、日本を沈めるのはとてつもなく難しい。これは著者自身が告白しているとおりで、日本が沈むまでに実にさまざまなことが起こる。起こりすぎるくらいで、とても潜水艦乗りや地震学者といったキャラクターに還元できない。物理的な日本の蠕動・鳴動・業火・咆哮そして沈下というベースに、日本人どう対応するか、隠蔽・逃避・救助・足掻そして脱出のストーリーラインが乗っかる。

 予兆や予感レベルでは個人の耳目を駆使し、すわ有事になると、ぐっと鳥瞰したカメラの視線、さらには海底1000メートルまで潜った場所から地中・土中に衛星視点まで、自由自在だ。海溝を走る泥流の描写、大地震+大津波により首都が破壊される様子、人びとの混乱と喪失、表向きは同情、本音は冷ややかな海外の反応、政治的駆引、世界経済への波及と、脳髄を振り絞ってシミュレーションに苦心惨憺した跡がしのばれる。軍事バランスや地政学的な平衡関係が崩れることまで考え抜いてある。

 また、細かいとこなら、いざというときの「市民の義務」が欠如している「通勤流入民」→「帰宅難民」と読み替えたり、海洋を信仰対象とする新興宗教「世界海洋教団」を「シーシェパード」になぞらたりできる。某国だと暴動になる危機において、日本人は「柔順と諦念」的な行動様式をとる理由は、「最後は何とかしてくれる」という国に対する「甘え」の感覚がそうさせているのだという。どこまで「いま」を再現しているか、胸に手を当てながら、読む。

 さすがに「これはヒガみすぎだろう」と思ったのは、海外勢の視線。「日本を救え!」キャンペーンの裏側の心理。国際機関や各国政府、さまざまな団体が募金活動にいそしむのだが……地震・津波・原発、現在進行形が「そのまま」テレビでダダ漏れしているのも、世界初なんだろうね。

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