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安倍総裁「圧勝」大崩壊 自民党総裁選票読み、現在の状況


【総裁選をシミュレーションすると?】

 万全と見られていた安倍晋三・首相の自民党総裁選3選が、今国会で一気に揺らぎ始めた。どこよりも早い総裁選シミュレーションで見えてきた、「まさか」のシナリオとは──。

 森友学園への国有地売却をめぐる財務省の“文書書き換え疑惑”で批判の矢面に立つ麻生太郎・副総理兼財務相だが、最終的に詰め腹を切るしか政権を守る方法はない、と覚悟を固める可能性があるという指摘も出ている。

 政権の大黒柱である麻生氏が辞任する事態となれば、政権の大打撃だ。9月の自民党総裁選に向けた党内のパワーバランスが大きく変わると指摘するのは政治アナリストの伊藤惇夫氏である。

「森友文書の書き換えが事実であれば、麻生財務相の引責辞任は避けられないでしょう。そうなると、安倍首相と麻生さんの関係は大きく変わる可能性がある。麻生さんが閣外に去れば、総裁選でフリーハンドを持つことができる。安倍政権が泥船と判断すれば見切りをつけて、例えば総裁選に岸田文雄・政調会長の出馬を促して安倍降ろしを仕掛ける選択だってある。党内第2派閥の麻生派が首相を支持するか否かで、総裁選のキャスティングボートを握ることができる」

「まさか」の始まりである。

◆「3月までは動くな」

 自民党総裁選は405人の国会議員票と党員投票で行なわれる。

 官邸サイドの現在の票読みは、安倍首相支持を鮮明にしている細田派(94人)、麻生派(59人)、二階派(44人)の主流3派の基礎票だけで197票と議員票の半数に迫る。これに「将来の政権禅譲」を期待する岸田文雄・政調会長が不出馬を決めれば岸田派(46人)、さらに額賀派(55人)も雪崩を打って首相支持に回り、菅義偉・官房長官ら無派閥の安倍支持派議員を含めると300票以上の予測が立ち、圧勝は確実の形勢というものだった。

 だが、麻生氏が“離反”すると、その票読みは根底から崩れる。

「3月までは動くな」──麻生氏は今年初めに岸田氏と会談した際、総裁選への出馬を判断する時期についてそう助言したとされる。安倍首相の総裁3選は傍で見るほど盤石ではなく、国会の情勢次第で流れがどう変わるか分からないと考えていたのだ。

 その予言通り、3月に安倍政権は窮地に陥った。

◆福田元総理の反旗

 安倍首相のお膝元の最大派閥・細田派でも反安倍の動きが浮上した。政界引退後もなお同派に隠然たる影響力を持つ福田康夫・元首相が最近、積極的にメディアに登場して安倍政治に異を唱えている。

 2月28日、都内で開催した講演では憲法9条改正について、「改正しなければいけないというのが先にきている。中身より通りやすいものでという感じになってしまっている。本当に良いのかという気がする」──そう語って首相の前のめりの改憲姿勢に水を浴びせた。そして総裁選について、「しっかりした人が出てこないんだったら3選でも4選でもしたらいい」と突き放した。

 一連の森友問題については露骨に嫌悪感を見せた。

「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」(昨年8月)

「国家の記録を残すということは、国家の歴史を残すということ。その時の政治に都合の悪いところは記録に残さないとか、本当にその害は大きい」(昨年12月)

 そう役所の対応に容赦ない言い方をしてきたが、それでも改まらないことから、ついに憲法改正という安倍政治の本丸に公然とNOを突きつけたのだ。

「日本初の公文書管理法の生みの親である福田さんの怒りはすさまじく、安倍政治が続くことそのものを憂慮している。各派の幹部クラスには福田シンパが多く、福田さんの声は党内に共感を生んでいる」(麻生派ベテラン議員)

 安倍首相の支持基盤である細田派、麻生派の真ん中に亀裂が走っているのだ。

◆お友達人事も崩壊

 そのうえ、首相を守る“親衛隊”も総崩れだ。政権の看板政策だった「働き方改革」では、首相は厚労省のデータ改竄問題で裁量労働制の今国会提出断念を余儀なくされた。

 その「A級戦犯」とされるのが最側近の加藤勝信・厚労相だ。安倍家とは家族ぐるみの付き合いで首相の信頼が厚く、他派閥(額賀派)ながら官房副長官から一億総活躍相、労働政策を所管する厚労相と常に看板政策を任されてきた。

 ところが、データ改竄問題では省内を統制できず、「廃棄した」と国会で説明した途端に省内で段ボール32箱分の資料が発見されるなど傷口を広げた。

「総理は加藤大臣を公邸に呼びつけて大変な剣幕で怒鳴りつけた。それだけに、財務省の森友文書書き換え疑惑が表面化すると、加藤さんはザマアミロといわんばかりに冷ややかだ。政権の危機だが、火の粉が別の役所に飛んで助かったと思っているんじゃないか」(官邸スタッフ)

 首相を守るどころではないようだ。

◆石破と「大阪の乱」

 その間にも、地方では反乱の芽が吹き出してきた。安倍首相がとくに気にしているのが「大阪の乱」だ。

 自民党大阪府連の府議や市議たちが「石破茂を支援する会」を立ちあげ、「総裁選の党員投票で石破氏を応援する。総裁は代わってほしい」と声を上げている。

「安倍総理や菅官房長官はわれわれ大阪の自民党より、敵である日本維新の会の主張ばかり大切にしている。府連では官邸のそうした姿勢に不満がたまっており、『敵に塩を送るような総理を3選させるわけにはいかない』と行動に出た」(大阪府連のベテラン議員)

 それに呼応して石破氏が大阪で盛大なパーティを開催(2月5日)すると、首相は大阪選出の国会議員たちを公邸の昼食会(2月16日)に招いて懐柔を図っているが、効果的ともいい難い。

「来年は統一地方選がある。自民党の地方議員にはアベノミクスの効果が地方に及んでいないという不満が強く、国会議員と違って官邸の人事での締め付けは通用しない。政権の求心力がこのまま下がっていけば、大阪の乱は全国に伝播していく」(反主流派議員)

◆様子見の二階幹事長

 総裁選の帰趨を占う上で見落とせないのが二階俊博・幹事長の動向だろう。

「安倍の次は安倍」といち早く首相の総裁3選を支持してみせた二階氏だが、財務省の文書書き換え問題では「理解できない」と政府に厳重抗議し、財務省の調査報告も出し直しを指示して首相に距離を置き始めた。

 二階氏まで主流3派から離れるようでは支持基盤がガタガタになる。そこで安倍首相は急遽、二階氏と会談(3月7日)して“蜜月”をアピールした。しかし、老獪さでは首相より一枚も二枚も上の二階氏が総裁選で言葉通りに安倍支持に回るとは思われていない。細田派のベテランが語る。

「総理はお人好しすぎる。二階さんは総理を上手におだてて西川公也・元農水相、今村雅弘・元復興相、江崎鉄磨・前沖縄北方相、そして温泉豪遊ハレンチ写真などで、就任早々ピンチに陥っている福井照・現沖縄北方相まで二階派の問題議員を次々に大臣に押し込んだ。彼らのスキャンダルでどれだけ政権の足を引っぱられたか。それでも風を読むのが得意な二階さんは、総理の3選が危ういと判断すれば、“わが派の入閣待望組の滞貨一掃してくれてありがとう”と簡単に勝ち馬に乗り換えるはずだ」

◆2&3位連合で「安倍落選」

 官邸は小泉シンパの無派閥の若手議員を中心とする勉強会『2020年以降の経済社会構想会議』を発足させた進次郎氏を安倍支持派に取り込もうとしているが、当の進次郎氏はその初会合(3月1日)で、「総裁選とは関係ない」と断言。

 勉強会の幹事長には、安倍批判を鮮明にしている福田元首相の長男、福田達夫・防衛政務官が就任し、今後の情勢次第では若手勉強会が安倍降ろし側へと回る可能性さえある。

 信任選挙と見られてきた総裁選の“票読み”はまったく分からなくなってきた。政治ジャーナリストの野上忠興氏は「安倍弱体化」のケースの総裁選の得票をこう予測する。

「このまま政権の求心力が下がっていけば、主流派から麻生派が抜け、二階派が中立に回り、安倍首相の支持勢力がどんどん離れていく。そうなれば総裁選で首相が見込める議員票は細田派を軸に、各派にまたがるお友達議員など140~150票がせいぜいでしょう。党員票はもっと厳しい。安倍氏が第一回投票で1位になったとしても、過半数に届かずに決選投票となる可能性は十分に考えられる。

 派閥の議員数で見ると、麻生・岸田派連合ができれば2位は岸田氏の約130票、石破氏が額賀派の一部や谷垣派、石原派を取り込んで3位の約80票といった順番ではないか。安倍対岸田の決選投票となれば、3位の石破氏が首相に乗るとは考えにくい」

 まさかの“安倍退陣シナリオ”まで見えてきた。

※週刊ポスト2018年3月23・30日号

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