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震災から7年もいまだ仮設住宅での避難生活7万人以上~不透明な状態が続く生活再建の行方

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東日本大震災から7年。最大で47万人とも言われた避難者だが、復興庁の発表によると、現在でも約7万3000人が全国に散らばって避難生活を送っているとされている。ピーク時と比べると17%にまで減少したことになるが、それでもなお約7万人もの避難者がいると思うと、改めてあの震災の大きさが実感させられる。

もちろん、これは地震や津波だけでなく、東京電力・福島第一原発の事故の影響も少なくない。しかし、復興が遅れているとされる福島県内だけでなく、岩手県や宮城県でも、今も多くの人がプレハブの応急仮設住宅で暮らしているのだ。

タイムリミットが迫る仮設住宅からの退去

宮城県石巻市。7年前の震災により、およそ3600人もの犠牲者を出し、約3万3000戸の家屋が全壊もしくは半壊となった。東日本大震災で最も被害の大きかった自治体の一つである。

そんな石巻で、ピーク時には約1600戸、4600人が暮らしていたマンモス仮設団地が開成地区にある。現在は約100戸、200人が仮設住宅に残されている。以前は人が行き交っていた敷地内も閑散としており、日中でも人影はほとんど見られなくなった。

かつてはマンモス団地とし て沢山の車が停まっていた駐車場も、閑散としている仮設開成団地(宮城県石巻市/2018年3月)

鈴木剛さん(51歳/仮名)は、この仮設住宅で一人暮らしを続けている。同じ棟には誰も住んでおらず、近隣も1棟に一人住んでいるかいないか、という状態だ。

「やっぱり夜になると少し不安だよね。ほとんど人がいないから、何かあっても誰も気づいてくれないかもしれないし」

鈴木さんは市から5月末までに仮設住宅を退去するように通告されている。しかし、未だに次の行き先は決まっていない。震災前まで暮らしていたアパートは、津波で被災して大規模半壊となった。鈴木さんの部屋の被害は少なかったが、それでも避難を余儀なくされ、避難所から仮設住宅に移ってきた。以前のアパートは、その後、修繕されて住めるようになったが、震災後の収入が安定しないために仮設住宅にとどまった。いずれ災害公営住宅が出来れば、そちらに転居できると考えていたのだ。

災害公営住宅は、市や県が戸建やマンションタイプの住宅を建設し、一定の入居条件を満たした被災者にわりあてられる。一般的な公営住宅と同じだが、入居要件はやや緩やかで、行政側は柔軟に対応しているという。ところが、鈴木さんは石巻市から災害公営住宅の入居条件を満たしていないと評価され、入居対象から外されてしまった。

石巻市の入居資格は、(1)全壊、(2)大規模半壊や半壊で住宅解体を余儀なくされた、(3)賃貸住宅が震災で損傷したのを契機に自己都合ではなく退去した、この3つの条件のいずれかに該当しなくてはならない。鈴木さんのようにアパートが被災して退去する必要があったとしても、その後アパートが修繕された場合は、そこに戻らなければならない。

しかし、すでに以前のアパートの部屋には別の人が入居しており、鈴木さんは自己都合によって退去したと見なされるのだ。こうしたケースでも、大家から退去を求められた事を示す証明ができれば入居資格は得られるが、証明できずに自己都合扱いになり災害公営住宅の入居資格を得られなかった人は鈴木さんだけではない。

「でもさ、同じようなケースの人でも、災害公営住宅の入居資格をもらってる人がいるんだよね。市の担当者によっても話が違うし、なんで認めてもらえないのか、よくわかんないんだよ」

現在の開成団地は人の行き来もまばらとなり、散らかったゴミも放置されている(宮城県石巻市/2018年3月)

蓄えもなく収入も不安定なため、退去後に民間の賃貸住宅で暮らしていくのは不安を感じている。入居資格が緩和されるかもしれないと仮設住宅で暮らす人たちのなかで噂話をきいたり、そうした報道に接してきたりしてギリギリまで待ったが、あと2か月ほどで仮設住宅を退去するタイムリミットを迎えようとしている。

「まだ何も決まってない。この先どうなるのか……」

開成団地では、一部の棟を残して仮設住宅の撤去作業が進められており、鈴木さんの住んでいる棟も6月には解体される予定だ。

「影の部分をきちんと報道しないから伝わるはずがない」

追波川河川団地では、いまもピーク時の半数ほどの人たちが退去せずに残されている(宮城県石巻市/2018年3月)

一方で、新居の建設が間に合わず、もうしばらくは仮設住宅での暮らしをせざるを得ない人たちも少なくない。

同じ石巻市内の追波川河川団地は、ピーク時に約90戸と中規模の仮設団地だが、今も約50戸、100人が暮らしており、退去率はおよそ半分。この仮設団地に住む竹田洋司さん(60代/仮名)は、転居先となる新しい造成地の復興工事が遅れ、建て替える新居の完成は9月にずれ込む予定。それまでは仮設住宅での生活が続く。

「早ければ8月くらいに出来上がるって話もあるけど、遅れ遅れでいつになるかわからん」

被災地の復興工事や建設工事の現場では、人手不足が深刻化している。とくに東京オリンピックが決まってからは、働き手が東京や関東に取られてしまい、ひどい人手不足に加え、資材の高騰などが復興の足かせになっている。竹田さんは強い不信感を口にした。

「あんたたち東京の人は、こうやって3月が近づけば震災のことを思い出すかもしれないけど、それだけでしょ。こっちは毎日のことなんだよね。あんたたちがオリンピックだなんだって騒いでいる時も、こっちはこんなプレハブの仮設住宅で生きてるんだよ。それに(東北以外の)マスコミも、やれ大川小学校だ、南三陸の防災庁舎だ、さんさん商店街だって目立つところばかり報道するけど、実際に深刻な問題を抱えているところは、ほとんど報道しないだろ。目立ってることや明るいニュースばかりで、影の部分をきちんと報道しないから伝わるはずがない。だから東京の人たちは、福島は大変だけど宮城では仮設住宅なんてとっくになくなったんでしょ、なんて思ってるんだろ」

岩手、宮城、福島の3県では、計画されていた復興住宅や住宅用造成地の建設が、8~9割完成している。それでも1~2割の人が、住宅再建という段階に進めずにいるのだ。1995年の阪神淡路大震災では5年で解消したとされる仮設住宅暮らしが、東日本大震災では7年経っても解消されなかったことになる。

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