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トランプ‐金正恩会談に期待できないこと、期待できること―「戦略的共存」への転換点になるか

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  • 北朝鮮との会談は米国にとっても「渡りに船」だった
  • 会談で期待される成果は米朝がお互いに都合の悪いことを「みてみぬふり」をできるようになること
  • 「不安要素のある国」とでも、「自分に実際に危害を加えない」という共通認識がお互いに成立すれば、最低限の付き合いで並び立つことができる
  • お互いに「忍耐」しあう「戦略的共存」は、全体の安全に資する

 3月9日、韓国政府は「金正恩総書記がトランプ大統領との会談を提案したこと」と「トランプ大統領が非核化実現のために5月までに会談を行うこと」を相次いで発表。北朝鮮情勢は大きな転機をむかえています。

 以前から述べているように、米朝会談が実現しても、「北朝鮮の核廃絶」はほぼ期待できません。しかし、今回の会談には、少なくとも高まった緊張を和らげる効果を期待できます。その緊張緩和を少しでも続けるなら、トランプ政権はオバマ前大統領の「戦略的忍耐」に近いものに回帰せざるを得ないとみられます。

 ただし、オバマ政権の時代は米国の一方的な「忍耐」でしたが、もし米朝協議で(根本的な解決は無理でも)緊張緩和への道が開くなら、北朝鮮側も「忍耐」を余儀なくされます。それは「戦略的共存」とも呼べる状態です。

米国にとっての「渡りに船」

 韓国政府が平昌五輪をきっかけに働きかけを続けた米朝会談に、北朝鮮側が徐々に応じる姿勢をみせてきたことに、トランプ大統領や日本政府は「制裁の効果によるもの」と自らの成果を誇示してきました。

 北朝鮮への制裁に全く効果がなかったわけではありません。しかし、ここで重要なことは、制裁を加えてきた側にも、もはや打つ手はほとんど残されていなかったことです。

 2017年7月に成立した包括的な経済制裁の導入により、これ以上の禁輸措置には限界がありました。経済制裁は一種の「諸刃の剣」で、そのリスクの一つには「最後から二番目の選択肢」であることがあげられます。つまり、それを実行して期待された成果が得られなかった場合、あとは基本的に軍事行動しか残らなくなりますが、それは制裁を行う側にとっても大きなリスクになります。既に核兵器を備えている北朝鮮が相手であれば、なおさらです。

 トランプ大統領は昨年4月シリアへ突然ミサイル攻撃を行い、「大量破壊兵器を使えばこうなる」と北朝鮮に警告。北朝鮮ばりの「瀬戸際外交」を展開するなか、米国が北朝鮮への制裁や圧力を矢継ぎ早に強めることは、北朝鮮と一緒になって緊張をエスカレートさせるものとなっていました。

 結果的に次に打つ手に困っていたトランプ大統領にしてみれば、北朝鮮が韓国の働きかけに応じる形で協議を提案したことは、「渡りに船」でもあったといえます。ただし、もちろんそうはいえないので、米国としては「制裁の効果」を強調せざるを得ません。少なくとも、今回の協議はどちらか一方が圧倒的に有利というより、「痛みわけ」によるものといえます。

 こうしてみたとき、金正恩氏が「会談に応じてやった」という態度で臨んだとしても、故のないことではありません。いずれにせよ、「全ての成果は自分にあり、全ての問題は相手のせい」と言いたく、またそのように振る舞う点で、米朝首脳は似た者同士ともいえます。

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