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表現の自由は人権の一部である

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小学館が刊行している「月刊コロコロコミック」の2018年3月号に、モンゴルの英雄であるチンギス・ハンの顔にチンチンの落書きをしたマンガが掲載された。これを元横綱の朝青龍がツイッター上で批判したことで、問題が拡散。モンゴル大使館が外務省に抗議、小学館はモンゴル大使館に謝罪をしたが、在日のモンゴル人たちが小学館に抗議デモを行ったり、また一部の書店が同書の取扱いを中止するなど、まだ問題は尾を引いているという。(*1)(*2)(*3)

批判すべき部分と、批判する必要のない部分が細かく分かれるので、最初にざっくりとまとめる。

まず、チンギス・ハンにチンチンの落書きをしたということで、朝青龍が怒ることは構わない。
またモンゴル大使館が批判を表明する。これも構わない。
在日モンゴル人らが小学館前でデモをする。デモは権利であるから構わない。
小学館が謝罪をする。弱腰の対応であるとは言えるが、これも小学館の判断としては尊重する。

一方で、モンゴル大使館が外務省に抗議をする。これは意味がわからない。国会での答弁などに差別的な発言があったならともかく、小学館は民間の会社であり、外務省は小学館の親会社でも何でもない。

また、外務省がその抗議を小学館に伝えたとすれば、これもどういうことなのだろうか。外務省が企業に抗議の取次をする必要があるのだろうか?

一部の書店がコロコロコミック3月号の発売を中止する。これは情けない。書店としての矜持は無いのかと問いたい。

駐日モンゴル大使館がFacebookに「これは単なる非道徳的な行為だけではなく、わいせつ物頒布、児童の権利の保護に関する日本の法律にも違反していると考えています」「この件に関して法律の下での適切な対応をしていただけることを期待しています」と書く。期待するのは勝手だが、写実的なわけでもないチンチンを描いて販売しただけで、わいせつ物頒布や児童の権利保護に関する法律に違反しているなどいう法的判断はありえない。これはきっちりと突っぱねるべきである。

さて、この件を一言で言うと「表現の自由」の話である。

日本には表現の自由がある。表現の自由があるからこそ、誰かの表現に対して不快を表明することも表現の自由として認められる。しかし一方でそれは法的な表現の差し止めの根拠にはならない。このラインは絶対に守られなければならない。

不快を許すか許さないかという点についても、コロコロコミックの読者やその編集部とモンゴルの人たちとは、価値観が異なるということでしかない。

ヒンズー教では牛は聖なる動物とされているし、イスラム教では豚肉は食べてはいけないとされているが、日本人の多くは食品として認識して、牛も豚も食べている。それをヒンズーやイスラムの人たちから批判されようが、その価値観をヒンズーでもなく、イスラムでもない人たちが内面化する必要は一切ない。

それと同じく、モンゴルの人たちにとってチンギス・ハンが英雄であろうと、コロコロの読者や編集部にとっては落書きのキャンバスでしかない。たったそれだけのことである。日本には信教の自由があるが、他者の宗教の教義を受け入れないこともまた、信教の自由の1つである。

念のために記しておくと、モンゴルに対する差別でもない。なぜなら問題になったマンガでは、他にも名前が出ているだけでも「アインシュタイン」「ナポレオン」「足利義満」「縄文式土器」という歴史上の人物(?)にも落書きをしているからだ。

このマンガ自体は、単に「教科書の顔に落書きをする」(マンガ上ではテストではあるが)という日本の子供が歩む体験をギャグマンガにしたに過ぎず、何かしらの政治的主張があるわけではない。

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