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民泊の目的は?〜平成維新が大阪にもたらした無防備な民泊②〜

特区民泊は、平成28年1月29日、東京都大田区での事業者受付開始以降、大阪府で平成28年4月1日、大阪市で平成28年10月31日、北九州市で平成29年1月30日、それぞれ関連条例制定を受けてスタートしている。平成25年12月の国家戦略特区法の公布及び翌平成26年3月の国家戦略特区法施行令の交付以降、対象エリアがどんどん増えている状況ではない。ちなみに、認定施設数や居室数は全体の8割から9割が大阪市である。全国的にみても大阪市内には民泊のニーズがあることは見て取れる。

 昨年、平成29年7月3日に関連条例を制定した新潟市の「特区民泊」を実施する目的は非常に興味深い。「特区民泊により、グリーン・ツーリズムを一層推進し田園部の活性化を図るとともに、空き家の活用や移住の促進等を進め、本市らしい地方創生の実現を目指します。」と新潟市のホームページには記載されている。北九州市でも同様の目的趣旨が同市ホームページに記載されている。
 大阪市における「特区民泊」とは明らかに異なった視点がそこにはあることを気づいて頂けるのではないだろうか。大阪市と新潟市とは自ずと異なるのだが「地域まちづくりの視点」が大阪市における民泊には欠けているのだ。

 大阪におけるホテルの稼働率は平成26年から4年連続で全国でトップとなっている。喜ばしいことである。日本全体でも訪日外国人旅行者の急増、中でも大阪ではズバ抜けて急増していることもあり、宿泊施設供給対策も必要だと言われてきた。

 では、日本において民泊を進める目的は何なのだろうか?観光庁の「住宅宿泊事業法の概要」には、その背景・必要性として次の3つが書かれてある。

○ここ数年、民泊サービスが日本でも急速に普及
○多様化する宿泊ニーズ等への対応
○公衆衛生の確保や地域住民等とのトラブル防止、無許可で旅館業を営む違法民泊への対応 等

 上記は全国一律の考え方であるが、国家戦略特別区域法による「特区民泊」についても、関連条例提案時に大阪市は「急増する外国人の多様な滞在ニーズに対応するため…」と説明している。

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「特区民泊」も含めて、「民泊」は宿泊施設不足に対応することを主眼とするわけではないのだ。「民泊」のみで宿泊施設不足は解消できるものでもなく、あくまでも多様な民泊ニーズに対して応えていくべく「民泊」が必要なのだ。
 2020年に向けて日本でも、大阪でも宿泊施設不足なのではないかということを感じている人は少なくない様であるが、今現在、大阪においてはホテルなど宿泊施設の建設ラッシュが続いており、少し過剰気味ではないかという域まで達しているというのが現実のようだ。

<大阪観光局が示したグラフは、簡易宿泊所が記されておらず民泊の定義をどう位置づけているのか不明であるが、民泊に一定のニーズがあることを示している。全国的にも、10%を少し超える数値が出ており、海外においても1割〜2割程度の民泊ニーズがあると言われている。>

 この民泊の目的に基づくのであれば、不足に対してとにかく民泊を増やさなければならないという発想ではなく、地域の発展に資する民泊を進め、適正に良質な民泊を地域に根付かせながら外国人旅行者にも喜んでもらう方向性が求められるのではないだろうか。

 民泊を進めるにあたって必要なことは次の3点であると考える。

(1)適正な民泊を推進するための厳しい規制
(2)違法民泊を根絶する厳しい体制
(3)地域と民泊との交流体制

 民泊をやみくもに増やさなければならないわけではないので、(1)における規制も地域に馴染んだ適正なものとする必要がある。違法民泊は地域にとっても不安をもたらすだけであり、時として宿泊される旅行者に対しても危険や不安をもたらす事から根絶していくことが求められる。そして、(3)の要素を各自治体において構築することが、本当の意味で民泊に求められるところではないだろうか。

 特区民泊を先んじて進める東京都大田区には「民泊セット」という施策がある。区内の商店街で使える特典付きクーポンや銭湯の入浴券を「特区民泊セット」として、民泊利用者に配布し、区内観光を楽しんでもらうことで、地域経済を活性化させるのが狙いだという事だ。ささやかな取組みかもしれないが、ただ単に民泊を推進するだけでなく、地域経済との融合を図っている点が非常に素晴らしいと感じる。

 住宅が立ち並ぶ場所の一角に、不特定多数の旅行者(とりわけ外国人旅行者)が訪問する光景は、地域住民にとっては不安なものである。また、その不安な感覚は、旅行者にとっても好ましいものではない。よって、民泊を進めるにあたって、特に外国人に馴染みのない日本においては、外国人旅行者と地域住民とをつなぐ仕掛けが必要なのではないだろうか。

 残念ながら大阪市においては「特区民泊」スタート以降、現在に至るまで、(3)の視点を踏まえた行政施策がない。無策なのである。これでは、地域で正しい民泊の理解が進まない。結果として、民泊に対して無防備になる。規制緩和を是とする方向で、ニーズに合わせた規定整備にのみ奔走しているかのようにみえる。
 本来、大阪においても、民泊ニーズが定着しつつあるのであれば、民泊をスムーズに受け入れる地域社会を同時に作っていく必要がある。民泊に宿泊した旅行者が、もう二度と民泊に泊まりたくないと思うことのない様に、再び民泊に泊まりたい、その地域で泊まりたいを思わせる環境を整えていく必要があるのだ。

 他都市には見られる地域と繋がりを持たせる民泊の姿が大阪にはない。
 民泊を推進することにより、どのような大阪のまちづくりを進めようとするのかが見えない。

 何のために民泊事業を実施し、どのような街を形成するのか?
 今一度、大阪は原点に立ち返り答えを見つける必要がある。

【平成維新が大阪にもたらした無防備な民泊
      ②地域まちづくりに資する民泊の目的】


 ≪住宅宿泊事業法の施行に向けての観光庁の窓口≫

☆民泊制度ポータルサイト
      http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/
 平成30年2月28日スタート!

☆民泊制度コールセンター (平成30年3月1日より 暫定運用開始)

 民泊に関する制度内容等の問い合わせや苦情相談(施行後)について、ワンストップで受付。

  ○専用電話 :  0570-041-389

  ○運用時間 : 3月中 平日 9時〜17時
             4月以降 前日 9時〜22時(時間外もWebで受付)

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