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2011年の「アラブの春」の分析について

2011年の中東地域での政権は、今後、この地域にどのような問題をもたらすのだろうか。

ハンチントン博士の「文明の衝突論」を踏まえ、イスラム主義が台頭し、欧米社会が形成してきた国際秩序とぶつかることを懸念する人もいるだろう。また、イスラエルがさらに右傾化し、イランをはじめとするイスラム諸国と対立を深める蓋然性が高まるのではと不安を抱く人がいるかもしれない。さらに、国際政治の観点から、米国の中東地域での威信が低下することで同地域の勢力バランスが変化し、脅威となる地域大国が台頭することを予想する人もいるだろう。

2012年は、中東地域に関わる多くの研究者や実務家が様々な観点でこの地域全体の問題を検討しなおさねばならない年となるだろう。そして、それぞれが見出した問題を解決するための手段について模索する一年になるだろう。

そこで、私としても自身の情報分析の反省点を以下にまとめてみる。
第1は、各国で起きた市民の抗議活動について、他の社会問題との関連性を十分検討し、それを踏まえて、大きなシステム変化として捉える試みをしたかという点である。
例えば、中東の若者層の雇用問題について、先進国と新興国間で起きている「大収縮」という人、物、資金の移動・変化との関連性について分析できていないことが挙げられる。

第2は、政策に伴う相反性を十分認識した上で中東諸国の政策を分析できていたかという点である。
具体的には、民営化政策、外国投資の優遇政策などの経済の自由化によって、政権中枢に近い人々と周辺におかれた人たちの間で富の格差が拡大している点である。大規模資本企業が誕生すると、その国の国民経済の発展に注目が集まる。しかし、チュニジア、エジプト、リビアにおいて、蓄財をしていく国家指導者やその親族と、恩恵に預かれない国民の間にある不公平さが落とした影の大きさを見誤っていた。

第3に、市民抗議活動に参加している一人一人が問題だと考えている内容や、現状認識が多様であるため、まとまった市民運動として捉え、解釈することが難しかった。

例えば、チュニジア、エジプトの抗議活動では、アルバート・アインシュタイン研究所のジーン・シャープ博士が唱えている「ガンディー主義に基づく非暴力運動により政権打倒」の強い意志を持つ人々も存在した。また、イスラム主義者や労働組合の組織的な参加もあった。そして、欧米においてソーシャルネットワークを通しての呼びかけで、不特定多数の人が一カ所に突然集合し、ダンスなど何がしかのパフォーマンスを行い解散するという「フラッシュモブ」と呼ばれる行動が見られてきたが、そのような感覚で集まった人たちもいただろう。どこに焦点を当てるかによって、何通りもの解釈ができる。

第4は、情勢の変化が急速であるため、問題の構造の変化や、その変化をもたらした要因について十分に把握しきれないまま分析し、今後のシナリオが描ききれないケースもあった。リビアのケースで、フランスのサルコジ大統領のトリポリ勢力の承認や国連安保理での決議1973号(保護する責任に基づく武力介入の承認)の採択などはその事例である。そのため、その後のリビアの内戦の推移についてシナリオが描きにくかった。

グローバル化が進み、相互依存度が高まっている国際社会で出てくる問題は、(1)全体性、(2)相反性、(3)主観性、(4)動態性などの要因から複雑性が増している。

このことは、「アラブの春」と呼ばれる政治変動だけでなく、地球規模で起きている社会問題全般に言えることだろう。
これらの反省点を踏まえ、今後、2012年の中東地域の政治・社会変動については、基本に返って、集団行動の(1)目標、(2)価値観、(3)計画性について抑えた上で情勢を分析していこうと肝に銘じている。 それにより、問題の本質を見出し、解決の糸口を探るために少しでも役立つことができればと願っている。

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