記事
  • 佐藤秀峰

岩崎夏海さんの本や漫画への考え方について

さて、今度は「もしドラ」などで有名な作家の岩崎夏海さんから、僕の書いた「自炊代行について」という日記に反論をいただきました。


とてもユニークな反論ですので、皆さんもよろしければご一読を。
せっかくなのでこちらからも岩崎さんにお返事いたします。

元々の僕の日記は、自炊代行訴訟に関して書いた物でした。
原告の作家達の意見が自炊そのものを否定する発言だったり、自炊と自炊代行の区別がついていない様子が見え隠れしていたので、それらの発言に疑問を呈した上で、代行が作家活動に影響を与えないことや、自分の作品については自炊も自炊代行もやって構わないことなどを書きました。

自炊代行という商売については、いろいろな法律家の意見を見ていると、法的には黒に近いグレーなのかな、という気がしていますが、訴訟の結果を見て改めて判断したいです。


ちなみに岩崎さんのご意見は、僕の文章の中で本や漫画についての考え方について書かかれた部分にのみに触れており、自炊の話題とはあまり関係がありません。

元記事はこちら。

佐藤秀峰さんの本やマンガへの考え方について (岩崎夏海)



では、箇条書きでお答えしますね。

赤字部分は岩崎さんの文章の引用です。
僕のコメントはその下に黒字で書きました。

本は、購入した人の所有物ではありません。そもそも、太陽とか土とか水でできた紙を使ってできた本を、数百円払ったくらいで「所有」しているという考え方がおこがましい。
当たり前ですが、本でも何でも、一個人の完全な所有物となるものなんて、この世にはありません。「物」は、言うならばこの世界そのものの「所有物」 であり、人間にとってはむしろ「借り物」という方が近いです。今認められているいわゆる「所有権」とは、その「借り物」の処遇について、他の者よりも比較 的多く決められる権利――くらいの意味しかないのです。



僕は現在の日本の法律に照らし合わせて、「所有」という言葉を使っています。
宗教的、哲学的意味合いで「所有」という言葉を使っておりませんので、その前提でご理解いただければ幸いです。




購入した本の使い道は購入者の自由ではありません。まず、読み方からして「自由」ではありません。例えば「あ」という文字があったとしたら、これを「い」や「う」と読んではいけないのです。
これは冗談ではありません。もし「楽しみ方」が「自由」というなら、「あなたを愛している」と書いてあったとしても、「おまえを殺す」と読むこと だってできるのです。そうなると、作中の人物に「あなたを愛している」と言わせただけなのに、「あの作家に殺すと言われた」として、その作家を訴える読者 だって、そのうち現れるのではないでしょうか。



すでに述べているように、僕は「所有」という言葉を、現在の日本における法的な意味合いで使っていますので、「購入した本は購入者の物で、楽しみ方は自由なはず」という僕の言葉は、正確には「所有権のおよぶ範囲で、所有物をどのように楽しんでも自由である」という意味に捉えてください。
所有権とは、「物の全面的支配すなわち自由に使用・収益・処分する権利」だそうですよ。




第一、そもそも「言葉」というのは、先人が発明し、発展・継承してきたものです。作者も読者も、それを使わせて頂いているわけですから、これはいわば借り物です。
借り物を自由にしていいわけ、ありません。作家が自由に何でも書いていいわけでないのはもちろんですが、読者だってそれを自由に楽しんではいけないのです。



「何でも書いていいわけではない」、「自由に楽しんではいけない」とするのであれば、何が許されるか具体例を示すべきでしょう。




佐藤さんのようなことを言う人が本を買う必要はありません。本はむしろ「買った後の使い方まで指示してほしい」という人が買うべきであり、また読むべきものです。
だから、佐藤さんはもう本を読まない方がいいと思います。



「本はむしろ『買った後の使い方まで指示してほしい』という人が買うべきであり、また読むべき」の論拠を示していただけると幸いです。
岩崎さんの本は読んだことがありませんが、ひとまずご指示通り、読まないようにさせていただいたほうがよいでしょうか。




佐藤さんが言うように、作家が「自分の著作を読もうとしている人達」を「閉め出」してまで自炊を止めようとしているのな ら、それはむしろ、「自らが犠牲になってでもそれを止めようとしている」ということで、「自分の権利」は考えの外にあるのではないでしょうか?


原告は自炊の中止を求めていません。
自炊代行を問題にしています。
ただ、原告もその辺りの区別がついていない方がいるようです。




漫画家を「客商売」にしている人もいるでしょうが、そうでない人もいるでしょう。実際、もう一生食べていけるだけのお金を持っているにもかかわら ず、マンガを書き続けている人もいます。そういう人は、読者からお金をもらうためにマンガを描いているわけではありません。そういう人は、もっと別の理由 でマンガを描いています。
それは、佐藤さんだって十分にご存じのはずです。手塚治虫さんは、読者からお金をいただいて生活していたのでしょうか? もちろん、それで生活して いる部分もあったでしょうが、『ブラック・ジャック創作秘話』というマンガを読むとよく分かるのですが、彼は命を削るようにして『ブラック・ジャック』を 描いていました。
ですから、そういう多様な人たちがいる「漫画家」という職業を、上記のようにひとくくりに語ってしまうのは、誠実な態度とは言えません。「漫画家様」はさすがにどうかと思いますが、「作家先生」と尊敬するべき人物は当たり前のようにいるのではないでしょうか。



企画出版に携わるすべての商業作家(として専業で自立している人)は、原稿料や印税を基に生活しています。
原稿料や印税は通常、出版社から支払われる物ですが、出版社は雑誌や書籍をお客さん(読者)に販売し利益を得ることにより、それらのお金を作家に支払います。
その意味では「客商売」というのは客観的な事実と思われます。

また、出版社をクライアントと位置づけて考えるのであれば、仕事の発注者=客ですから、漫画家はクライアントを満足させる作品を描くことによって、収入を得ていると言うことも出来ます。
どちらにしても、漫画家が客商売であることについては疑問の余地がありません。

「客商売」という言葉に、「客に媚びる商売」というようなニュアンスを感じたのだとすれば、岩崎さんが「きゃくしょうばい」という文字を「きゃくにこびるしょうばい」と読んでしまったのかもしれません。

同様に手塚治虫氏は間接的に読者からお金をいただいて生活していたと思われます。
「ブラック・ジャック」は氏が事業に失敗し、莫大な借金を抱えていた時期に、何としてもヒット作を産み出さねばならないというプレッシャーの中で描いた作品だそうです。




佐藤さんは、本というものの本質を見誤っているように思います。佐藤さんには、下記の本を読むことを強くお勧めします。これを読めば、本という物の本質は何かということが、よく分かるのではないでしょうか。


前段で「佐藤さんはもう本を読まない方がいいと思います。」とおっしゃられていたのですが、ここでは本を読むことを強くお勧めされております。
どちらでしょうか?




作者は、いうならば「命をかけた調査隊」のようなものであるべきだと考えています。
例えば絵描きがいたとして、その絵描きがとことんまで美的感覚を突き詰めて、素晴らしい絵を描く。
すると鑑賞者は、それに対して報酬を払うことによって、その美しいものを味わうことができる。
一方絵描きは、その報酬を糧にして、さらなる美を追究することができる。
そういうサイクルが人間社会に必要とされたから、作家は誕生したし、作家を取り巻くビジネスがこれまで続いてきたのです。



これを客商売と呼ぶのではないでしょうか?


以上、簡単ですが。

名指しで全否定されてしまったので、誤解が無いように、少々、無機質な書き方になってしまったかもしれません。
ご容赦ください。




所有権、著作権、知財権などなど、きちんと管理しないとこんなことになりますよ。

講談社による著作権侵害事件のご報告。

トピックス

ランキング

  1. 1

    田原氏 野党は安易な反対やめよ

    たかまつなな

  2. 2

    倉持由香 初の裸エプロンに感激

    倉持由香

  3. 3

    数字を捏造 都構想反対派の欺瞞

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  4. 4

    ベテランは業界にしがみつくな

    PRESIDENT Online

  5. 5

    iPhone12かProか...売り場で苦悩

    常見陽平

  6. 6

    のん巡る判決 文春はこう考える

    文春オンライン

  7. 7

    社民党分裂 背景に立民の左傾化

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  8. 8

    世界も注目 鬼滅映画の大ヒット

    木走正水(きばしりまさみず)

  9. 9

    コロナ禍も国内工場は異常な強さ

    PRESIDENT Online

  10. 10

    新聞読むは32.7% 18歳の意識は

    BLOGOS しらべる部

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。