相場全体の下落時に底堅かった銘柄は
米国市場での株価暴落を受けて、2月2日からの1週間余りで日経平均株価は2000円を超える下げとなった。バブル期以降の最高値をつけた1月23日の2万4129円からわずか半月で、実に3000円以上もの暴落となった。
そうした全面安の様相の中でも、実は暴落しなかった銘柄は存在する。マーケットバンク代表の岡山憲史氏によれば、実際に、今回の相場混乱の渦中に「年初来高値」を更新した銘柄がなんと39あった(2月13日現在)という。たとえば、2月2日から17%の上げ幅を記録している日本光電(東1・6849)などだ。
暴落を乗り切った銘柄は他にもある。2月6日に今期の純利益が過去最高の2.4兆円となる見込みを発表したトヨタ自動車(東1・7203)や第3四半期で純利益が1兆円を超えたソフトバンクグループ(東1・9984)などは、さすがの底堅さを見せたが、それでも値を下げていた。
そんななか、「安定的な運用先として強さを見せた」(日経CNBCコメンテーターでケイ・アセット代表の平野憲一氏)のが資生堂(東1・4911)だ。2日終値から6日にかけて値を下げたものの、8日に17年12月期の初の売上高1兆円超えとなる好決算を発表すると大きく上昇。14日には6355円と年初来高値を更新した。
◆下がりにくい3条件
こうした銘柄は、“今後も信用が置ける”という意味で老後資産の投資先として打ってつけに思えるが、どんな特徴があるのか。株式投資で1億2000万円の資産を築いた「億り人」の坂本彰氏が語る。
「暴落時に強い銘柄の条件は大きく3つ挙げられます。まずは【1】『業績がよくて割安な銘柄』。一時的な下落に巻き込まれても、すぐに業績に見合った株価水準への上昇が期待できるので、右往左往せず、台風が過ぎるまでのわずかな時間を待っていればよい。
次にもともと業績悪化などの悪材料で売り込まれて底打ちし、横ばいを続けているような【2】『これ以上は下がりにくい銘柄』が挙げられます。
そして配当利回りが年3%以上といった【3】『高配当株』も下落局面に強いとされます。株価に対する配当金の割合を示す配当利回りは株価が下がるほど上がるため、下落するとむしろ魅力が増して買われるため、すぐに値を戻すのです」
坂本氏の分析をもとに、具体的に強かった銘柄を見ていく。
【1】は先のトヨタやソフトバンク、資生堂がそうだが、中小型株では割安銘柄として積極的なM&Aで外食業界で存在感を増すコロワイド(東1・7616)などが堅調だった。
【2】はSUBARU(東1・7270)が挙げられる。株価3500円付近を下値抵抗線にして、日経平均が暴落中の9日には3781円まで上昇し13日には一時3800円台をつけている。昨年、無資格検査が発覚したことによる暴落からの回復途中という条件付きではあるものの、株価を見る限り、悪材料が出尽くして今後に期待が高まっているといえそうだ。
【3】の高配当銘柄の中で、前出の坂本氏が注目しているのは、3.78%の配当利回りのNTTドコモ(東1・9437)だ。同社株は5日終値の2688円から6日には2636円と一時は下げる場面もあったが、翌7日には反発している。坂本氏によれば、今後の上昇が期待できるという。
「NTTドコモのように高配当な銘柄は株価が下がれば配当利回りが上がるので、下落局面で人気銘柄化します。同社は毎年のように5~10円ほど配当を増やしており、今後も増配が期待できます。また楽天が携帯電話事業に本格参入すると発表し、シェアが奪われるとの懸念からドコモやKDDIの株価は大きく下落しましたが、その悪材料をすでに織り込んでいる分、これから買うのもアリだと思います」
※週刊ポスト2018年3月2日号