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中国が台湾を取ることは困難であろう - 岡崎研究所

 ワシントン・ポスト紙元北京支局長のポンフレットが、中国が台湾を取ることは困難であるとする最近の研究を紹介しつつ、米台が台湾防衛に引き続きコミットする必要があると論じています。要旨は次の通りです。

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 1月3日、習近平は、軍の会議で初めて「戦闘態勢」を命じた。中国では、中国が2020年までに軍事的手段で台湾を奪取すると予測する人達もいる。一方、トランプ政権は、米台関係の強化を約束し、米海軍の艦船の台湾への寄港を示唆した。

 長年、米国の専門家達は、台湾の「事実上独立した民主国家」という地位は、巨大中国の台頭で維持できなくなると考えてきた。ヘンリー・キッシンジャーもその一人である。

 しかし、近年、米国の専門家達は、中国が台湾を吸収するという想定に疑問をもち始めている。最近、ハワイの東西センターのDenny Roy上席研究員、とタフツ大学のMichael Beckley教授は、それぞれの研究で、中国が台湾を取れる能力及び意思について疑問を呈した。

 両者は、台湾の歓心を買うという点で中国の政策は失敗していると指摘する。台湾を標的にしたミサイル配備、台湾の人権活動家の投獄といった脅しは、統一への台湾の反対を強めた。昨年の世論調査では、台湾人の4分の3が中台は別の国と考え、一つの国とした者は14%だけだった。台湾人の半数が中国人とみなした20年前からは大きな変化だ。2016年1月には、独立派の民進党が初めて立法院で多数を獲得し、同党の蔡英文も総統選で勝利した。

 台湾との親善に失敗したら、中国は経済的梃子を使い得るのか。中国は台湾の最大の貿易相手国兼対外投資先だ。しかし、中国が台湾への投資を止めれば、台湾人の反感を買う。

 さらに、RoyとBeckleyは、中国の継戦能力を疑問視する。Royは、中国が台湾に対して軍事的手段をとれば、中国経済は打撃を受け、たとえ戦争に勝利したとしても、米国がアフガンやイラクで直面したような状況に陥ると指摘する。Beckleyは、中国による攻撃を検討し、封鎖、侵略、戦略爆撃、いずれも成功の見込みはないとする。台湾は15万の兵士を直ちに動かす能力を持っているし、台湾の海岸線の10%しか上陸に適さない。米国が台湾防衛に乗り出せば、8隻の米潜水艦により人民解放軍の上陸侵攻部隊の40%が沈められる。

 現在、中国は軍事予算の3分の1を台湾奪取戦争の準備に充てている。RoyとBeckleyは、米台政府には台湾の安全保障で協働し続ける義務があると主張する。 台湾は防衛費を継続的に増額する必要がある。昨年7月、蔡英文総統は、防衛予算を年3%増額し得ると述べたが、米国は台湾が防衛費を倍増することを望んでいると米政府高官は述べた。

 トランプ政権も台湾防衛強化の努力を継続する必要がある。12月に発表された国家安全保障戦略は、米台の強い紐帯の維持にコミットした。今や、米海兵隊が米国在台協会を防衛しようとし、大使館の態様が強くなる。昨年2月、初めて台湾の立法委員のグループが国務省の歓迎を受け、6月にはトランプ政権は14億ドルの対台湾武器売却を発表した。しかし、まだ出来ることはある。中台間ゲームの勝利は、まだ決まっていない。

出典:John Pomfret ‘Can China really take over Taiwan?’ (Washington Post, January 5, 2018)
https://www.washingtonpost.com/news/global-opinions/wp/2018/01/05/can-china-really-take-over-taiwan/


 中国が経済的にも、軍事的にも、台湾を中国の望む条件で統一するということはきわめて困難である、とワシントン・ポスト紙元北京支局長のポンフレットが論じています。ポンフレットは、米国の二人の専門家の研究を例にとりながら、台湾問題についての最近の米国人専門家たちの見解を紹介しています。興味深い論評です。

 これまで、米国の専門家たちの中では、台湾の「事実上独立した国家」という地位は、いずれ中国の経済力、軍事力の増大とともに維持できなくなるとの見方が一般的でした。その代表的人物はヘンリー・キッシンジャーで、彼は台湾と中国の「再統一は不可避」と主張していました。また、米国が台湾を放棄することにより、中国との友好関係を維持することが得策である、と主張した者もいました。しかし、ポンフレットは、現在の米国の専門家たちは、中国が台湾を取れる能力をもつことには疑問を呈するようになってきた、と言います。

 他方、台湾問題は、中国にとっては、「核心的利益」の最右翼に位置する重大事です。台湾を統一することが困難であっても、独立に向かう動きを無視することは到底考えられません。そのような観点から、2020年には「軍事的手段」を用いてでも、中国は台湾を奪取しようとするだろう、との中国人の研究者の見方も一概に無視することはできないでしょう。

 現に、台湾周辺では中国軍機の活動が活発化していること、また、中国の空母「遼寧」が台湾周辺を航行して軍事的な威圧活動を行うこと、などが常態化しつつあります。

 習近平体制としては、「中華民族の偉大な復興」というスローガンのもとに、優先事項として、台湾統一を位置付けていることは、想像に難くありません。カリスマ性に欠ける習が、名実ともに毛、鄧に次ぐ指導者としての権威を確実にするためには、なんらかの実績を残す必要があります。台湾対岸の福建省で十年以上勤務した経験を持つ習近平にとっては、とくに台湾問題において目に見える実績を上げたいところでしょう。

 「台湾の歓心を買うという点では、中国の政策は失敗している」とポンフレットは指摘します。中国の打ち出す硬軟両様の方策も、台湾人の歓心を買うことが出来ず、逆に、中台間の距離は拡大する方向にあるというのが今日の実態でしょう。昨年の台湾における世論調査の結果が引用されているとおり、いまや台湾人の4分の3が中台は別の国であると考えており、両者が一つの国に属するとするものは14%にすぎません。これは、20年前の調査で、台湾人の約半数が自らを「中国人」と考えていた状況からの大きな変化を示しています。

 ビジネスの世界では、中国は台湾にとっての最大の貿易、投資の相手先で、台湾にとって中国の存在が重要であることに変わりはありません。が、台湾人にとっては、中国の実態を知れば知るほど、自由で民主主義の定着した台湾と中国の違いを認識せざるを得ません。

 トランプ政権になってから、一時、米中間において「一つの中国」をめぐり、米中間の確執が表面化しました。しかし、その後は、北朝鮮をめぐる緊張状況に対処するために、米中間の交渉・駆け引きが続いており、台湾問題は喫緊の課題としては浮上していないようです。

 ただし、今後については、台湾をめぐり米中間の緊張状況が浮上する可能性は考えられます。特に、最近、米国議会において「国防授権法」が通過したことや、「台湾旅行法」が議論されていることを見れば、それは明らかであります。日本にとっても、いかに日台間の交流の一層のレベル・アップを図るかということが今後の主要な課題となるものと思われます。

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