
会見を行うマイケル・ウッドフォード氏。(撮影:田野幸伸) 写真一覧
きっかけは2011年4月に就任したばかりのオリンパスイギリス現地法人出身の社長マイケル・ウッドフォード氏が電撃解任されたことだった。同社長は、月刊誌「FACTA」が報じた内容を基に菊川会長(当時)及び森久志副社長(当時)の引責辞任を書簡にて促したが、逆に取締役会において解任されてしまった。「FACTA」が報じた内容とは、オリンパス社が過去に実施したM&Aにおいて不透明な取引と会計処理を行なっていたことだった。
社長を解任されたウッドフォード氏は、海外メディアを通じて自身の解任が過去の不正に触れたことが原因だと主張。オリンパス内の企業統治の不透明さを指摘した。当初は、ウッドフォード氏の指摘に反論していたオリンパス社もマスコミ報道や投資家からの批判を受け、11月1日、弁護士と公認会計士で構成される第三者委員会を設置。委員会の調査の過程で過去の損失の先送りが明らかになったため、11月8日を開き、公表した。また損失の隠蔽に関与したとされる取締役副社長の森久志氏を解任している。
こうした一連の動きの中で、オリンパス社の株価は急落。11月10日には、上半期中間決算を法定期限である11月14日までに提出できないことが発表され、東京証券取引所は同社を監理銘柄に指定した。12月14日までに提出できない場合には上場廃止となる可能性もあったが、現時点では上場が維持されている。
オリンパス事件をめぐっては、メディアの報道や捜査当局の動きが、ライブドア事件など他の経済事件と異なることも指摘されており、その公平性を疑問視する声も挙がっている。
参加ブロガーである大西宏氏は、「オリンパス問題で信頼を失っているのは誰だろう」というエントリの中で、こうした問題を改めて指摘した。
それに対するメディアからの批判も気持ち悪いぐらいありません。権力の監視という役割をメディアは捨ててしまったようです。ライブドア関係者は、きっと心の底から理不尽に感じているに違いありません。しかも、オリンパス社内だけでなく、外部からこの粉飾スキームを提供し、実行していた証券会社出身者の人たちへの捜査もないことも不自然すぎます。
また、藤代裕之氏も捜査当局の発表頼みのマスメディアの問題点を指摘した。
各社は取材もしているし、意図にも配慮しているともしていますが、今回のオリンパス報道を見て、本当に取材力があるのか疑わしくなってきました。問題があれば当局の動きがあろうと、なかろうと、関係者を取材をして報道すればいいのです。しかしながら、本筋はFACTAや海外メディアばかりでした。そこには当局が動かなければ書けない大手マスメディアの姿が浮き彫りになっています。
海外の投資家からは、日本企業全体のコンプライアンスに対する姿勢を疑問視する声も挙がっており、オリンパス事件の爪あとの深さがうかがえる。
■BLOGOSで振り返る“オリンパス事件”
・オリンパス報道で明確になった日本の大手マスメディアの当局依存 - 2011年11月10日
・オリンパス問題で信頼を失っているのは誰だろう - 2011年12月8日
・オリンパス社の全社的内部統制と「悪い意味でのサラリーマン根性の集大成」 - 2011年12月12日
・オリンパスのサラリーマン根性!日本の島国根性!でもドジョウの国にド根性はない!? - 2011年12月8日