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「音質に文句を言ってくるのはプロだけ」スマートスピーカー時代のボイスメディア"Voicy"の挑戦

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BLOGOS編集部
渋谷駅前の、とあるビルの一室。注目の音声配信アプリ『Voicy』CEOの緒方憲太郎氏にお話を伺いにやってきました。オフィスには金のバルーンアートで「VOICY」と掲げられています。

そんな和やかな室内の雰囲気とは真逆に、緊張の面持ちのBLOGOS田野編集長(以下タノヘン)。実は今回の直撃取材の前に、タノヘンは自らのブログでVoicyに噛み付いていたのです。

「まず音が悪い。このアプリを作ったやつラジオ舐めてるな」

ラジオディレクターの顔ももつ田野編集長。ラジオ局のADとして社会人のスタートを切ったのですが、ADって厳しいんですよ。人の名前を間違ったくらいで腹を切れくらいの勢いで怒られます。家に帰る時間もないほど働いて、ノイズを削り、音を美しく編集してリスナーに届ける。時に殺伐とした収録であっても編集マジックで楽しげなトーク番組に変えてしまう、そういう技術を20代の楽しい盛りと引き換えに身につけました。

そこまでの我慢が出来た者のみ、パッケージをオンエアすることができる。

それを信じて仕事をし、ラジオや音にまつわる業界の斜陽化に心を痛めてきたタノヘン、気づけば老害全開で「聞きやすい放送というものは~」とブログで説教を垂れていました。

そのアップから数日でVoicyのCEO緒方氏とのアポイントがとれ、タノヘン一座は渋谷のVoicy本社へお招き頂いた次第です。

にこやかにスリッパを勧めてくださる緒方社長。一同、穏やかに着席して、対談がスタートしました。【取材・文 蓬莱藤乃】

音質に文句を言ってくるのは"プロ"だけ

BLOGOS編集部
緒方:今回、実は田野さんに会えるのも楽しみにしていました。「Voicyはラジオを舐めてる」って書かれていたので、これは面白いなと思っていたんです。

僕自身、ベンチャー支援をしていたときに何百社も会社を見てきて、何かが盛り上がった時には、「そういうものはおかしい」というメディアが出てくることは必ずあるので、それは全然構わないと思っています。

田野:Voicyで一番気になったのは音質です。収録時にスマホのマイクから口元が遠いからノイズ多いし声小さいし、圧縮率も高くて音が悪い。聞いていて「しんどいな」と正直思いました。

喋り手に対してはすごく親切な設計になっていて、スマホ一台でマイクもいらず、収録した音声にBGMを後から自動で乗せて、ラジオごっこが誰でも簡単にできるというアイディアはすごいと思います。

緒方:音質の話でいうと僕らはやりたいことの5%もまだできていないんです。Voicyはまだβ版なので、それでもプロの方に刺さるんだって逆にびっくりしています。たった4人の会社で、できる範囲のことをやって、一番ニーズがあるところで回している、という事業です。

今は「誰と誰の番組はいいクオリティだ」という評価で構わないと考えています。例えるならば僕たちはテレビであって、音のクオリティは各放送局ごと、パーソナリティが自由にやればいいと思うんです。     

田野:家電の「テレビ」自体ってことですね、「テレビ局」ではなく。

緒方:僕らはテレビ網、つまりVoicy網をやっているんです。あと、田野さんと実感値が大きく違うところがあります。このサービスをリリースしてから叩かれまくってきましたけど、これはいけたなと思ったのは逆に「音質」だったんです。

田野:スマホ1台でここまでいけるか、みたいなことでしょうか?

緒方:そうです。プロ以外で音質に文句を言ってきた人は、まだひとりもいないんです。

田野:アハハハハハハ。

緒方:Twitterを見ていると、「音質が良くていいね」っていう人の方が多いくらいなんです。

田野:えー!?(驚)

緒方:動画アプリとかで、みんなすごくうるさいところで撮ったものを見ているので、そういう人たちには「Voicyはちゃんと聞こえる、すげー」ってリアクションになるんです。

僕らはラジオの人たちがやってきた仕事とは別のものをゼロから作っているわけで。だから音のプロたちがVoicyを「違う!」と怒っても、そもそも別なんだから「知らんがなー」と。

実際にVoicyのお客さんにヒアリングしてみると、ほとんどの人から聞きやすいねと言われます。プロと一般の人たちとの間にはものすごい乖離があったわけです。ということは音声産業は1回リセットだなと、産業の発展に音のプロたちが足枷になっているなと気づいてしまいました。

田野:ハハハハハ。

緒方:僕はラジオも好きなんですよ。父がアナウンサーで、MBSヤングタウンの初代パーソナリティをやっていました。YouTuberみたいに、Voicyからテレビやラジオに出演したりする人が出てくるのをすごく楽しみにしているんです。

またラジオ局とも積極的に連携したいと思っていて、文化放送さんにも参入していただいています。

音質に関しては、ユーザーの耳も肥えてきて、Voicyのパーソナリティの中から、何人かが自分で音質を向上させてくる時がいずれ来ると思うんです。みんなの中で音質というものが評価の対象になってきた時に、システムをアップデートしていけばいいのかなと、今は考えています。

「古い人ほど偉い文化」の世界は滅びる

BLOGOS編集部
田野:緒方さんが「音声コンテンツ」に未来を見ているところに強い興味を持ちました。ここ10年、ラジオの人と話していても明るい話を聞いたことがなかったので。

緒方:僕もラジオの人から明るい未来の話は聞いたことないです。

僕はビジネスモデルデザイナーとしていろんな事業を作っていくことを仕事としてきました。その中で見ている限り、衰退する産業にはルールが何個かあるんです。

その中の一つがクラシックミュージックやラジオ、歌舞伎などで言えることで、「古い人ほど偉い」という文化になっていること。その人たちに気に入られるために作られて、評価者が上の人になっていることが、一番問題になっているのではないかと考えています。ライトなユーザーからの声を反映できない場所や若手にチャンスがない産業は時代の変化への対応力が低いです。

ラジオってもったいないと思うんです。これだけ斜陽だと言われながらも聞く人はまだまだいて、広告費が1200億円もあって、もう少しできることがあるのではないかと。

ラジオ業界はファンビジネスの流れが分析できていない

ラジオが圧倒的に遅れているのは、ファンビジネスの流れの分析ができていないことだと思います。

ファンビジネスには3階層あって、1層目はおもしろい、または便利だから聞こうと思うステージ、2層目が毎回聞こうと習慣化するステージ、3層目がファン化するステージ。

朝の帯番組をずっとやっていたら、リスナーがパーソナリティのことを好きになってお中元やお歳暮が送られてきたりする、というのは習慣化からファンのところまでジワジワしみ込んでいった人たちですよね。

でも今のコンテンツのほとんどが、「面白い」「便利」というところだけで作り込もうとされています。それをまた聴きたい、もっと聴きたいから、それのある生活ってイケてる〜っていうところまで持っていかなきゃいけないのに、そこまで出来ていないんじゃないだろうかと。

ラジオには20年以上続く番組があったり、ラジオ通販は現物を見ていないのに売れたり、返品率が低かったりしている中で、確実に刺さる要素はどこかにあるはずです。

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