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- 2011年12月27日 08:06
日本が中国の国債を買う理由と中国の国債制度
25日に野田総理大臣と中国の温家宝首相は、日本が外貨準備の資金を使って、中国の国債を購入することで合意した。日経新聞によると、人民元の国際化を急ぐ中国にとり、日本が持ちかけた国債の持ち合いを好機ととらえたようである。
また、日本にとって最大の貿易相手国である中国と、金融面での協力を含め、経済のうえで一層関係を強めるねらいがあるとNHKは伝えている。日中が互いに国債を購入することにより、定期的な情報交換などにもつながるとして、安住財務大臣は「外交上も必要だろうと思う」と述べたようである(NHKのサイトより)。
ここで少し中国の国債について見てみたい。中国の国債を発行しているのは中華人民共和国財政部であり、中華人民共和国国務院に属する行政部門で日本の財務省に相当する。中国の会計年度は1月から12月であるが、予算案を可決する全人代は3月に開催され、可決は3月半ばあたりとなる。
中国の国債には、市場性国債(普通国債、特別国債)と非市場性で個人向けの貯蓄国債(証書式国債、電子式国債)がある。特別国債とは、2007年に外貨準備運用会社である中国投資有限公司(CIC)の資金調達のため財政部が発行した国債である。
発行される国債はゼロクーポン債(割引債)が期間2年から5年債など。また、利付債が3か月、6か月、1年、3年、5年、7年、10年、15年、20年、30年そして50年債まである。1996年からは流通可能な国債について全面的に入札制度が導入されている。
債券の流通市場は、上海と深センの両証券取引所の他、1997年からはインターバンク(銀行間)市場、2002年には店頭市場(個人や非金融法人)が導入されたが、取引の約9割をインターバンク市場が占めている。
投資家別の国債の保有割合を見ると、ちょっと古い数字だが、2009年12月末で商業銀行が61%、特殊決算メンバーが29%、保険会社が5%となっている。特殊決算メンバーとは、人民銀行など当局者であり、当局者、商業銀行、保険会社で9割弱を保有していることになる。
海外投資家に関しては、2002年に導入されたQFII(Qualified Foreign Institutional Investors)制度により、QFIIつまり「適格外国機関投資家」以外の海外投資家は投資ができない。このため今回、日本が中国国債を購入するためには、中国人民銀行の認可を得て適格外国機関投資家となる必要がある。
これまでナイジェリアやマレーシアなどが認可を得て中国国債を購入しているようで、先進国としては日本が初めてのケースとなる。
日本は最大で100億ドル相当の中国国債を購入するようだが、それでも日本の外貨準備(約1.3兆ドル)に占める割合は0.8%程度でしかない。NHKでは、ドルに偏っている外貨準備の運用を多様化する可能性を指摘していたが、日経では「極めて少額であり、外貨準備運用の多様化という位置づけでは全くない」との政府高官の発言を取り上げている。
これは極めて政治的な判断であり、「国債の持ち合い」をすることによる経済関係強化が大きな目的であり、日本における外貨準備の多様化や、お互いの国債市場への関与を意識したものではないと思われる。
それよりも、円と人民元を直接取り引きできる為替市場の整備を支援し、円建てや人民元建てでの貿易決済を促進したりすることでも合意したことによる影響の方が大きいのではなかろうか。
また、日本にとって最大の貿易相手国である中国と、金融面での協力を含め、経済のうえで一層関係を強めるねらいがあるとNHKは伝えている。日中が互いに国債を購入することにより、定期的な情報交換などにもつながるとして、安住財務大臣は「外交上も必要だろうと思う」と述べたようである(NHKのサイトより)。
ここで少し中国の国債について見てみたい。中国の国債を発行しているのは中華人民共和国財政部であり、中華人民共和国国務院に属する行政部門で日本の財務省に相当する。中国の会計年度は1月から12月であるが、予算案を可決する全人代は3月に開催され、可決は3月半ばあたりとなる。
中国の国債には、市場性国債(普通国債、特別国債)と非市場性で個人向けの貯蓄国債(証書式国債、電子式国債)がある。特別国債とは、2007年に外貨準備運用会社である中国投資有限公司(CIC)の資金調達のため財政部が発行した国債である。
発行される国債はゼロクーポン債(割引債)が期間2年から5年債など。また、利付債が3か月、6か月、1年、3年、5年、7年、10年、15年、20年、30年そして50年債まである。1996年からは流通可能な国債について全面的に入札制度が導入されている。
債券の流通市場は、上海と深センの両証券取引所の他、1997年からはインターバンク(銀行間)市場、2002年には店頭市場(個人や非金融法人)が導入されたが、取引の約9割をインターバンク市場が占めている。
投資家別の国債の保有割合を見ると、ちょっと古い数字だが、2009年12月末で商業銀行が61%、特殊決算メンバーが29%、保険会社が5%となっている。特殊決算メンバーとは、人民銀行など当局者であり、当局者、商業銀行、保険会社で9割弱を保有していることになる。
海外投資家に関しては、2002年に導入されたQFII(Qualified Foreign Institutional Investors)制度により、QFIIつまり「適格外国機関投資家」以外の海外投資家は投資ができない。このため今回、日本が中国国債を購入するためには、中国人民銀行の認可を得て適格外国機関投資家となる必要がある。
これまでナイジェリアやマレーシアなどが認可を得て中国国債を購入しているようで、先進国としては日本が初めてのケースとなる。
日本は最大で100億ドル相当の中国国債を購入するようだが、それでも日本の外貨準備(約1.3兆ドル)に占める割合は0.8%程度でしかない。NHKでは、ドルに偏っている外貨準備の運用を多様化する可能性を指摘していたが、日経では「極めて少額であり、外貨準備運用の多様化という位置づけでは全くない」との政府高官の発言を取り上げている。
これは極めて政治的な判断であり、「国債の持ち合い」をすることによる経済関係強化が大きな目的であり、日本における外貨準備の多様化や、お互いの国債市場への関与を意識したものではないと思われる。
それよりも、円と人民元を直接取り引きできる為替市場の整備を支援し、円建てや人民元建てでの貿易決済を促進したりすることでも合意したことによる影響の方が大きいのではなかろうか。