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加熱する「スリーパーセル」論争~「スリーパーセル」は実在するのかしないのか?~

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 公安調査庁と公安警察の活動実態が事実上同等である、となぜ当方が記述するのかといえば、それは日本の治安組織を綿密な取材に基づき検証した『日本の公安警察』(青木理著、講談社現代新書)の以下の記述を私が合理的判断基準に適当であるとして採用しているからである。

公安調査庁における調査官の情報収集手法は、公安警察のそれとほとんど変わるところはない。尾行や聞き込み、あるいは団体の拠点や集会に対する視察、協力者獲得・運営による情報入手法に至るまで、全くと言って良いほど同様手法の活動が展開されている。(中略)両者の根本的な手法に相違があるわけではない。公安調査庁が公安警察と同様の活動をしている…(後略)

出典:『日本の公安警察』(青木理著、講談社現代新書、P212-213)

 ご承知おきの通り、公安調査庁は1952年の破防法(破壊活動防止法)成立を以て設立された治安機関である。破防法は「暴力主義的破壊活動」を防止するために立法・成立されたものであり、ここでいう「暴力主義的破壊活動」とは、「内乱・陰謀・外患誘致・放火・強盗・往来妨害・汽車転覆・殺人等および予備」などを主に指すものである。現代風に言えばこれは、テロ活動と言えるだろう。

 これは、「スリーパーセルといわれて、もう指導者が死んだ、っていうのが分かったら、一切外部との連絡を絶って、都市で動き始める、スリーパーセルというのが活動される(中略)そうしたら首都を攻撃するよりかは、正直他の大都市が狙われる可能性もある」という三浦氏の想定する「スリーパーセル」のテロ活動の姿と驚くほど合致するといわねばならない。であるなら、「スリーパーセル」存在の根拠を、公安調査庁の報告書に求めるのは当然、合理的判断であると言わなければならないのである。

2-1)前述した青木氏の著作を以て、

公安警察、公安調査庁をはじめとする治安機関(中略)公安警察を中心とした日本の治安機関

出典:『日本の公安警察』(青木理著、講談社現代新書、P254-256)

 と言わしめており、これを記述する本書の表題が『日本の公安警察』と冠して、西暦2000年の時点で、既に公に出版されている事実を以てしても、公安調査庁と公安警察を一括して「公安」「公安当局」「我が公安」「公安警察」と記述すのは、北朝鮮とその関係者の動向を監視する日本の治安機構全般への呼称として、社会通念上の慣習として確立しているといわねばならず、至極妥当と言わなければならない。

 さらに、本件は冒頭にあげた通り、社会の公器たる民放番組において、「スリーパーセル」なる存在根拠薄弱な存在を「大阪に潜伏している」と、具体的地域名を限局して政治学者が断定したことについての妥当性を問うものであり、公安調査庁と公安警察の違いを解説する趣旨の記事ではないのであるから、「公安」には公安調査庁と公安警察などの、本邦治安機関がすべて包括されることを想定した記述と解釈するのが妥当である。

・「スリーパーセル」の記述登場に注目

 私は、かつて、かけがえのない日本人同胞を、北朝鮮の工作員が拉致した日本人拉致事件は、我が国の主権への侵害であるばかりか、普遍的な人権への重大な組織的挑戦と結論しており、日本社会のどこかに、現在でも北朝鮮の工作員が小なりと潜伏している疑いは、当然その蓋然性を有するものと思う。

 しかし「スリーパーセル」という記述が我が公安を以て記述されない以上、それは現時点で存在しない妄想・空想と判決せざるを得ないのが妥当(冒頭で参照した高氏記事の主張と同様)である。

 ただし、再三記述した通り、三浦氏が言及していない「差別」などへ射程へ論争の争点を拡大するべきではなく、社会の公器たる民放番組において、「スリーパーセル」なる存在根拠薄弱な存在を「大阪に潜伏している」と、具体的地域名を限局して政治学者が断定したことについての妥当性を問うものにもう一度引き戻していく方がより建設的であると思う。

 三浦氏が提起したのが、日本における防諜問題であると解釈すると、本件論争で「スリーパーセル」が仮に一般的用語となったのなら、我が公安は、それを反映した報告書を来年以降製作するか否かが、注目されるところである。なれば「スリーパーセル」の存在は実証されたということになるからだ。

※Yahooニュースより転載

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