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スキャン代行業者は戦々恐々?間隙をついて自炊レンタルスペースが台頭!

さる20日に、浅田次郎氏や林真理子氏など売れっ子作家7人が、書籍スキャン業者2社に対して訴えを起こしました。市販の書籍をバラして自前で電子化し、パソコンやタブレット、スマートフォンなどで見られるようにする、いわゆる「自炊」を代行するビジネスを差し止めようというものです。そこで、訴えられた業者の対応はどういうものか、提訴1週間後のサイトを覗いて見ました。

すると、訴えられたスキャンボックススキャン×BANKの2社とも、新規のスキャン代行の受付を「一時停止する」と書いていました。共に訴えられてから間もなく「お知らせ」の形で出しているのですが、サイト自体は何も変わっておらず、申し込みページもそのままなので???な感じもありますが、とりあえずは、作家側のパンチが決まったように見えます。

実は7人による提訴に先駆けて今年9月、作家122人、出版社7社が連名で、当時100ほどに膨れ上がっていた代行事業者に、「個人の自炊は著作権法上の私的複製で認められるが、業者によるものは認められない」とする書面と、今後は「差出人作家の作品のスキャン事業は今後を行うかどうか」という質問状を送りつけていました。作家側の「提訴のご報告」とするニュースリリースによると、「差出人作家の作品のスキャン事業は今後、行わないと、多くが回答したり、事業停止などを確認した」とのこと。第1ラウンドで、大きな成果をあげていて、今回は、第1ラウンドで抵抗した業者に、止めを刺そうということだったんですね。

このビジネスについては、このブログでも昨年11月に<ソニー「リーダー」登場と電子書籍の未来>で言及しました。そこで紹介したのが「ブックスキャン」社。その当時からメディアに登場し、今年に入ってからは海外有力メディアに次々登場している、多分、最大手ですが、ここも、作家側の攻勢を受けてか、著作権についての取り組みというか、考えが変わっています。

ブックスキャン社は昨年4月の創業ですが、ASCII.jpの5月のインタビュー記事によると「現状では、ブックスキャンに依頼された本は著作者の同意を得ているものとしてスキャンしています」と創業者は答えています。また、思想・文化系の出版社「月曜社」取締役小林浩さんの人気ブログ「ウラゲツ」によると、昨年6月段階の「著作権に関して」では「「BOOKSCANのPDF書籍変換システムへご依頼頂いたものは、著作権法に基づき、著作権保有者の許可があるものとして判断させて頂きます。許可がないものは、ご遠慮頂くか、ご自身でスキャンしてください」と、あったそうです。

ところが、現在は「BOOKSCANのPDF書籍変換システムへ依頼できるものは、著作権法に基づき、著作権フリーのもの、著作権が切れているもの、ご自身で著作権を有しているもの、著作者の許可がとれているものです。該当しないものは、トラブル防止のため、ご遠慮ください」と、表現を強めています。

著作者の許可を証明するような文書の添付などは求めていないので、その実効性がどれだけあるのか、疑問の余地は残りますが、業者側が、著作権者=作家の意向を取り入れつつあるような印象ですね。スキャン代行業者は戦々恐々かも知れません。そうなると、裁判でも、原告優位な展開も予想されます。

こうした流れの中で、このところ目立ってきたのが、「自炊レンタルスペース」あるいは「スキャンブース」というビジネスです。スキャン代行では、業者が、客から送られてきた書籍を裁断し、スキャンして、電子データを作るという、第三者が自炊するのが問題視されるので、それなら、機材一式を揃えた場所を提供し、個人が自分で書籍を裁断したり、スキャンすれば問題ないだろうという発想です。(スキャンだけが問題なので、裁断は100円前後で業者が代行するサービスもあります)

昨年秋あたりから、あちこちに出来ているようで、ネットでざっと検索したところ、東京だけで10カ所ちかくありました。中には、マンガ、文芸書、専門書など約1万冊という裁断された蔵書を揃え、「手ぶらで来ても自炊(電子書籍化)を体験できます」と謳う「自炊の森」という業者もあります。重量制プラント時間制プランの2つの料金体系がありますが、15分で1000円の時間制で、商用コミックなら10冊程度はスキャンできるということです。サイトには、「自炊の種」の在庫本として最新刊の「スティーブ・ジョブス」もあって、問い合わせたところ、これもスキャンブース料金を払うだけで利用可能といいますから、お得感は十分。

ただし、これにも議論の余地はありそうですが、こういう「蔵書」を揃えていない場合は、どういう展開になるのでしょうか? 例えばそうしたスペースの一つ「すきゃん堂」について、情報通信問題に詳しい真野浩さんはFacebookで「まねきTV裁判と同じ論拠が適用されるなら、こういう店も違法になる」と書き込んでいますが・・・・・

ややこしい、著作権法の解釈について語る資格はありませんが、情報法学問題に詳しい岡村久道弁護士は自身のブログの最後にこう述べていて、問題の難しさを指摘しています。

<一 般のユーザー側からすれば、テクノロジーの進展を受け入れられないのかと言いたいだろう。しかし、権利者側からすれば、だからこそ大量コピーに連なるので 困ると主張したいはずである><さらに、便利なはずの電子出版が、いっこうに日本では本格的に普及しないこともあり、ユーザーが自炊に頼りたいという気持 ちがあることにも頷ける面 がある。そう言うと、それと本件とは別だという声が出ることも、容易に予想される。これは音楽配信について、かつて見た風景と一部で似ている面もある

それにしても、電子書籍元年と言われたのは2010年。2011年も終わろうとしているのに、裁判で決着をつけるのは2012年以降になるわけですね。

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