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津田大介氏「政治メディアを立ち上げる」

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■質疑応答


-大学での学生たちの様子は。

津田大介氏(以下、津田):ソーシャルメディアとジャーナリズムの関わりについての概況、メディア・リテラシーの概論、情報発信のノウハウや注意点、情報をどうお金に変えていくのか、というビジネスの観点でも教えています。半数は留学生で、彼らは母国に帰ってメディアに就職しますし、日本人学生も、新聞やテレビ業界への就職率も高い。その中で、"既存メディアはこう変わっていく"という、既存メディア受けしないようなことも教えています。

中には非常にレベルの高い学生がいて、すぐにソーシャルメディアを使った報道の実践も開始して、雑誌に寄稿することもありました。僕は、彼が既存の大手マスメディアに就職するのか、それともいきなりフリーでやるのか関心を持っていたんですが、意外なことに医療系のネットニュースサイトに就職することを決めました。フリーでやっていくためにはまだまだ経験も人脈も資金も足りないので、資金を稼ぎ、仕事として取材活動をする上で、官僚などともつながりができる。資金と人脈とノウハウを持って、いずれは自分で医療系のメディアを立ち上げるんだと思います。賢いですよね。そういう新世代のジャーナリストになっていくような学生に教えることができたのはとても貴重な経験でした。

-これから作ろうとしている政治メディアを通して、何か後世に残したいという思いがあるのか。

津田:なぜ僕が政治メディアを作りたいかというと、テレビや新聞が報道する政治の"政局中心"の報道にうんざりしているからなんです。見たいものが全くないんです。本当につまんないなあと思って…。僕以外にもつまんないと感じている人もいるだろうし、政策に関する論議を見たいんですよ。その政策が実現されたら、誰にメリットがあって、誰にデメリットがあるのか、どう変わるのか、それを噛み砕いて教えてくれるメディアを作れば、日本の政治がちょっとでもいい方向に変わってくれるのかなと思っています。

全体を10年くらいのスパンで考えていて、来年にはとにかくオープンさせて、4、5年くらいで一定の影響力があって、"政治を見るんだったらそのサイト見なきゃいけないよね"と言われるサイトにしたい。残りの5年は、いろんな人が集まれるような、ライブハウスやサロンのような場所を作ってあげたい。ソーシャルメディアとリアルを繋いで、コミュニティを作っていきたいなと思っています。

-記者クラブにも挑んで行くのか。

津田:フリーランスのジャーナリストには記者クラブを敵視する人も多いですが、僕はそうでもない。もう少しフリーのジャーナリストに開放してあげてもいいとは思いますが、記者クラブの存在そのものが悪だ、という風には思っていないですね。

そもそも、僕が作ろうと思っている政治メディアって、あまり記者クラブとは関係ないんですよ。なぜかというと、政策中心のメディアにしようと思っているから、僕が行くべきなのは記者クラブとか国会ではなくて役所なんです。役所の審議会は誰に対しても開かれていますし、そういうものを伝えていくことで、政策・政治に興味を持ってもらうだけでいいので。国会に行って、誰々の人間関係がどうだ、っていう政局には本当に興味がないんですよ。とにかく役所に行くメディアを作りたい。その方が効率がいいんですよ。だって日本の法律の9割くらいは役所が作ってますから。議員立法は1割か2割です。

-既存メディアの危機が叫ばれている。彼らがソーシャルメディアを利用したりすることをどう思うか?

津田:既存メディアは形は変えて存続すると思います。通信社や新聞社にはお金もあるし、力もあるので、人件費が高すぎると思いますが、そう簡単には潰れないと思います。

マスメディアとソーシャルメディアがお互いにどう侵食しあったり、使い分けられて行くのかということについて、ある人物の言葉がとても印象に残っているんです。結局、ネットには不確かな情報が沢山出てくるので、検証の必要があると。その検証は、専門知識のあるプロや、今までのジャーナリズムの担い手が担っていくべきものであると。そして、ソーシャルメディアの役割は3つあると言っています。

1つ目は、プロが作った記事について、多様な視点を提供する役割。
2つ目は、埋もれているものを拡散して社会的問題にできる、拡声器としての役割。
3つ目が、プロの記者が取材する、調査するときのネタ元、情報源としての役割。

ソーシャルメディアはこういう使い分けをされていくし、だからマスメディアもなくならないと思う。これを言ったのが誰かというと、Wikileaksを作ったジュリアン・アサンジなんです。既存のマスメディアの破壊者だと思われていたアサンジがこういうことを言うのがすごく象徴的だと思う。

ソーシャルメディアはどこまでいってもニッチメディアなので、僕が作ろうとしているメディアも、既存メディアを駆逐するためではなくて、専門的なものに特化して伝えていくことに意味があると思います。僕らが掘り起こしたものを多くの人に拡散するときに、マスメディアの力を必要とすることもあるでしょう。そのような補完関係がここから2、3年かけて作られていくんではないかなと思っています。

-既存メディアへの批判としては、広告主に逆らえない、というものがあります。公平中立な報道を行うために、欧米ではドネーションによって成り立っているサイトも増えていますが、個人の政治献金の習慣もない日本で、その可能性については?

津田:僕は、今後寄付がブームになるんではないかなと思っているんです。それは3.11がもたらした大きなものかなと思っています。たとえばFacebookであれば、僕らは今は「イイね!」ボタンを押すしかないけれども、それだけじゃなくて、「イイね!」ボタンを押したら、10円、50円、100円…とか送金できる機能が今後広がってくるはずです。ソーシャルメディア内にそうした少額決済の機能がつけば、全然違ってくると思います。すでにTwitterやFacebookもそういうベンチャーを買収したりしているし、GoogleもGoogle+にGoogle Checkoutをつけるだろうし。

個人の活動がソーシャルメディアで可視化されて、それに対して簡単にお金を遅れるっていう仕組みが整備されれば、寄付がブームになってくるんじゃないかなと思っています。そうすればメディアのビジネスモデルのあり方も5年以内には変わってくるんじゃないかなと思っています。

プロフィール


津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。
@tsuda津田大介の「メディアの現場」

■津田氏による寄稿
「Gov 2.0 Expo」速報レポート1日目 - 2010年5月27日
「Gov 2.0 Expo」速報レポート2日目 - 2010年5月28日
当選確実なう - 2010年6月25日
政治家のTwitter利用術 - 2010年7月13日
参院選を読む - 2010年8月4日





■関連リンク


Japan quake changed social media’s role, Twitter journalist @tsuda says - AAJA

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