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世紀の一局「羽生竜王 対 藤井五段」は"対局直前"に注目!

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共同通信社

羽生善治竜王 対 藤井聡太五段 世紀の対局

いよいよ第11回朝日杯将棋オープン戦 本戦 準決勝・決勝がせまってきました。先日、国民栄誉賞を受賞した羽生善治竜王と、第44期棋王戦予選2回戦、第49期新人王戦2回戦のいずれも勝ち抜き、好調をキープしている藤井聡太五段。“歴史に残る一局”が行われるのは2月17日土曜日、有楽町朝日ホール。準決勝の対局開始時刻は10時30分と予定されています。

さまざまなメディアで勝敗予想がおこなわれていますが、今回は「将棋の細かいルールはわからないけれど、この1局を楽しみたい!」という方にオススメしたい「観戦のポイント」、CSテレ朝チャンネル2、ニコニコ生放送、Abema TVでの生放送で“見逃してほしくない瞬間”をお伝えします。

羽生竜王の表情を見逃すな!

ずばり、何よりおさえていただきたいのは「対局がはじまる“直前、直後”の、羽生竜王の“表情”」です。もちろん対局中のポーカーフェイスや苦悶の表情、「いやー…」「んんっ?「そっかー…」というつぶやきにも注目していただきたいのですが、その前に!見逃してほしくないのは “対局直前・直後”。これには理由があります。

時は3年前にさかのぼります。2015年の第8回朝日杯将棋オープン戦決勝。羽生善治名人 対 渡辺明二冠(冠位は当時のもの)という黄金カードで事件は起こりました。

この時、振り駒で先手になったのは羽生名人。解説を担当していた山崎隆之八段は、先手・後手について「やりたい戦法を先手が選べる」「渡辺二冠は受けて立つタイプ。かわさずに、相手がやりたい戦法を受けるタイプです」という話をしていました。そして対局開始。初手「7六歩」を指す羽生名人の「表情」と「手つき」を見た山崎八段はこう言いました。

「いやこれは序盤、、、初手から力が入ってますね」

「7六歩」という手はいくつかある初手の候補の、もっともオーソドックスなもの。しかし、その表情と手つきから、山崎八段は“何か”を読み取っていました。二手目、後手の渡辺二冠は「8四歩」。これまたオーソドックスな一手です。その手を見ながら山崎八段が

「羽生名人の表情がすでに、中盤の勝負どころのような…」

とコメントしている最中、羽生名人の手が、盤面の中央に伸び、聞き手の山口恵梨子女流初段(段位は当時)と山崎八段は同時に「ええーっ!?」と叫びます。

指した手は「5六歩」

羽生名人は「中飛車」という戦法を選択。すでに“何か”を読み取っていた山崎八段は、

「なるほど、だからこんなに厳しい表情を!!!」「あまりやらないことをね……(やろうとしていたからこんな厳しい表情をしていたんですね…というニュアンス)」

と、3手しか指されていない局面で興奮気味。

そして、生中継の画面には、対局相手・渡辺二冠の「中飛車かよ…」「それは一瞬も考えてなかったわ…」という、これまた正直な表情、さらに背もたれにのけぞるような動きが映し出されました。

その表情はまるで「お母さんに『ジャンプ買ってきて』と頼んだら、”Vジャンプ””赤丸ジャンプ”を買ってこられた時の子ども」のような、「アニメ主題歌の入ったカセットテープを買ったら、テレビとは違う、全然知らない人が歌っていた時」のような、これ以上ない「コレジャナイ感」「思ってたんと違う!感」にあふれるものでした。

「渡辺二冠は相手がやりたい戦法を受けるタイプです」という山崎八段の発言が、完全に「フリ」に…。

尋常ではなかった「中飛車」のインパクト

写真AC
この「中飛車」が、どれほど意外な出来事だったのか。たとえていうならば「一打席限りの勝負の第1球で、トルネード投法でおなじみの野茂英雄がアンダースローで投げてきて、颯爽と1つストライクをとった」ぐらいのインパクト。

もっといえば、須藤元気さんが著書「風の谷のあの人と結婚する方法」において、「あえてこんな読書をおすすめする」という文章の中で書いていた例え「ドラクエのラスボスがスト2のブランカだったというくらい違和感のあるもの」。それくらいのインパクトがありました。

ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」最新作のボス戦に臨むような気持ちで「今回のボスはバラモス、ゾーマ、デスピサロ、はたまたダークドレアムのようなタイプか…」と対局を待っていた渡辺二冠。しかし、目の前にあらわれたのは、格闘ゲーム「ストリートファイター2」のブランカ!しかも、リュウでもケンでもガイルでも、バルログでもサガットでもベガでもなく、ブランカだったのです!!

羽生さんも渡辺さんも、どんな戦法でもオールマイティに指しこなす棋士で、中飛車を指すこともあります。そしてもちろん「中飛車への対策」も熟知しています。いわばドラクエでもスト2でも、ポケモンでも信長の野望でも何でも来いのユーティリティプレイヤー。

しかし、ふたりとも飛車の位置を初期設定から動かさない「居飛車」という戦法をメインで指している棋士。

中飛車をはじめ、飛車を移動させて戦うのを「振り飛車」というのですが、羽生さんが「戦法の選択が可能な“先手”」になったので、「後手番ならば振り飛車の可能性もあるが、先手になったので居飛車の戦法の中から何かを選択するだろう」と、誰もが考えていました。

それなのに、戦法を選べる「先手」で飛車を振った。しかも、振り飛車の中でも「中飛車」という戦法を選んだことに衝撃が走りました。振り飛車の中では、比較的「四間飛車」という戦法を選ぶことの多い羽生さんなのですが、中飛車。「ドラクエのボス戦かと思いきやスト2。そして、リュウでもケンでもベガでもなく、ブランカを選択した」というインパクトを観戦者に与えたのでした。

しかし、これには「フリ」がありました(振り飛車だけに)。決勝戦と同じ日に準決勝が行われたのですが(今回の羽生 対 藤井戦も準決勝)、その際戦った伊藤真吾五段が「先手で中飛車」を指し、後手の羽生さんは受けてたっていたのです。決勝戦、“衝撃の3手目”が指されてから数秒後、

山崎「あ、それで控室で、お弁当を食べる時間も削って、ずっと伊藤さんとさっきの将棋の感想戦(=検討)をやっていたんですよ」
山口「まさかの決勝戦への前フリだったとは…」

という裏話が明かされたのでした。

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