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【書評】障害者界の淫獣かく語りき ホーキング青山「お笑い! バリアフリー・セックス」

お笑いとエロにはある共通点がある。それは「障害者については語るまじ」という不文律だ。 障害者は笑いやエロとは無縁の、純粋無垢な人たちなのだと思われがちだ。

だがそれは、健常者社会からの一方的な押しつけにすぎないのではないか? 本書はおそらく日本の障害者お笑い芸人第一号のホーキング青山氏が、自身のセックスライフとともに障害者の性に真正面から向き合った一冊。 『UNIVERSAL SEX』(なんというタイトル!)の文庫化だ。

お笑い! バリアフリー・セックス (ちくま文庫) お笑い! バリアフリー・セックス (ちくま文庫)

頼れる兄貴的な文体でホーキング氏は、自身の初体験からナンパの仕方、奇想天外なオナニー方法(『車いすのシートにコンニャクを挟み、移動しながらするオナニー』は爆笑必至)まで、これでもかとカミングアウトしてくれる。 氏の肩書はお笑い芸人であり、収録されている内容はほとんどが「すべらない話」だといって差し支えない。特に養護学校の教諭が欲求不満で暴れ狂う生徒を“ある方法”でなだめたという箇所は必読、凄まじいとはこのことだ。

そんなホーキング氏最大のライバルは乙武洋匡。 ベストセラー『五体不満足』を皮切りに端正なマスクをひっさげメディアで華々しく活躍する彼が「陽」ならば、ホーキング氏は「陰」(淫?)である。 おまけにお互い電動車いすと“芸風”も似ているため、ホーキング氏の対抗意識も一入だ。 もっとも、後にツイッターで日夜自虐ブラックジョークをさく裂させる乙武氏を目撃するに、実は二人はそう遠くない所に位置しているようにも思うけど。

著者が本書を書いた目的は同情をさそうため、ではもちろんない。性欲は障害があろうがなかろうが関係ない。 障害者の方が、セックスに至る難易度が少しだけ高いだけだ。

著者は、この本から何かを得て、初体験ができたという読者(それは健常者障害者を問わず)を待望しており、さらに、ゆくゆくは本書そのものが存在意義を失うことをも望む。障害者が障害を気にせずにセックスを楽しむ社会――車いすの上から著者が見上げるその夢はあまりにも壮大だ。

【その後の話】

現在もホーキング氏は表舞台で多方面に活躍中であり、近年では古典芸能にも挑戦中とのことだ。

2012年にEテレで「バリバラ」が始まるなど、「障害者については語るまじ」という雰囲気がやや薄まった気配はしないでもない。

ただ一方で、書評内で「陽」と評した乙武氏に対する世間の評価は、本人の不倫報道後に大暴落。報道後はほとんど人でなしのような扱いだった。これも、背景には「障害者は笑いやエロとは無縁の、純粋無垢な人たち」だとする思い込みがあったことは言うまでもない。

一番困ったのはホーキング氏ではないだろうか。今まで「陽/陰」という境界線越しに敵視していた乙武氏が「陰」(淫?)にヒールターンしてしまった! 今さら自分がベビーターンするわけにもいかず。なかなか難儀な状況であり、乙武氏本人の次に商業的な割りを食ったのはもしかするとホーキング氏かもしれない。

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