記事
  • krmmk3

津波怪獣と自主規制

今回は特撮オタ話です。読み飛ばして下さい。

・延長して継続しているディアゴスティーニの特撮DVDシリーズ、物の本などでは取り上げられない作品が多いだけに楽しみにしているものの、視聴する方がなかなか追いつかず。その中でも、「東京湾炎上」は面白かった。あまりに巨大に作られていてミニチュアであることを全く感じさせない石油タンカー、アラビアンナイト号をじっくり映すオープニングから始まって、ある意味異色とも言える特撮映画に対する挑戦的な映像を要求する構成、大きなスケールの話を狭い世界の話で書いたストーリーなど、全く予備知識無しで見たら実に新鮮な感覚を味わわせてくれた。それだけに、パニックシリーズ第二弾の「ノストラダムスの大予言」が商品展開から抹殺されているのは残念。「東京湾炎上」は第一弾の「日本沈没」と「ノストラダムスの大予言」の流れを明らかにくんでいる様が同梱の解説本から伝わってくるだけに、見られないのがもどかしい。同じく商品からは抹殺されている「獣人雪男」は上映会で見たことあるだけに。

リンク先を見る東京湾炎上 [DVD]
舛田利雄,大野靖子
東宝

ちなみに映画「エド・ウッド」の中のちょっとしたお遊びで、「獣人雪男」の海外版、「Half Human」のポスターを見つける事が出来ます。さすがティム・バートン監督。

・現在、スカパー!のファミリー劇場で特撮ドラマ「帰ってきたウルトラマン」の放送が行われている。ありがたいのは、ちゃんと予告編が各話の終わりにちゃんと収録されていること。DVDだと予告編は特典映像扱いで、最終巻に51話分まとめ収録になっている。が、まとめでは見ていて面白くない。予告編といえどもちゃんと一話ごとの本編の後に収録されてこそ価値が出るというものである。

ただ、今回の放送は完全放送ではないのか、13話・14話が放送されずに抜けてしまっている。この年末に今まで放送された分のまとめ放送が行われるので、今度こそはと期待したのだが、やはり放送されずに飛ばされてしまっている。ちなみに第12話の終わりには15話の予告編が入っていた。

第13話のタイトルは「津波怪獣の恐怖東京大ピンチ!」、第14話は「二大怪獣の恐怖東京大龍巻」。続きものとなっている前後編である。おそらく放送されないのは、怪獣によって起こされる津波のシーンが、東日本大震災の後ではまずいと言うことで自粛したからだろう。

わたしはウルトラシリーズの中では「帰ってきたウルトラマン」こそ一番面白いという考えを貫いている。特に序盤の二部構成の話は、ガメラが姿を消し、ゴジラがその後釜のごとくヒーロー路線を走りつつあったために、スケールの大きな怪獣ものが姿を消していた劇場スクリーンにとって変わるかのごとき迫力満点の展開をみせていた。予算こそ厳しいものの、その内容たるや50~60年代の全盛期の怪獣映画にもヒケをとらないものであった。この13・14話もその例に漏れず、竜巻を起こす"津波怪獣"シーモンス、津波を起こす"竜巻怪獣"シーゴラス(名前は妖星ゴラスからかな?)の2匹の怪獣の「つがい」としての面が前面に出るよう演出され、単に怪獣によって街が破壊されるだけでなく、この二匹によって東京が占拠されるという様を描いている。怪獣が結果街を乗っ取ったという展開は日本に数ある怪獣もののなかでも他の例は少なく、わたしの知る限りでは「ガメラ 大怪獣空中決戦」のギャオスがあるくらいである。しかも、明らかに14話の演出を戴いているシーンがあるところから、単独では評価できない作品でしかない。事実上、この13・14話が頂点に立つのだ。

話のスケールが大きい代わりにウルトラマンの存在が希薄で、あまりストーリー上重要でない。二怪獣を東京から撤退させる(倒してはいない)のも同作品の防衛組織であるMATの作戦によってなされている。このしばらく後に「帰ってきたウルトラマン」はそれまで登場しなかった宇宙怪獣や星人が責めてくる展開が多くなる、新兵器ウルトラブレスレットが追加されるなど、てこ入れがなされる。作品を作る側と当時の視聴者が見たかったものが違っていたのだろう。

おそらく今回放送しない原因となった津波のシーン、テレビ特撮としてはよく出来ている。が、本物の津波の映像を見た後では大げさすぎる。ウルトラマンと比較すると高さ100m以上はたっぷりあり、さすがにありえないものでエンターテインメントのための映像以外の何者でもない。地震直後の自粛ムードのときならともかく、今は他局でも過去の作品に関してはそこまで過敏な態度はみせず、一度は放送を取りやめた作品を普通に放送している。ファミリー劇場ももう少し柔軟な態度を見せてほしい。なにせこのままではもう一回、13・14話の津波シーンがそっくり流用されている第37話「ウルトラマン夕陽に死す」まで放送できないことになってしまう。これも前後編の前編であり、準レギュラーのうち二人が殺人という形で姿を消す、ショッキングかつ重要な話であり、これを放送せずに「帰ってきたウルトラマン」を放送するのは意味がない、と言い切ってしまったもいいからだ。

もっと怖いのは、この放送自粛が製作会社である円谷プロダクションの意向で行われたケースだった場合だ。団体の抗議やそれを恐れての自粛。テレビ界でももっとも早い時期にそれが行われたそれの一例が、同じ円谷プロ製作の「ウルトラセブン」第12話、「遊星より愛をこめて」だろうからだ。たかが雑誌の付録の表記「ひばく宇宙人」に過敏に反応した人間たちが「被爆者を怪獣扱いするとは何事」と声を張り上げた人権団体に対して円谷プロはセブン第12話は永久封印されることにしてしまった。そもそも被爆した怪獣など映像界にはいくらでもいるし、「宇宙人」とあったものを勝手に「怪獣」と言い換えている点(宝島社のムック本「怪獣学入門」の初版本に掲載されている当時の新聞記事などの写真から確認できる。なお、この初版本はすぐに回収され、該当記事を削除した第二版が書店に並んだ)から見ても、抗議団体は本作はもちろん特撮など映像界のことなど知らないのは確実である。まったく話し合いに応じず、ヒステリックで一方的な抗議の様子が容易に想像出来る。本来屈する必要のない、説得力の無い抗議だったと思われる。それにあっさり屈した円谷プロ。そういう前例があるからこそ、今回のことがきっかけで、「帰ってきたウルトラマン」13・14話は、さすがに永久封印はないだろうけど放送はさせない、などの半分封印になることは十分考えられる。ならなきゃいいのだが。

時代がそうだとは言え、どうもこの手の自粛が過剰になっていることに危機感を覚える。最初に書いた「東京湾炎上」など、実際に起こった事故によってリアリティを感じられる世間の風潮を利用している感すらあるのだが・・・。

あわせて読みたい

「メディア」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    GSOMIA破棄は支持率回復が目的か

    舛添要一

  2. 2

    GSOMIA破棄巡る米国の反応に注目

    早川忠孝

  3. 3

    GSOMIA破棄 日韓対立は韓国に非

    和田政宗

  4. 4

    GSOMIA破棄は韓国の危険な火遊び

    AbemaTIMES

  5. 5

    韓国GSOMIA破棄 優遇除外が理由

    ロイター

  6. 6

    タニタの正規雇用中止は称賛に値

    城繁幸

  7. 7

    報ステの立場を奪った羽鳥番組

    水島宏明

  8. 8

    横浜市カジノ誘致でドンと対決か

    渡邉裕二

  9. 9

    不発多い韓国の不買 今回は成果

    WEDGE Infinity

  10. 10

    コミュ力ない人 1コマ漫画が話題

    AbemaTIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。