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憲法改正「緊急事態対応」について

1月31日憲法改正推進本部会合 今回は「緊急事態対応」をテーマに議論が交わされました。
論点としては、議員任期・選挙期日の延長の話と、政府への権限集中・私的権利の制限の話に分けられます。

この件に関しては議員にも世間にも誤解と思い込みが大きいので整理をしてみます。

1.まず、非常事態に選挙期日の特例を設ける件。

これは、「議員が自分の身分を保証したいからやるのだろう」という批判や、議員の中にもそうした批判に負い目を感じているかのような言動をする方がいますが、これは決して議員の保身のためなどではありません。

大災害が発生した場合、自治体職員は人命救助、ライフラインの復旧に全力を注がなければいけません。そんな状況下で候補者の届出から投開票の準備に人手を割いたり、避難所として使うべき学校の体育館を投開票所として確保するために被災者を移動させるのでしょうか?「選挙なんかやっている場合か」と誰もが思うはずです。実際、阪神淡路大震災では統一地方選挙を2か月延長、東日本大震災でも2ヵ月~半年延長しました。

この時は地方議会議員の選挙であり特例法を制定することで対応ができました。しかし、国会議員については任期が憲法(45条、46条)で定められており、憲法を改正しない限り選挙を行わないと憲法違反となります。また衆議院が解散された後に大災害が発生した場合であっても、解散から40日以内に選挙を行わなければなりません(54条1項)。

被災者救助に全力を尽くすべき状況下であっても、あくまで憲法を遵守して選挙を行うのか、非常時だから憲法違反もやむを得ないと許容するのか、それとも予め憲法に延長要件を規定しておくのか。答えは自ずと明らかなはずです。

いやしくも国会議員たるもの、議員自らの保身のためなどではなく、非常事態において国民の生命、暮らしを守ることを最優先にすることが憲法違反とならないようするために、こうした整備をしておく必要があることを正確に誠意をもって説明しなければなりません。

2.次に、政府への権限集中と私的権利の制限

この点について、実はかなりのことが現行法で既に手当てがなされています。

災害対策基本法において、政府への権限集中や私的権利の制限(財産権の制約、行為規制)が規定されているほか、国民保護法、武力攻撃事態法、国民救助法、新型インフルエンザ特措法など多くの災害関連法制が既に整備されています。

改憲派の主張でよくみられるのは、南海トラフ地震や首都直下地震があるから緊急事態条項を憲法に明記しておかないといけない、と結び付けている主張です。

南海トラフ地震や首都直下地震への対応が必要なことは誰も反対しません。しかし、それが憲法を改正しないと対応できないことなのか?という点は精緻に詰めた検証が必要です。

現行法でどこまでできて、何ができないのか?足りないものは法律改正で対応できるのか?法律改正の限界を超えていて憲法を改正しないと対応できないものは何か。これを詰めて整理した上で「こうした事態に対処するためには憲法にこの条項を設けておかなければいけない」と提示することが必要です。

政府の命令としては災害対策基本法で緊急政令が制定できることになっており、生活必需物資の譲渡制限、価格統制、金銭債務の支払い延期などを定めることができます。他にもこれが足りないというものがあるなら、それを法律に書き足せばよいのです。

しかし、「何が起こるかわからない」から「何でもできるようにしておくべき」という考え方は、一見もっともな主張に見えますが、実は非常に危険なことです。それこそ、「どさくさに紛れて何をされるかわからない」「憲法を変えて何をしようと企んでいるんだ」と批判されるのも当たり前であり、慎重であるべきです。

緊急時の対応に対するメニューが足りないという問題なのか、それとも法律ではなく憲法に明記すべきというレベルの問題なのか、これを整理して論じる必要があります。

そして、メニューが足りないという問題の多くは法律に書き加えるか、新規立法をすることで対応が可能です。

これに対し、既に法律で規定されていることだけれども、憲法に明記して法的安定性を高めるというのは真っ当な話です。その場合は、改憲により政府への権限集中や私権制限を「可能にする」ではなく「明記する」と正しく説明する必要があります。

他方で、改憲反対派やメディアの一部に見られる問題点は、改憲派が憲法を改正して「私的権利を制限しようとしている」「国民を政府の命令に従わせようとしている」といって恐怖を煽っている点。新たに人権を制限するのではなく、その制限は既に法律で課せられています。憲法に書くということは、これまで法律で規定されていたことを憲法に明記するということです。

そして、もし現行法で政府に権限を集中することや、私的権利を制限すること(財産権の制約や従事命令)が人権侵害であり違憲の恐れがあるというなら、今でもそう指摘するべきです。

ただ、その場合、災害対策基本法の緊急政令や従事命令は違憲立法だということになりますが、過去の災害対策基本法制定時の審議やその後の憲法学者、”人権派”弁護士さんの主張などを見てもこの制約が憲法違反だという指摘は見当たりません。

むしろ、人権派や立憲主義を強調される方こそ、「国民の人権を制限したり行為義務を課すなら、国会の多数決で可決できる法律ではなく、憲法に規定して権力者側が恣意的な立法を行わないよう縛りをかけておけ」、と主張されるべきではないかと思います。

こうした点について、精緻な検証と議論を行った上で、その過程を憲法改正の最終決定権者である国民の皆様に丁寧に説明をし、国民投票でご判断を仰ぐ必要があります。

私自身も、緊急事態として想定しなければいけない事態、現行法の整理と法改正の限界、憲法上の課題等についてさらに精緻な検証を行い、発信していきたいと思います。

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