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国家権力と戦うということ。

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そもそも、事件に関する証拠は最初のガサ入れの時に一度総ざらいで持って行っているはずで、それをわざわざこの時期に捜索差押えを行ってパソコンまで持っていく、というのは、検索のストーリーに乗ってこない大成建設に対する嫌がらせ以外の何ものでもないと思うだが、ましてや対象が、社内「弁護士」のパソコン、ということになると、より次元が異なる問題になってくる。

秘匿特権が正面から認められているかどうかにかかわらず、弁護士が適法に職務を遂行している限り、そこには(表立っては)手を出さないのが現代の欧米先進国の暗黙のルール、というのは良く言われる話で、理由は簡単、そこに土足で踏み込まれてしまっては、依頼者の防御権もへったくれもなくなってしまうからである。

そして、社内弁護士だって、社外弁護士と同一の職務規程に服し、守秘義務をはじめとする厳格な義務と、高度な職業倫理を要求される立場なのだから、他の社員と同じようにパソコンを持って行ってよい、ということにはならないはず*1

だから、「抗議文」を出した大成建設弁護人の気持ちも非常に良く理解できるのであるが、それに対する東京地検の答えは、想像を絶するものであった。

「リニア中央新幹線を巡る入札談合事件で、東京地検特捜部は2日夜、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で大成建設の本社を家宅捜索した。同社への捜索は2017年12月、今月1日に次ぐ3回目。同社の担当者らは特捜部の任意聴取に受注調整を否定している。」
(日本経済新聞2018年2月3日付朝刊・第39面)

なんと、抗議文に対するあてつけのように2日連続での捜索。もはや常軌を逸しているというほかない。

地検特捜部としては、意地でも「4社による受注調整」というストーリーを維持したいから、昨年の強制捜索後に、社内で交わされたメールや面談録等の言葉尻を捉えて証拠隠滅等々の嫌疑を振りかざし、被疑事実を認めない「2」社の一角を崩しにかかろうとしているのだろう。

だが、「事件発覚後」のやり取りをいかに分析したところで、真相解明への寄与は極めて薄いにもかかわらず*2、今後の公判に備えた「証拠化」の作業まで妨害する捜索差押を一度ならず二度までも行うとは・・・。

検察官が大成建設の起訴を断念するようなことにならない限り、一連の捜索の意図とそこで得られた成果は、公判の場で示され、裁判官の面前で検証に晒されることになるはずだが、いかに弁護人がついているからといっても一民間企業に過ぎないこの会社が、それまで、度重なる国家権力の揺さぶり、プレッシャーに耐えることができるのか?

「国家権力と戦う」というフレーズは、一見かっこよいが、いざそれを貫こうとしたら多大なる苦難を伴うこともある。

それを身をもって示してくれているこの会社に、自分は心の底から喝采するとともに、この戦いの行方を最後まで見届けなくては、という使命感に駆られ始めたところである。

そして、常日頃「弁護士秘匿特権なんて、優先度の低い問題だから」と思っている自分ですら、こりゃ何とかしないといけないな・・・と思ってしまうようなきっかけを与えてくれた東京地検に対しては、とりあえず感謝の意を表しておくことにしたい*3

*1:仮に他の社員のパソコンと区別がつかずに持って行ってしまったのだとすれば、直ちに還付すべきだろう。

*2:なぜなら、ここ1カ月の間に作られた資料は、あくまで「おぼろげな過去の記憶を辿る」ものに過ぎないからで、最初の捜索時に差押絵を受けたと思われる、当時の「生」の資料に比べれば、遥かに証拠価値の低いものばかりだから。

*3:この筋の悪そうな案件に首を突っ込んだことで、「特捜部」そのものが瓦解するようなことにならなければよいのだけど、ということを、老婆心ながら思っていたりもする。

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