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- 2011年12月22日 09:58
就職活動に臨む学生は”深刻”にならず”真剣”になれ~キャリアセンター職員の語る”シューカツ”の真実~
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企業の入社式の様子 写真一覧
企業の情報を鵜呑みにするのは危険
―最近では、「就職活動全体を手伝いますよ」といったように、学生の採用活動全般をサポートする企業もありますね。
沢田氏:就職難になってから「いい人」を演じる企業が増えました。人で人を採ろうとしているように思います。不人気な業界は、絶対に人事はソフトですからね。あとビジュアル的に素晴らしい人事も増えています。おそらく学生受けする人事を選んでいるのではないでしょうか。
―それは、企業としてもあまり本質的なやり方ではないですよね。
沢田氏:以前は、人を集めることが一番の目的でした。応募の母数が増えれば、優秀な人が紛れ込む可能性があがるため、それを抽出しようと考えるわけです。しかし、安易に人集めに走ると、後で大変なことが起こります。
だから「採りたい層を集めよう」にシフトするのではないかと思っています。もしこのまま2月の説明会の時期に突入したら大変ですよ。そこでどういう風に選別するのかには注目しています。やや非人道的なもので行くのか、学歴、成績でいくのか、書類で落とすのか。
おそらく2月くらいになると企業の人事はメディアに対して、「採りたい層に会えない」というようなことを言い出すのではないでしょうか。「なかなかピンと来る人に会えなくてねー」みたいな。私はそれに対して、今から反論しておきます。実際はそうじゃないだろうと。「採りたい層に会えない」のではなくて、学生が集まりすぎて「採りたい層がわからない」だろと。
正統的な手法で考えるのであれば、業務内容や仕事の様子、特に厳しさをわかってもらった上で、自然と絞込みをかけるべきなんですよね。例えば「うちの営業にはノルマはないけど、月末はこれぐらい忙しくなるよ」みたいなことを伝えて欲しいと私は思っています。
―説明会などで使用される企業紹介ビデオには、よい所しか出てこないですからね。
沢田氏:そうですね。でも実際に現場に行ってみると、喫煙所にボコボコの灰皿なんかが置いてある。「こんなにボロボロなら、新しいの買えばいいじゃないか」と言うと、「いや、これは月末に販売目標が達成しないと、店長が灰皿投げるからボコボコになるんですよ」なんて答えが返ってくるわけです。そんなん一言も聞いてないぞって思いますね(笑)
―今は「みんなの就職活動日記」のような掲示板や2chのような情報源が増えていますから、学生の間でいわゆるブラック企業の評判にも過敏になっています。
沢田氏:一口に"ブラック"といっても、ちょっとしたきっかけや噂などが実態とかけ離れて、瞬間的に背びれ尾びれがついて広がっていくこともありますからね。ブラックと言っても、その内実は様々ですからね。上司がたまたまブラックなのか、仕事のさせ方がブラックなのか、労働管理がブラックなのか。
例えば銀行なんかは、人気企業で志望する学生も多いですけど、お金を返してくれない企業に取り立てに行く部署なんかは、エリートのイメージとはかけ離れた泥臭いことをしているケースもあったりしますからね。ですから、こういう情報が広がったということは、情報を受け取る側のリテラシーが問われることでもあります。
―ネットの情報を鵜呑みにするよりも、実際に働いている自分の父親であったり、親戚に話を聞いたほうが、視野が広がったりする部分もありますからね。
沢田氏:ネットの掲示板に流通している情報の怖いところは、「入るため」の情報であって「働くため」の情報ではないことです。今の就職活動は大変ですから、「入るため」になってしまうのもわかるんですが、そこをゴールにしてしまうのは怖いですよね。学生が企業の人たちと話をしていて、かみ合わないのは「そこ」だと思うんです。学生は、「入る」ための話を聞きたがる。でも人事が話したいのは「働く」というです。学生は内定者や新入社員に「エントリーシートに何を書きましたか」みたいなことを聞きたがるんですけど、「じゃ、おまえは、俺と同じ人生歩むんかい」という話です。
新卒一括採用の就職活動で「行きたい企業にいけなくて不幸だ」みたいに学生は思いがちですけど、他の企業にいって幸せになることだってあるんです。最初は不本意だったことが楽しくなることだってあるんです。そもそもの話として、そういう話がもっとフォーカスされてもいいと私は思いますけどね、社会全体として。入りたくなかった会社に入ってもやりたいことが出来る可能性がある。そういう可能性を無視して、排他的に世の中を見てしまったら、誰もが息苦しくなるだけですから。
―かつて一般的だったOB・OG訪問という手法が廃れてきている弊害もあるのでしょうか。
沢田氏:OB・OG訪問という手法が、個人情報保護法によって使えなくなってきていますからね。大学は卒業時に連絡先を聞いたものの、2、3ヶ月後に配属になってどこかに飛ばされると追いきれなくなってしまう。で実家に連絡するとご両親に煙たがられる。一方、企業として窓口を設けて「OB・OG訪問はこちらから」なんてやっている企業もありますが、そこで得られる情報には少し気をつけなければならないと思います。面接の隠れた第1段階みたいになっているケースもありますから。
私が携わっている大学も、12月くらいになると職員宛に人事からメールが流れますからね。「本学の職員を希望する学生からOB・OG訪問の依頼が来ると思いますが、そこで言っていいこと悪いこと――」みたいな。学校名だけ伏せて、そのまま掲示してやりたいと思いますね(笑)
利益を上げることをすっ飛ばして「社会貢献」を唱えるな
―就職活動は、企業、大学、学生それぞれに問題点があり、複雑化しているため解決が難しいという一面もあると思うのですが。
沢田氏:就職活動って本当に難しいのかという議論に対して、私は案外そうでもないかもと思います。ステークホルダー(利害関係者)がたくさんいるから、解決策が見えにくいというのが今のご指摘だと思うのですが、就職活動は相互依存関係にあります。企業が採用活動をやめますといったら学生は就職できない。学生がそんな就職活動はしませんといったら、企業の採用活動は成立しない。相互依存ですから、どちらかが変われば現状の方式は成立しないわけです。変わらないということは、問題点がありながらも、良いところもあるということです。
複雑だ、問題だと叫ばれる背景には、若者が簡単に職業社会に移行できなくなったことがあると思います。そして、さらにその裏には若者バッシングがありますが、それも景気がよければ問題にならない話です。経済が厳しければ、そこに働き口を探そうとする人も厳しいという構造ですね。
―ここ数年、学生の安定志向も指摘されていますが、そういう意識の変化はお感じになられますか。
沢田氏:それは最初に指摘したとおり、多感な時期が景気低迷期と重なる世代の意識として仕方ない部分があると思います。そういう意識は、震災によって後押しされていると思いますね。
もう1つ震災が後押しした学生の意識として「社会貢献」というものがあります。これは企業にしてみると困ってしまう要素の1つで、企業の営利活動、経済活動の中でCSR(企業の社会的責任)的に社会貢献ができるケースもありますが、それだけを目的に来られても扱いようがない。利益をあげなきゃいけないという部分をすっ飛ばして、社会貢献と言われても困ってしまうわけです。そういう思い自体は素晴らしいことなので生かしてあげなければいけないと思いますが。
一昔前の世代が今の若者をバッシングしますけど、彼らが同じ年頃のときにボランティアや社会貢献を無償でやっていたかというと、そんなことはないと思うんですよ。多くの年長者が、今になってやっと社会貢献とかボランティアとかに目覚め始めている中で、二十歳そこそこの結構な数の若者が既に社会貢献に取り組んでいるとしたら、それは素晴らしいことだと思います。
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- BLOGOS編集部の独自取材企画



