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- 2011年12月22日 09:58
就職活動に臨む学生は”深刻”にならず”真剣”になれ~キャリアセンター職員の語る”シューカツ”の真実~
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就職活動時期の早期化や新卒一括採用に抗議しデモ行進する学生(写真提供:共同通信社) 写真一覧
ナビサイトの登場が「夢を追いかけ続ける学生」を生んだ
―ただ、一方でそうしたキャリア教育が経団連などの産業界と連携が取れているかというと疑問な部分もあると思うのですが。
沢田氏:私の知る限り、あまり産業界はキャリア教育に期待していません。ただ、人事の中にキャリアとか若者に対して問題意識を持っている方もいますので、そうした人たちからご協力を得ることはできます。しかし、「企業として」となると、まだ大分温度差があると思います。
現実的には、“ そこまでやっている暇がない”というのが実態なのではないでしょうか。学生に注文はつけるけど、"具体的にこうしろ"というのはないですね。コミュニケーション能力がいい例で、日経連が「学生を採用する際に何を一番重視するか」という問題の回答に8年連続でコミュニケーション能力を上げているのですが、「こうしたらコミュニケーション能力が高まるよ」というのは一度も言ってないですから。
―企業の意識の変化という点はどうでしょうか。先ほどお話に挙がったように、” 染めやすい布”を求める方向から、即戦力重視といった方向への変化があるのでしょうか。
沢田氏:それは現在の新卒一括採用システムを堅持するのか、あるいは通年採用にシフトしていくのかという議論にもつながっていきます。個人的には、現時点ではまだまだ日本の企業は新卒一括採用を維持していくと思います。なぜならば、企業の人事側にそこまでマンパワーに余裕がないですし、サポートする我々も一括採用の方が圧倒的に支援しやすいですから。
大学の研究者の中でよく"一括採用"の悪を指摘する人がいます。しかし、ゼミを運営する際には4月に学生を受け入れる形が一般的です。それが、通年採用になって、4月、6月、8月、10月みたいにそれぞれの時期にゼミ生を受け入れるようなことをして、ゼミを運営していけるのかという懸念があります。そういう小さい単位ですらマネジメントできないのに、より利害関係が絡む企業に、個別に具体的な管理が必要な通年採用を求めるのは難しい。ましてや、日本の管理職の多くがプレイングマネージャーですから、通年採用なんてやったら現場の管理職がつぶれてしまいます。
―著書の中では就職ナビサイトの弊害も指摘されています。ナビサイトの誕生により、誰もが簡単に企業にエントリーできるようになったことで、「夢を追う学生」が増えてしまったという問題です。
沢田氏:例えば、昔はリクルートブックという企業一覧が掲載されたタウンページの2、3倍もあるような分厚い本が送られてきていました。当時は、個人情報保護法がなかったため名簿が売り買いされて、玄関の前にボンと送られてくるわけです。それを見て学生が、『御社に興味があるので資料を送ってください』という手紙を書く。そうなるとマンパワーの問題で、100枚書こうと思っても書けない。
現在のようにボタン1つでエントリーできるわけではないので、活動量に限界がある。企業側も送る学校の階層を吟味しているので、下位のクラスタの学生は大手企業を記念受験しようなんていう発想が出てこないわけです。しかし、いまや簡単にエントリーできるわけですからね。
問題点を指摘されながらも一括採用は続く
― 一括採用を批判する側の理論として「そこから漏れるとリカバーがきかない」という指摘があると思うのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
沢田氏:私の意見としては、一括採用を中核にすえながらサブシステムで補えればいい話だと思います。例えば、現在も秋採用や追加募集をやっています。こうしたサブシステムがいくつもあるんです。意外とそういうところが見られていない。
名だたる大手企業ならともかくとして、ほとんどの企業は一括採用だけで枠が埋まるわけではない。内定辞退が出るケースもありますから、追加募集というのはしています。多くの場合、こうした募集は特定の大学との人間関係の中で補充していたりしますから公開されないのが一般的です。こうした状況が、一度チャンスを逃すとリカバリーできないというイメージにつながっているのです。
―そこは学生側のイメージがそうなっているという部分もあるのでしょうか。
沢田氏:もちろん、あると思います。追加募集などが、なかなか目に入ってこない、企業をもう一度吟味しようとしないのが問題です。ただ、そんな状態でもし通年採用になったら、いつまでも『夢を追いかけ続ける』状況になってしまいますから、どこかで踏ん切りはつけなければならないと思います。
―震災の影響で、採用スケジュールが遅れるという声もあります。
沢田氏:震災の影響が出たのは4年生、2012年の4月から働く子たちです。企業の人事は、現在の4年生への対応でバタバタしていた部分もありましたが、今は落ち着いていると思います。採用人数については、まだ吟味している段階かもしれませんが。
―2013年卒の採用活動は、いままでよりも短い期間で学生を選ばなければならなくなる分、選考が厳しくなるという指摘もあります。
沢田氏:私は、それはメディアが煽りすぎだと思います。自分も2013年卒の就職活動は短期決戦になるといいましたが、それは首都圏の学生の場合です。地方の企業の説明会開始は、今も昔も早くて12月、通常ならば1月・2月からです。
これまで学生側も、誰もが10月から動くわけではありませんでした。私は三段階ぐらいあったと思います。10~12月にトップバッターで動き出す学生がいます。その後、後期試験が終わって、「じゃあ就職活動するぞ」というスタンダードなタイプがいます。さらに春休み明けに学校に来てみたら皆やっている、既に内定が出た奴がいるから、危機感を感じて動き出すタイプがいる。こうした本来であれば、動き出しがばらけていた学生が12月1日のリクナビがオープンしたタイミングで一気にアクセスが集中したからリクナビのサーバがダウンしたわけです。
―就職活動に臨む「学生側の意識」も問題点として上がることが多いと思います。多くの学生が、自分が知っている大手企業やBtoC(企業と消費者の取引)の企業にしか目がいきません。BtoB(企業間取引)の企業や、非常に高い技術力をもち経営的にも安定した中小企業もあると思うのですが、なかなか目が向かない。キャリアセンターの役割として、そういう企業と学生をつなぐ役割も求められていると思うのですが。
沢田氏:まず構造的な問題として、BtoBの業界と大学のキャリアセンターとのつながりがほとんどありません。キャリアセンターの職員は3年から5年で異動しますから、業務内容の引き継ぎを優先してしまい、業界にどんな企業があるかということは伝えることができないのです。その企業で働く面白さや特徴などは個人のナレッジになってしまうので職員の異動で根絶やしになってしまいます。
―学生の目を中小企業に向けさせるような取り組みに、キャリアセンターは注力しているのでしょうか。
沢田氏:もちろんしていますが、就職活動を始める前や、活動初期だと、学生があまり聞く耳をもっていないんですね。。どうしても知っている企業、有名な大企業に意識が向いてしまいます。ですから、ある程度ガイダンスや説明会などで強制的に一事例として紹介したりしているケースはあります。
―就職が厳しいというトレンドの劇的な改善が期待できない中で、大学はキャリアセンターの機能を強化しようとしているのでしょうか。
沢田氏:キャリアセンターの機能を強化しようという流れが続くのは間違いないと思います。しかし、どういう強化かというと、人員を増やすことで、学生からの相談に乗ってあげて、困っている学生を一人でも多く助けようという方向性です。そのため、外部人材としてキャリアカウンセラーの方を呼んできて、多くの学生からの相談を受けつけられるようにする。
こうしたカウンセラーは話を聞くことはできますし、相談を受けることはできますが斡旋ができません。何故かと言うと、キャリアセンターに一時的に配属されるカウンセラーの多くは30~40代の女性です。手が空いていて、若い子の支援をしたいという意志をもっている方です。しかし、彼女たちの多くは企業をそれ程知りません。自分が勤めてきた企業とパートで行った企業とせいぜいその周りぐらいです。そのうえ、学内のシステムとかに不慣れだと、どうしても情報量が限られてしまいます。
またキャリアカウンセラーは、企業の人事担当が求人情報を持ってきても応対するのは非常に稀です。。対応するのは、管理職、管理職がいなければ正規職員です。外部から派遣されたキャリアカウンセラーは最前線で学生対応しているにも関わらず、企業対応をしないので情報共有が遅れたり、見過ごしがちです。ですから、学生に「どんな働き方をしたいの」と聞くことが中心になる。学生が企業や仕事について、十分理解していなかったとしても、どのくらい理解していないのか、その程度がわかりにくいのです。
―例えば、もっと業界を俯瞰して語ることが出来る人材を外部から招聘して、授業などをしていただくということの方が、ニーズがあるのでしょうか。
沢田氏:キャリアセンターの講座としては、抜群に良いでしょうね。本来なら、キャリアセンター内に、そういった情報が蓄積され、スタッフが相談に来た学生に提供できることが理想だと思います。なぜなら、外部講師がいなくなれば機能しなくなりますからね。
昔であれば、10年20年やっている「キャリアセンターの主」みたいな職員がいたわけです。彼らは、学生が行きたいと思っている企業の歴史的背景まで語ることができた。それに、「この企業受けるんだったら、ここ受けとけよ。ここには、何年先輩の何々さんがいてな・・・」とか「この企業受けるなら当然ここもだろ。ここは、業界内でも特に・・・」という話が出来たんです。企業の不正についても、しっかり覚えていて、学生に注意を促せたんです。
日本は歴史的に見ても、職業カウンセリングではなく職業指導がメインです。何故なら、職業を選ぶほど発達していない学生を相手にするわけですから、大人が指導的に携わった方が、間違いがない、だまされない、より良い職業選択ができる方法だと考えられていたわけです。今のように、あまりにも多くの情報を取り扱う就職活動であれば、当然、精度や質に問題のあるものも混在します。そういう意味では、企業情報を伝えるだけではなく、学生の企業を見る目、つまり情報を吟味する目を養っていくことも大切な支援だと思います。
就職活動の問題は「若者が如何に大人になるか」という問題でもある
―例えば、ドイツなどでは高等教育を受ける人と職業訓練を受ける人が早い段階で分かれています。こういった制度が日本にも取り入れられる可能性はあるのでしょうか。
沢田氏:ドイツのそういった制度がうまくいっているかどうかは議論の分かれるところだと思いますね。日本でも今や大学もアカデミズムを追及するところと、もう少し職業訓練よりにするところと分かれてきています。しかし、実際に営業であったり、経理の専門家になれるような勉強をさせたとしても、日本は総合職採用ですから、実際に企業に入って配属されると、そうした専門性が逆にあだになるケースが出てくるわけです。あるいは、職業に固執されると、使いづらい人材と思われてしまうかも知れません。
ですから、企業側がどういう風に人を管理・育成していくのか。今までのように多職種経験型で、「管理職たるものすべての職場を理解しておくべきだ」という方向性で行くならば、大学も育てようがありません。そういう意味では現在のあらゆる意味で中途半端な教育の方が、かえって都合いいわけですね。中途半端さゆえのよさがある。企業側が大学生を批判するけれども、企業が何を求めているのかをブラックボックスにしてあいまいにしていると、大学側としても何かを徹底的に教えることがハイリスクになってしまうわけです。
つまり、結局就職活動の問題というよりも、今のこの世の中において、若者がどういう風に大人になっていくのかという問題だと思います。そのために、産業界は何が出来るのか。教育機関は何ができるのか。家庭は何をできるのか。もちろん、国においても。そうした議論がないまま、どこかを責めても就職活動の問題は解決しないでしょうし、責任をかぶせられる方も納得しないでしょう。
- 2013年までに知っておきたい100の話
- BLOGOS編集部の独自取材企画



