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日本はなぜ変われないのか

政党がだらしないから?政治にリーダーシップを発揮する人材が登場してこないから?政治家のいうことがコロコロ変わるから?根強い既得権が存在するから?すべてが当てはまっていますが、どれも結果であり、原因ではありません。

そろそろ気がつくべきなのは、福田、安倍、麻生、鳩山、菅、野田といくらリーダーを変えた所で、しかも政権交代までやってもなにも変わらなかったことです。いや変えられなかったことです。小泉さんも当初は自民党をぶっ壊すと高らかに宣言したにもかかわらず、いまなお自民党は壊れていません。しかも政党間の政策の差がなくなり、能力を問うだけになってきているのです。あまり健全ではありません。

なにかを変えようとすると、それによって利益を得る人と、利益を失う人がでてきて、結局は舵を切ることが困難になっています。賛成と反対で議論がいろいろでたTPP問題がそのことを象徴しています。それまでその体制のなかで利益を得たり、仕事を得ている人たちにとっては、それによって不利益を被ったり、あるいは現在の得ているものを失いかねないために当然反対します。それによって現在は得ていない利益が生まれる側は当然、変えろといいます。それは自然なことです。しかも、いずれもが大義名分を掲げています。

すべての人たちの利益を満たす政策はなかなかあるものではありません。

しかし国政となると、すべての国民の利益を満たすことが求められます。でなければ、支持を失い政権維持はできません。それが日本が変われない根本的な原因を生み出しています。

相反する利害、その調整ができなくなってきているのです。

消費者の利益を考えれば電子書籍の時代を先取りすることが必要ですが、出版業界にとっては脅威とされ、政府は教科書を電子書籍化すれば経済効果もうまれることがわかっていても、既存の業界への配慮からすすめません。

テレビは、技術の流れ、また消費者の利益を考えるとスマートテレビになっていきますが、それを促進するための政策も、放送局の立場、電波利権を守りながらとなり、結局は世界から遅れを取り始めています。結果、液晶テレビというモノに縛られた製造業は付加価値を生みだすことができず赤字化していっているのが現実です。

地方によって、あるいは産業によって、なにが利益的かということが違ってきたからです。製造業が経済を牽引していた時代は、地方は工場を誘致し、また製造業を全国に広げる政策、交通インフラを整備する政策をとればよかったのです。そして、コントロールセンターを東京に集中することが効率的でした。しかし、それは地方を疲弊させる結果となりました。人材が東京に流出したばかりか、もっとも付加価値を生みだす機能を地方から奪う結果となりました。

現代は、もっと複雑な時代になってきています。製造業ですら、モノをつくるだけでは生きていけない時代です。車もコンピュータ制御となり、湯沸し器ですらマイコンで制御していますが、モノも情報化が進み、スマートフォンのようにハードとソフト、またアプリケーションやコンテンツ供給、通信インフラの複雑な組み合わせのビジネスが登場し、またビジネスのしくみも産業の垣根を超えて複雑になって来ました。

経済や社会が複雑化するとともに、あちらをたてばこちらがたたずというトレードオフの関係が増えてきます。どちらを政策として優先し、優遇するかをいまは政治家というよりも現実は官僚が仕切っているわけですが、官僚機構そのものがこの複雑性を扱えるしくみにはなっていません。

なぜなら、日本の官僚機構は、江戸時代の分権型の体制から、明治以降の中央集権体制をつくるために生まれたもので、いくら優秀な人材を集めたところでこの現代の複雑性に対処する能力はもっていないからです。すべてを中央に集め、ものごとを単純化して処理するしくみが、復興庁を東京に置くという馬鹿げた話を生みだすのです。

それらを変えるためには、それぞれの国民にとって、それが利益にかなうかどうか、つまり我が事にしていく、政策の自由度を高め、小さな単位にわけて、その小さな単位の最大の利益を追求できるようにしなければ、結局は機能しなくなった中途半端な政策が残っていきます。

マーケティングでいえば市場の細分化によって、違ったニーズを持ったグループそれぞれに最適な製品やサービスを提供することがいまや常識で、それができなかったビジネスは、コモディティ化によって、際限のない価格競争にみまわれています。政治の世界も同じです。細分化して考えなければ、それぞれの人にとって、帯に短く、たすきに長いということになってしまいます。すべての国民にあう政治とは、誰にもあわない政治なのです。

異なったニーズを持つ人たちに最適な政治を行おうとすると、政治を我が事として考え、参加ができるように政治と国民に近づけることがまずは必要になります。全国一律、日本一律の政策ではなく、できるところから、多様な政策を同時並行して実施していくとを考えるとやはり現実的には地方主権ということになってきます。

現在は政策のほとんどを国が仕切っているので、たとえば大阪をこうしたい、名古屋をこうしたい、神奈川をこうしたいと言っても、それは国の政策、国の法律と整合性がとれないとして排除されます。経済特区で採用された制度の陳腐さを見ればそれは一目瞭然です。

もちろん防衛や外交のように国家が担うべき政治も残ってきます。しかし、地方に移せる権限は、どんどん地方に移し、地方のニーズにそった多様な政治や行政を行なわなければ、多様性が求められる時代にはあわなくなってきているのです。いまは国政が小さな政策まで決めなければならないために、重要な問題に集中することもできません。そして際限のない調整がつづきます。

がんじがらめになり、動けなくなった日本を解放すること、その鍵を握っているのは地方主権です。なによりも優先すべき課題だと思います。橋下新市長が上京したときに、どの政党も大阪都構想に反対出来なかったことも、もはや国から政治を変えることはできず、地方に委ねるしかないということだったのではないでしょうか。

政治の表面づらをいろいろ変えても日本は変わりません。現代にあったしくみに変更すること、それができなければどこが政権をとろうが、日本の明るい将来、日本の活力は生まれて来ません。

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