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AIに将棋の手筋は読めても、相手の性格や体調はわからない。完璧な介護ロボットが登場するのも遠い未来と言わざるを得ない - 「賢人論。」第54回羽生善治氏(中編)

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NHKスペシャル『天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る』の番組リポーターとして人工知能(AI)の最前線を取材した羽生氏は、テクノロジーが進化した未来をどのようにとらえているのだろうか。介護業界も注目しているAIの進化について、率直な意見を聞いてみた。果たして未来は、明るいものになるのか、それとも…?

取材・文/ボブ内藤 撮影/公家勇人

AIは今後、将棋の世界からリアルな世界へ影響を及ぼす

みんなの介護 近年のAI研究の発展には、介護業界の注目が集まっています。メディアで積極的にAIの最前線を取材されている羽生さんは、どのように考えていますか?

羽生 AI研究が初期の段階からボードゲームを対象にしたのは、一定のルールで盤上の駒を動かすという条件がなじみやすかったからですが、チェスをはじめとして将棋、それから囲碁に至るまで、この数年で目覚ましい成果を挙げています。将棋の世界では、コンピュータの将棋ソフトの登場以前と以後では、将棋の指し方も大きく変化しました。

これから先は、私たちの日常のリアルな世界にその成果が生かされていくのが期待されていますね。ただし、将棋の世界で起こったような激しい変化は、現実社会では起こりにくいのではないかと私は考えています。

みんなの介護 その理由は…?

羽生 例えば最近、自動運転が可能な自動車の開発に期待する声が高まっていますが、すでにさまざまな問題が指摘されていますね。自動運転の自動車と人が運転している自動車が道路上で事故を起こしたとき、責任問題はどうなるのか?とか。

これはすぐには答えの出ない問いです。理論的には、公道で走る自動車をすべて自動運転に切り換えれば解決するようにも思えますが、これを実現するにはさまざまな法整備や技術的問題、それから膨大な費用負担などをクリアしなければなりません。

みんなの介護 介護分野にAIやロボットを導入する際にも、同じような問題は起こりそうですね。

羽生 その通りです。「モラベックのパラドックス」と呼ばれていますが、AIは将棋の世界で発揮したような人間の能力をはるかに超えたことができる反面、人間がごく普通に行っている動作をさせるのは非常に困難だという面があります。

介護の現場では、介助する相手の性格や体調、そのときの状況に合わせて手加減をする必要があるでしょう。基本的にはやさしく接することが最適な条件だと思いますが、リハビリを伴うケースなどは、心を鬼にしてあえて厳しく接しなければならないケースもあると思います。

そのような判断をAIに自らさせようとするのは不可能に近いことで、自動車の自動運転以上に、実現へのハードルは高いでしょう。これから先、AIを搭載した完璧な介護ロボットが登場する未来はまったくないとは断言できませんが、実現可能なレベルに達するのは、かなり遠い未来のことだと言わざるを得ません。

現時点でAIにできるのは、介護の現場で働く人たちをサポートするような作業、例えば食事をつくったり、洗濯をするときなどの単純作業を人間に代わってやらせることくらいなのかなと思います。コンピュータは疲れ知らずで、ルーティンワークはもっとも得意とする分野ですから。

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