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アフリカの子どもに銃を取らせる世界(1)「電気自動車のふるさと」の子ども兵―コンゴ民主共和国(六辻彰二)

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 アフリカ中央部にあるコンゴ民主共和国の南キヴ州一帯では政府軍と武装組織の衝突が相次ぎ、1月26日までに130万人の避難民を出す事態となっています。この国では騒乱が絶えませんが、それはコンゴをとりまく「闇」が形となって現れたものといえます。

「電気自動車のふるさと」の闇

 英国人作家ジョセフ・コンラッドは1899年、当時ベルギー領だったコンゴを船員として訪れた経験をもとに『闇の奥』を発表。この作品でコンラッドは、コンゴの一大産業となっていたゴムの農園で過酷な労働を強いられるアフリカ人の苦しみや、「未開の地」におけるベルギー人の傲慢さや精神的倒錯を描き出しました。

 それから100年以上の月日が流れた現在、この地はコンゴ民主共和国として独立していますが、それでも深い「闇」がとりまいています。同国では金、錫、亜鉛、タンタルなど豊富な資源が産出されますが、国連児童基金(UNICEF)は同国の鉱山で働く子どもの数を約4万人と推計。そのなかには、貧困によって自ら働く子どもだけでなく、親の借金のカタとして、あるいは誘拐されて連れてこられた人身取引の犠牲者も含まれるとみられます。

 最近、特に注目されるのは、スマートフォンや電気自動車で用いられるリチウムイオン電池の原料となるコバルトの生産を取り巻く「闇」です。英国地質調査所の統計によると、2015年段階で同国におけるコバルトの生産量は8万3529トン。世界全体の約56.4パーセントを占めます。しかし、その採掘も児童労働と無縁でなく、2016年1月の国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告によると、同国のコバルト鉱山で10歳に満たない子どもが働いているケースや、1日1-2ドルの賃金のために10-12時間の労働を余儀なくされているケースも珍しくありません。

 ところが、コンゴ民主共和国の「闇」は、これにとどまりません。冒頭で述べたように、この国では騒乱が絶えず、そのなかでアフリカの他の国にも増して「子ども兵」が多く用いられてきました。そして、豊富な資源と子ども兵の問題は、分かちがたく結びついているのです。

アフリカの戦場を駆ける子ども

 ここでコンゴ民主共和国を含むアフリカの子ども兵について簡単に紹介しておきましょう。

 アフリカでは内戦やテロの広がりとともに、15歳に満たない子どもが戦闘員として使われることが珍しくありません。日本では「少年兵」とも呼ばれてきましたが、実際には「少女」も含まれるため、英語のChild soldiers に沿って「子ども兵」と呼ぶ方が適切です。

 子ども兵の利用は、反体制的な武装組織やテロ組織に限らず、正規の軍隊でさえみられ、その数は世界全体で約30万人にのぼるといわれますが、正確には不明です。

 「子ども兵」と一括りに呼ばれても、全員が戦闘員ではなく、雑用係や調理係、さらに性奴隷などの「任務」に就く子どももいます。子どもが軍事組織の一員となるルートは一つではありません。誘拐されたり脅迫されたりして、その意思にかかわらず兵士となることを強要されるケースもあれば、自発的に参加するケースもあります。

 その非人道性から、子ども兵は1989年の「子どもの権利条約」や2002年の「武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書」で国際的に規制の対象となっています。これに基づき、近年では国連を中心に子ども兵の解放を促す国際的キャンペーンも展開されており、UNICEFは2017年、過去10年間で軍務を解かれた18歳未満の子どもの数を世界で6万5000人と発表しています(各国の軍隊からの除籍を含む)。

 そのうちコンゴ民主共和国の人数は2万人にのぼり、これは飛び抜けて多い数字です。「解放された子ども兵の多さ」は、裏を返せば、それだけ盛んに子ども兵が用いられていることを意味します。

豊富な資源が支える「戦国時代」

 なぜコンゴ民主共和国で子ども兵が目立つのでしょうか。そこには武装組織の「独立」という問題があります

 東西冷戦が終結した1989年以降、外部の大国は味方となるアフリカの国や武装組織への支援を縮小。それにともない、アフリカ各国で反政府活動を行なっていた組織は、経済的、物質的な「独立」を余儀なくされ、そのなかで天然資源、木材、象牙、さらにヒトの密輸が横行するようになったのです。

 コンゴ民主共和国でも1990年代末から内戦が絶えず、国内に武装組織が林立してきました。その多くは基本的に民族ごとに地域に根を張った集団です。内戦が長期化し、政府が地方を管理しきれず、軍や警察が治安を維持できないなか、それぞれの土地を軍事力で支配する勢力が台頭した結果、現在では大小あわせて50以上の武装組織が林立。それはちょうど、室町時代後期の日本で幕府の権威・権力が衰えるなか、戦国大名や「悪党」と呼ばれた豪族がそれぞれの土地を軍事力でもって支配した状況に似ています。

 その多くは、豊富な天然資源を違法に採掘・輸出することで資金を得てきました。例えばキヴ州を根拠地とするルワンダ解放民主軍(FDLR)の場合、そのほとんどはフツという民族で構成され、金や錫などを主にルワンダ経由で密輸しているとみられます。折しもモノやカネが国境を自由に越えるグローバル化が進んだことで、アフリカの武装組織は「独立」しやすくなったといえます。

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