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特集:トランプ大統領と米国経済が強気な理由

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本誌の前号では、全世界的な「ひどい政治と好調な経済」というテーマを取り上げまし たが、その最たるものは米国でありましょう。

先週1月20日、トランプ政権は発足1周 年を迎えましたが、ちょうどその日に政府閉鎖を迎えるという混乱ぶり。

今月はまた”Fire andFury”なる政権の内幕暴露本が、ワシントンの「紙価を高からしめて」いるようです。 ところが米国経済は好調が続いていて、変な楽観ムードが支配的になっています。

トラ ンプ政権が貿易戦争に打って出て、「ひどい政治が経済を台無しにする」(ダウンサイド・ シナリオ)かもしれないのに、むしろ「好調な経済がひどい政治を癒す」(アップサイド・ シナリオ)を期待しているように見える。その理由を考えてみました。

●米減税でIMFは見通しを上方修正

毎度お馴染み、「IMFのWEO」が今週、改訂された。1年に4回、改訂されることにな っているのだが、昨年10月公表の前回分に比べて上方修正されている。

新興国はあまり 変わっていないが、先進国経済の見通しが大幅に改善されている。特に米国経済が昨年末 に決まった税制改正を受けて、大幅な上方修正となっている。

今回のWEOのタイトルは、”Brighterprospects,OptimisticMarkets,ChallengesAhead”(さ らに明るい見通し、楽観的な市場、待ち受ける課題)である。

前回”SeekingSustainableGrowth” (持続的成長を求めて)、その前の”AFirmingRecovery”(確かさを増す回復)に比べて、 ますます手応えを感じている様子が窺える。

次ページの表にまとめた通り、18年と19年 の世界経済成長率はいずれも3.9%となり、貿易量は3年連続で4%台とる見込み。そして 資源価格も下げ止まっている。

今後の米国経済に関して、WEOは以下のように説明している。

*2017年の経済活動は予想以上に活発だったし、外需も増加している。
*税制改革(特に法人税減税と設備投資の即時償却措置)がマクロ経済に影響を与える。
短期的には経済活動を刺激する。内需が伸びて輸入が増え、経常赤字は拡大する。
*2020年まで経済成長は加速し、減税がない場合に比べて1.2%高くなる。ゆえに2018 年は2.3%→2.7%、2019年は1.9%→2.5%に見通しを引き上げる。
*他方、財政赤字が拡大するので、将来的には調整が必要になる。2022年以降の成長率 はかえって低くなり、部分的に相殺されよう。
*内需が増えてもインフレはあまり進まない。ゆえにドル高もさほど進まない。
*中低所得世帯に比べ、高所得世帯の平均税率が低下する。

12月末に決まった今回の減税は、IMFのメインシナリオには含まれていなかった。そこ で上記の修正に至ったわけだが、そうでなくても好調な米国経済にさらに追い風が吹くこ とになる。

NYの賢者、エド・ハイマン氏曰く。「ケネディ政権以来、過去7回の大型減 税の発足時における失業率は平均7.0%でしたが、今回は4.0%近い水準です。『火に油を 注ぐ』といった言葉が心に浮かびます」(EvercoreISIウィークリー・レポート、2017年 12月18日号)。

●景気好調で利上げでもドル安が進む

減税効果で米国経済が過熱することになると、「今年は年3回程度」と見られている利 上げが加速するかもしれない。

そうでなくても、長期金利は2%台後半に上昇している。 「金利差拡大で2018年はドル高・円安」となりそうなもので、筆者なども昨年来そうい う見方をしていたのだが、直近の動きはむしろドルの全面安である。

下のグラフはWSJ 日本語版の「トランプ氏のドル安政策、『信認の危機』をもたらすか」から。2

なぜそんなことになっているのか。今週はダボス会議に出席しているトランプ政権要人 の発言により、さらにドル安が進んで注目を集めているが、実はドル安は昨年前半から始 まっている。

この事情を上手く説明しているのが、今週号のTheEconomist誌”Playing ketchupwiththedollar”という論説記事である(本誌P8で抄訳を掲載)。 つまりドル安の原因となっているのは、①強過ぎる世界経済。米国内の企業や投資家は、 レパトリによる海外資金の還流以上の速さで対外投資を積極化している。

②通貨戦争の終 わり。国際金融危機を潜り抜けた後の世界経済では、もはや為替安競争や量的緩和政策は 不要になっている。③ファンダメンタルズ。「ビッグマック指数」を見ても、既にドルは 割高。

米国におけるビッグマック価格5.26ドルを上回るのは、スイスなど3か国のみ。 ちなみにビッグマック価格は、ユーロ圏は4.84ドル、日本は3.43ドル、中国は3.17ド ルとなっている3

ユーロは昨年から対ドルで1割程度強くなっていて、こちらは既に調整 が進んでいる。逆に円や人民元は、まだ過小評価されている。ユーロと同様に1割程度の 調整があると考えれば、ドル円レートでは当面1ドル105円程度までの円高は十分にあり 得るのではないか。このことは米国経済にとって、さらなる支援材料となるだろう。

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