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中長期の経済財政に関する試算

 先日、内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」を出しました。これがヒドい。昨年のものはこれです。リンクの2つのデータを見比べても、普通は意味不明ですが、テレ朝がとても簡潔に説明してくれています(テレ朝の映像はこれ)。

 この話は国会論戦的にも経緯があります。昨年の今頃、前原誠司議員が試算について質問しています。かなり本質的な良いポイントを突いていたのを覚えています。

【平成29年2月14日衆議院予算委員会(長いのでかなり端折っています)】
○前原委員 (略)二〇二五年以降のグラフを何度出してくださいと言っても出してもらえないんです。 (略)経済再生ケースというものを見ていただいた場合に、実は二〇二三年から名目GDP成長率と名目長期金利が逆転するんです。つまり、経済が再生してくると、成長率以上に名目長期金利が高い伸び率になってくるんですね。

 今、国だけで九百兆ぐらいの借金がありますから、この借金が、大体百兆ぐらい毎年借りかえをしておりますね。そうなってくると、どんどんどんどん、今は金利が低いけれども、経済成長を前提とすると金利が上がってくるわけです、借りかえていくと。そうなると、これだけの長期金利を全てこの金利に当てはめることはありませんけれども、若干低目なものが出ますが、だんだんだんだんこれに追いつく形で金利が上がっていきます。

その場合に、PBの黒字化をしても、この二〇二五年以降は経済再生ケースでも対GDP比は上がっていくんじゃないですか、だから二〇二五年以降のグラフを出していないんじゃないですか。石原大臣、お答えください。

○石原国務大臣 委員御承知のとおり、長くなればなるほど指数の変化率がどうなるかということの前提値を置かなければ、先のものは出ないと思います。

 委員が御指摘されたとおり、経済がよくなれば間違いなく金利は上がっていくということになる。名目の金利と名目の成長率が逆転すると債務がふえていくということも、そのとおりだと思います。

 しかし、逆を見ていただければわかりますように、経済を再生させる、すなわち経済再生をしない限り、実はグロスの借金というものは減らすことができない。これは十年間ということを経済再生計画の中でつくったから十年間であるわけでございまして、これが二〇二〇年になれば、またそこから十年間のものを同じ指数を使ってつくることは可能だと思います。

 これはあくまでも経済財政政策の中で二〇一五年に決めまして十年間というふうに見ている、そのとおりだと思います。

(前原議員の再質問に対して)
○石原国務大臣 (略)先ほども申しましたけれども、指数を同じものを置けば同じものを出すことはできますので、要するに二年、三年先のことでございますね、それは検討させていただきたいと思います。(略)

【引用終わり】

 昨年の試算では、今後の試算は2025年までのデータしか出していませんでした。前原議員は「実は2026年以降は、(とてつもない)高成長率を実現したとしても、それに合わせて金利が跳ね上がるので国の借金は拡散していくのではないか。」という問題提起をした上で、2026年以降数年の試算もやって出してほしいと依頼したわけです。

 石原大臣は答弁で検討するとは言いましたが、結局、その後何かが出てきたという事はありませんでした。恐らく、前原議員が提起した懸念は当たっていたのだろうと私は思っています。多分、2025年までは高成長を前提にすれば国の借金は抑え込めるけど、そこから先は無理だという事だったはずです(内々に専門家からはそう聞かされています。)。

 さて、それから1年経ちました。1年経ったので、だんだん2026年以降のデータを出せという圧力は強まってきます。しかし、上記の通り、これまでの想定で2026年のデータを出してしまうと、国の借金が拡散していく様がありありと見えてしまいます。なので、基礎となるデータをいじらざるを得なかったのです。

 政権的に最優先のポイントは「金利の想定を下げる事」です。もっと言うと、「成長率>金利」の状態を想定できれば、政権的には尚更いいです(実はこの成長局面において、金利と成長率のどちらが高くなっていくのかという議論は、小泉政権時代からずっと続いている議論です。)。ともかく、金利の水準の想定さえ下げられれば、当面、国の借金が拡散しない想定を作る事は可能です。

 ただ、それだけを下げて試算をすると、さすがに操作がバレバレになってしまいます。なので、今回は成長率の想定を下げ、それ以上に金利の想定を下げたのです。そうすると、相対的に金利の下がり方が大きく、かつ「成長率>金利」の状態に仕立て上げたので、借金が拡散しないモデルを作る事が出来ます。単なる数字いじりで、「少しだけヤバくない」未来予想図を作ったという事になります。

 そもそも、上記のデータはすべて成長実現ケースというとてつもなく高い成長率を想定したものです。普通に想定される「ベースライン・ケース」ではもっと状況は悪いのです。そのとてつもなく高い成長率であったとしても、基礎的な想定のデータをかなり都合よくいじらないと、国民やマーケットにお見せできるデータにならなかったという事です。

 「そんな事言ったってどうせ未来予想図の試算だろ?」という方が居られるでしょう。その通りです。しかし、その試算に基づいて経済財政政策は作られます。こんな政権の粉飾予想を真に受けて運営したら、国は少しずつ、しかし確実に壊れて行きます。これは正気の沙汰ではありません。危機管理の要諦は「悲観的に予測し、楽観的に行動する」です。そして、「楽観的に予測し、悲観的に行動する」のが最悪です。今、やろうとしているのは後者です。

 そして、私が「これは深刻だな」と思ったのが、これをそれなりに大きく報じたマスコミがテレ朝+αの限られた社しか居なかった事です。マスコミ各社による政権忖度の一種のように思います。モリよりも、カケよりも、スパよりも、この粉飾の経済財政試算にフォーカスが当たらない今の日本の現状をとても憂います。

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