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2011.12.20

■12月某日 北朝鮮の最高実力者・金正日総書記・軍事委員長が公務中に列車内において心筋梗塞で死去した。69歳だった。これまでも死亡説は年中行事のように何回か流れたが、今回は朝鮮中央テレビが全世界に向けて報道したことで世界中に衝撃が走った。遺体もすでに見学ができるようなショーケースにおさめられている映像も流れた。いずれは遺体の永久保存を施して、中国の毛沢東のような神格化が図られるのだろう。金総書記は以前にも脳梗塞で倒れたこともあり、まだ半身不随が多少残る体だった。後継は三男の(正恩)ジョンナン、20代後半に以前から決まっていたため、日本のメディアが危惧するような内乱の勃発や難民が大流失するような事態は当面はないとみていい。しかし、「大将」から一躍NO1に抜擢されたことで、今後の人事配置や力関係において内部で不満がくすぶる可能性もないわけではない。

 しかし、それにしても、ワイドショーや報道番組を中心に、日本のメディアはこの金総書記の逝去報道一色だった。小泉元総理のコメントはともかく、久々に見た安倍晋三元総理が各局を渡り歩くさまも映像に映しだされた。筆者の知り合いでもある鈴木琢磨、辺眞一、李英和などの北朝鮮ウォッチャーも各局に勢揃い。横田めぐみさんの両親まで駆り出されていた。拉致被害者の行方がいまだに不明という事情もあるだろうが、異常といえば異常な報道ぶりだった。国内的には原発関連の報道や「社会保障と税の一体改革」も大詰めだ。韓国の李明博大統領が突き付けた韓国人従軍慰安婦補償問題も、野田総理との見解は大きく食い違いを見せたままだ。ソウルの日本大使館の前には第二、第三の従軍慰安婦の銅像が建つのではないか。日本は解決済みを強調するが、65年の日韓条約の締結は韓国の軍事政権との間で政治決着を見ただけであり、当時の戦争犠牲者に対する個別の補償は一切なされていない。野田総理の官僚答弁のような「解決済み」の一言で終わる類のものではないはずだ。

 それはともかく、面白かったのは朝鮮中央テレビのNO1アナウンサー・李氏が、喪服を着ていつものように大仰な抑揚をつけて訃報を読み上げたことだ。その直前までは、李アナウンサーは「干された、消された、引退した」との報道が飛び交っていた。訃報が流れる直前には、北朝鮮が日本海上に短距離ミサイルを発射したしたとの報道も流れたが、訃報の後は追加情報も一切流れなくなった。北朝鮮が秘密主義で謎の部分が多いのは事実だが、日本の報道も真実よりも、北朝鮮報道ならば「何でもあり」の印象が強い。それはともかく、世界でも有数の厄介な国である北朝鮮が、20代後半といわれている金正恩に国家運営のリーダーが務まるのか。当面は集団指導体制にならざるを得ないだろうが、6か国協議、核問題、拉致問題など懸案は多い。

 直接は関係ないけど、韓国や北朝鮮における「泣きの文化」にはいつも異和感を感じさせられる。特に北朝鮮の場合は世襲による独裁体制と国家的洗脳教育のせいで、ことさらに大仰だ。北朝鮮にいる「よど号」グループと一度だけ95年にピョンヤンで対面したことがあるが、そこまでは聞きそびれたが、彼らにはもはや反スターリン主義の視座は全くなく、朝鮮労働党に絶大なる忠誠を誓っていた。その意味では、彼らも金総書記の逝去で「アイゴー」と一晩中泣き叫んだのだろうか。どんな人でもなくなることは悲しいことだが、筆者などは、「男は黙って耐え忍ぶ、やたらと涙をながしたり、取り乱したりするものではない」という教育を受けてきた。人の死は悲しいが、無神論者にとっては、泣き叫んでも死者が甦るわけではないという認識もある。韓流ブームで日本と韓国の文化レベルの交流が加速度的に進むことは喜ばしい限りだが、この泣きの文化だけは民族の違いがあるとはいえ、理解が難しい。まして、これからしばらく続くであろう北朝鮮の人々の集団ヒステリーのような国を挙げての葬儀風景は、なんともおぞましい気がしてならないのは筆者だけなのだろうか。ま、それはそれとして、世界の異端児・北朝鮮の今後に関しては目の離せないところだ。

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