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薬事法国賠で朝鮮総聨全面敗訴――東京高裁が政治弾圧容認の判決

 高齢の在日朝鮮人女性に薬事法違反の容疑をでっち上げ、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聨)の関連施設などを警視庁が家宅捜索した事件をめぐる国家賠償請求訴訟(「人権とメディア欄」七月二二日号等参照)。これについて東京高裁は一一月二九日、一部の違法を認めて被告・東京都に対し賠償を命じた一審判決を取消し、朝鮮総聨都本部など原告側の訴えを全面的に斥ける判決を言い渡した。

 昨年八月の一審東京地裁は、家宅捜索そのものの違法性を主張した原告の請求については認めなかったものの、令状で対象になっていなかった場所に捜索を強行したことや、当事者に交付した押収品目録に押収物の詳細を記録せず、「段ボール一箱」などと曖昧な記載で済ませたことなどの違法性を指摘。計六〇万円の損害賠償を支払うよう東京都に命じる判決を言い渡していた。

 しかし東京高裁の市村陽典裁判長、高野輝久、菅家忠行両裁判官らは一審判決で違法性を認めた箇所の指摘すべてを取消し、太田千尋や倉貫昭彦、馬場裕司各警部(いずれも当時)ら警視庁外事二課が行なった違法、不当な政治弾圧を全面的に追認した。中でも、押収品目録でのいい加減な記載について、判決は「刑事訴訟法上違法と評価される余地はある」と認めながらも、原告の権利や利益が侵害されてはおらず「国家賠償法に基づく損害賠償請求権の発生は認められない」と言い放ち、原告が捜索、差し押さえで受けた明らかな人権侵害に目をつむった。

 事件は、長年体調を崩している在日女性が、朝鮮民主主義人民共和国の親族を訪問する際、自らの体調管理のため栄養剤などを近所の医師から個人的に譲り受けただけだったにもかかわらず、「工作員」が工作活動のために輸出しようとしたとでっち上げられたもの。女性は裁判で無実を訴えたが、判決は一言も言及せず、起訴もされていない女性の冤罪を晴らすどころか、外事、公安警察ベッタリの朝鮮総聯敵視の姿勢を露わにした。

 判決後、原告や代理人の弁護士らからは「警察の暴走を誰が止めるのか。これでは裁判所は何のためにあるのかわからない。日本は法治国家といえるのか」と厳しい批判が相次いだ。原告らは上告を検討している。

(中嶋啓明・ジャーナリスト、12月9日号)

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