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福島原発事故から170日、政治は何を明らかにしたか

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(2)「工程表」の評価、原子炉の健全性の問題

  • 原発事故の収束に国が責任を果たせ
  • 東電の「工程表」を政府としてどのように評価したのか=東電“丸投げ”の事故対応の問題
  • 3/30に「緊急安全対策」を指示。5/6「電気事業者において適切に実施されていると判断」。しかしその対策は、津波による全交流電源喪失、外部との熱交換による冷却手段喪失の対策のみ
  • →島根原発(中国電力)想定引き波水位▲5・7メートルのところ、取水口の位置は1号機で▲2・4メートル、2号機で▲3・5メートル。これでは海水が取水できず冷却できない。これで「適切に判断している」といえるのか?
  • 九州電力玄海原発の脆性遷移温度の評価を行ったのは、原子炉メーカーである三菱重工業の子会社である「ニュークリア・デベロップメント」。これでは健全性について公正・客観的な評価はできない
  • 香川県多度津町にあった大型振動台「多度津工学試験所」を売却したために、老朽化原発の健全性試験ができない。即ち“ストレステスト”が意味のあるものになるのか疑問

3/24経済産業理事懇、4/13内閣、4/27経済産業・内閣連合審査会、5/25経済産業、5/27経済産業、7/20震災復興、7/27経済産業

  • (3)事故処理ビジネスの問題
  • 事故処理ビジネス=GE、キュリオン、アレバ等の狙い
  • 日米原子力協定(1958年発効)にはアメリカの要求により、米国側が提供した核燃料の加工、使用などによる損害について「免責」条項が盛り込まれていた。現行の88年協定では「旧協定の免責規定は継続されていない」ことを外務省に認めさせる。
  • 東京電力3月期「決算書」で事故処理費ビジネスへの支払い費を4262億円計上する一方、賠償費用はゼロ。

Ⅴ.被災中小企業の再建へ

店舗も家も機械も商品も帳簿も流され、残ったのは借金だけ。営業再開、雇用維持のためには「せめてゼロからのスタートを」この声に応える施策が必要。既存の制度を超えた支援策、とりわけ既往債務の債務免除は不可欠だ。

  • 保証協会の保証付き融資が代位弁済になると、求償権が残り新たな保証が受けられなくなる。債権放棄する金融機関や保証協会に十分な財政措置を講じることで、債務免除や長期間にわたる返済猶予等を講じるべき。
  • “腕はあるが道具がない”被災地域の中小業者に機材や道具の支援を。復旧復興のための官公需を地元中小企業に発注し、地域に仕事と雇用を生むことで、一刻も早い立ち直りの機会を。

4/13経済産業

Ⅵ.東電に全面賠償の責任を果たさせる

福島原発事故は人災であり、東電に被害者への全面賠償を果たさせなければならない。ところが、新たに作られた「原子力損害賠償支援機構」は、東電を決して破たんさせず、国が際限なくお金を出して支えるというもの。“東電救済スキーム”にほかならない。

  • 東電清水正孝社長は「公正で迅速に補償するには国のご支援が必要」と答弁。「加害者であることを忘れ、税金で面倒みてほしいとはとんでもない」との追及に対し、菅総理も「一義的な補償責任は東電にある」「政府としても適切に対応する」と言わざるを得なくなる。
  • 被害者への全面賠償を行うとなると、東電は債務超過(=実質破たん企業)となる。法的整理により賠償の責任を果たすべき。株主や金融機関など利害関係者が責任を取ることで解決できる。
  • 原発事故の損害賠償基準の指針を作成する「紛争審査会」委員は、9人中3人が電力会社のつくった「日本エネルギー法研究所」関係の法律家。被害者側の委員を入れ、被害者が納得できる基準作りができるよう見直しを。
  • 原子力損害賠償支援機構法案の参考人質疑―「補償対象を限定するのではなく、全面補償を」(除本理史大阪市立大大学院准教授)、「(東電処理の過程での債権放棄は)想定していない」(永易克典全国銀行協会会長)

4/26予算、6/1経済産業、7/8本会議、7/13震災復興、7/20震災復興

Ⅶ.“原発利益共同体”の打破を

(1)原発利益共同体と安全神話

電力会社・原子炉メーカー、ゼネコン、素材供給メーカー、メガバンクなど財界の中枢部分で作る「原発利益共同体」が原発推進のために「原発安全神話」を振りまいてきた。マスコミ・政党・政治屋・官僚を使い安全神話の流布と、原発推進に都合のよい法律や仕組みを作らせる。さらに「原発立地交付金」により原発立地自治体の財政・経済を原発依存に歪め、1号機の次は2号機、3号機…と“原発麻薬”状態に追い込む。現状を打開するためには、「地域独占」と「総括原価方式」に守られた「原発利益共同体」を突き崩すことが必要。

  • これまで政府や電力会社は膨大な広告費をかけて「安全神話」を宣伝。宣伝している自分自身が安全神話にマインドコントロールされていた→「私自身安全神話を信じ込んでいたが、全く失われた」(海江田経済産業大臣)
  • 政府に東電社員36人が在籍出向―これでは「東京電力霞が関出張所だ」。癒着構造断ち切れと追及
  • 原発立地自治体の財政状況と産業構造の歪み―原発立地自治体では原発と土木建設関係の部門の比率が高く、再生可能エネルギーに取り組む自治体では農林漁業の就労部門の比率が高い
  • 原発公聴・広報費が06〜11年の5年で約400億円。スリーマイル島やチェルノブイリ等原発事故が起こるたびに急増

(2)“やらせメール”問題の本質

  • 玄海原発(九州電力)で問題になった「やらせメール」問題の本質を追及―玄海原発の説明番組(経産省主催)は日本生産性本部が受託し、「再稼働」目的に変更。再稼働押し付けの舞台作りに経産省が関与していたことを示すもの。
  • これまでも、プルサーマル計画等の説明会・シンポジウムに際して、資源エネルギー庁や原子力安全・保安院の働きかけを受け、各電力会社が参加動員、賛成意見投稿を組織してきたことが明らかになった。
    →過去、1999年に北海道電力のやらせ公聴会問題、2006年「福井県原発タウンミーティング」におけるやらせ問題を追及。

(3)独立した原子力安全規制機関を

  • 原子力安全・保安院は、原発を推進する経産省のもとに置かれており、本来の「規制機関」と言えるものではない。推進行政から完全に独立し、業務を行うために十分な体制をもつ規制機関を確立することが必要。
  • 2002年、03年に民主・共産・社民3党共同で「原子力安全規制委員会設置法案」提出。この中で、内閣府の外局として独立した行政機関を創設(公正取引委員会と同様の、いわゆる三条委員会)することを提起。
  • 民主党政権は原子力規制機関を環境省において、福島原発事故などにみられる原発事故時の危機対応もさせるとしているというが、環境省はこれまで「地球温暖化対策」を口実に“原発推進”を主張してきた。アメリカのNRC(原子力規制委員会)とFEMA(緊急事態管理庁)のように規制機関と事故対応の部署を別につくっていること等、海外の事例もみながら考えることが必要。
  • 規制業務の信頼性や実効性を保障するためにも、人材が大事な要素。原発推進官庁や原発企業からの独立、公正性、客観性を保障できて、廃炉や消滅技術などの研究部門を持つことが必要。

4/20経済産業、5/27経済産業、7/20震災復興、8/9科学技術

Ⅷ.原発依存から再生可能エネルギーへ転換を

(1)原発は安価・クリーン・安定した優れた電源か?

  • 政府試算では、原発コストは5.3円/kwhと最も安い→国費からの資金投入分、原発事故に伴う被害と補償費用は含まれていない。“隠されたコスト”を明らかに!
  • 原発建設費14.5兆円、原子力関係の国費投入額16兆円(いずれも現在価格換算)。再処理費用・廃炉コストなど“バックエンド費用”も総額18.8兆円にのぼる。10.68円/kwhとの試算も(大島堅一立命館大学教授)。「安い」どころか「高い」電源だ。
  • 福島第一原発事故による大規模な放射能汚染が、福島県民はもとより全国民の健康・生命・財産を侵害し、営業と雇用、地域経済や地域社会を破壊。どこが「クリーン」な電源か。
  • 電力の供給不足により電力制限令を発動。この10年間を見ても、地震・事故・トラブル隠しでたびたび停止。安定した電源とはいえない。
  • 新成長戦略に基づく“トップセールス”の原発輸出やめよ―日本でも世界でも信頼失った

(2)「地域独占」と「総括原価方式」に守られた “ブラックボックス”の電気料金

電力供給は、全国10の電力会社が発電・送電・配電を「地域独占」。その上、発電に要する費用(原発建設コスト、アメリカから買っている核燃料のコスト、運転のコスト、維持・点検のコスト、将来の廃炉コスト、再処理コスト…等々)は「総括原価方式」により全て原価として計上し、そこに3%の「適正利潤」を加えたものをすべて電気料金として徴収できる仕組みとなっている。

  • 今年4月から太陽光発電の買取費用「太陽光発電促進付加金」が電気代に転嫁されるようになった。再生可能エネルギー固定価格買い取り法案による買い取り費用“賦課金”が最大0.5円/kwhの想定。
  • 料金明細には内訳が記載されていないが、再生可能エネルギー買取コストを大幅に上回る“原発付加金”がすでに徴収されている→標準世帯(300kwh/月)で 電源開発促進税112円、バックエンド費用107円含まれている。「隠されたコスト」を明らかに―「ブラックボックスをあけて光を当てる」(海江田経済産業大臣)

(3)再生可能エネルギーの豊かな可能性、爆発的普及で原発から撤退を―地域経済の振興と結び付けた「地産地消」のエネルギー

  • 地震列島に原発立地の異常―USGS「世界の地震地図」とWANO「原発地図」を重ねると異常さが明らか。
  • アメリカ・ボデガベイ原発は建設計画後、震源域の存在が明らかになり、計画破棄。
  • 浜岡原発は東海地震震源域の真上。もんじゅ・敦賀原発・美浜原発は活断層から1km以内に立地。東海・東南海・南海地震が連動するとM9を超える想定が必要だが、政府の想定はM8.7(浜岡)。
  • 日本のエネルギー自給率はわずか4%。化石燃料・濃縮ウランを輸入に頼っている。一方、再生可能エネルギーに目を向ければ、地熱で世界3位の資源量、世界平均2 倍の降水量を小水力発電に、国土面積の7 割が森林…等。「資源のない国」ではない。
  • 再生可能エネルギー買取法案の修正案提起―再生可能エネルギーの爆発的普及と、電気料金への転嫁の抑制、負担軽減の両立は可能。
  • 電力会社の「接続義務」強化を―北海道電力や四国電力が再生可能エネルギーによる電力買取に上限を設け、法制定後も買取契約の上乗せを拒否する、との報道があるが、これは「再生可能エネルギー買取法案」第5条の『接続義務」違反だと指摘→「系統可能量を増やすことは可能」(細野エネ庁長官)

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【参考図書】

○原発抜き・地域再生の温暖化対策へ/吉井英勝著/新日本出版社/2010年10月発行

○どうする原発 どうなる放射線/吉井英勝ほか著/日本機関誌出版センター/2011年5月発行

○震災復興の論点/吉井英勝ほか著/新日本出版社/2011年6月発行

○こうして原発被害は広がった―先行のチェルノブイリ/吉井英勝解説/文藝春秋社/2011年6月発行

○「女性のひろば」2011年5月号、「議会と自治体」2011年5月号、「経済」2011年6月号、

「前衛」2011年8月号にインタビュー記事掲載。

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