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金正日総書記死去 混乱の可能性は低い

北朝鮮の最高指導者、金正日総書記が死去しました。17日午前8時半、現地指導に向かう列車の中で死亡したと発表されています。

今後のシナリオを考える上で、短・中期的には後継者と見られる金正恩体制が北朝鮮のエリートにどれほど受容されるかどうか、という点に着目されます。

北朝鮮エリートたちにとって国家の生き残りは自らの生き残りであるため、彼らは国家の存続に最善を尽くすことでしょう。懸念は、新将軍の若さです。故金正日総書記は、後継者に指名されてから20年の歳月をかけてトップに就きました。一方、正恩氏は若く対外デビューも昨年ようやくお目見えを済ませたばかりですから、体制内での権力掌握が十分であるとは考えられません。金敬姫(正日の妹、正恩の叔母)人民軍大将やその夫である張成沢国防委員会副委員長らの後見人と金正日体制下の家老級の人物による集団指導体制が敷かれるのではないかとみられますが、彼らのパワーバランスや派閥の強弱については十分な情報がないので、正恩体制がどれほどの安定感をもっているかについての分析は推測の域を出ません。

この正恩体制が仮に不安定であるならば、北朝鮮の指導層における暗闘が外部へ波及し、結果的に地域情勢へ影響を与える可能性もあると思われます。三代にわたる金王朝の支配に北朝鮮のエリートたちがNOを突きつけるという状況もあるやもしれません。ただし、「体制の崩壊(金王朝の終焉)=国家の瓦解」ではない、ということはおさえておかないといけませんね。

【参照記事】 北朝鮮の体制崩壊 そのとき各国は

米国家戦略研究所(INSS)が指摘する通り、北朝鮮の体制が突然崩壊しても、少なくとも短期的には北朝鮮という国そのものがなくなることはないでしょう。なぜなら、中国がそれを受け入れないからです。中国が北朝鮮新体制に対してどれほど決定権をもっているかについては分かりませんが、故金正日総書記が後継者の報告と支援要請を兼ねて北京を訪れたことからも、中国の影響力は依然として大きいままだと見てよいでしょう。

その中国は、北朝鮮を民主・資本主義陣営との緩衝地帯として存続させることを望んでおり、現体制のエリートによる後継体制を構築すべく裏に表に外交的介入を行うことでしょう。中国にとって、北朝鮮の政府の存続こそが第一義的な目標であり、それは必ずしも金王朝でなくてよいのです。中国にとってはむしろ難民流出の阻止が重要な問題で、実際に金正日総書記死去後、北朝鮮との国境地帯に約2,000人規模の部隊を増派しています。

この中国を含め、北朝鮮問題の主要アクターである米国、韓国、日本、ロシアの共通の安全保障上の懸念は、(1)危機を北朝鮮内で収めること(2)WMD(大量破壊兵器)と核兵器の管理と拡散防止、の2つです。

◇ ◇ ◇

北朝鮮は、金正恩新体制でもこれまでのような瀬戸際政策を続け、地域の不安定要因としてあり続けるのでしょうか?故金日成主席誕生100年と故金正日総書記70歳が重なる2012年に向け、北朝鮮は「強盛大国」(強盛国家、強盛復興とも)というスローガンを掲げてきました。ですから、来年あたり、国威発揚と新将軍の権力誇示といった名目で弾道ミサイルの発射実験などもあるかもしれません。ただ、日本も含め、過剰に反応するべきではなく、落ち着いて状況の推移を見定めなければいけませんね。




【参照記事】
US-China Relations and Korean Unification [PDF] (KINU)

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