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続編・オリンパスの買収監査と法務部の役割について

昨日のエントリーには、たいへん多くのコメントやメールをいただき、ありがとうございました。コメント欄にて、ChuckさんやJFKさんがお書きになっているとおり、法務部のM&A案件における役割は、各社各様であることが、ほんの少しですが理解できました。メールを頂戴した方の会社などは、そこそこ大きな企業であるにもかかわらず、総務部や経理部が法務案件を担当していらっしゃるようで、「法務部のお仕事」を一括りで語れないところもあるかもしれません。(そういえば「ろじゃあさん」のブログでも「十人十色、法務部いろいろ」なるシリーズがありましたっけ・・・(^^  )結局のところ、各社の営業戦略があり、その戦略の一環として法務部の位置付けが各社で異なる・・・というところでしょうか。

ところで、中央経済社の雑誌「ビジネス法務」2012年1月号の特集が 「どうすれば法務部はM&Aで活躍できる?」 というものでして、その特集の中で語られている須崎將人氏(ソフトバンク社法務部長-以前、当ブログにもコメントをいただきました)のお話『法務部はM&Aのコーディネターとなれ』(24頁以下)がとても印象的でした。

「強い法務部」を目指しておられる須崎氏によれば、法務部は自社M&Aの構想段階から関与すべき、とされ、これは法務部業務の大原則である、と述べておられます。大枠において社内でコンセンサスをとったうえで、法務部は交渉の前面にいつでも出られるようにすることが肝要とされています。おもしろいのは、海外企業の場合は、法務部や弁護士が前面に出てくるので議論の相手としてはやりやすいのだが、日本企業同士の場合には、なかなか法務部が前面に出てこないので逆に自分たちの立ち位置に困ってしまうことがある、とのこと。
『向こうが一歩下がっているのに、こちら側が前面に出るのもバランス的に悪いというか、結構やりにくいですね』
またソフトバンク社の法務部門では、M&Aに関するあらゆるリスクを検討するとのが慣例とのこと。こういったソフトバンク社のように、M&Aが恒常的な法務部案件になっているケース、会社規模が非常に大きい場合には、弁護士が中心的な役割はを担っているケースでも、法務部はかなり前面に出て活躍するようです。したがいまして、今回のオリンパス第三者委員会報告書で記載された内容を肯定する立場になりそうな気がします。しかし、須崎氏が国内の交渉相手企業の例で語っておられるように、M&A案件がきわめてイレギュラーな業務とされる企業の法務部からすれば、経営執行部と外部専門家でほとんどの内容が固められてしまって、法務部の審査、というものが占める割合はかなり低いものになるのかもしれません。

ところで、市場関係者の方より、本エントリーに関する意見を、メールにて頂戴しましたが、とても重要なポイントを突いているように思えましたので、下記のとおりご紹介させていただきます。
さて、貴ブログを拝見しましたので、O社など企業買収に絡む法務部の役割と実情について、私見をコメント差し上げます。

○法律適合性とソロバン勘定の間

・一般的に法務部の社員の場合、自分の役割は違法性の確認のみ…という割り切りが強く、事業判断への口出しや経営面などソロバン勘定の世界には興味を示さない方が多いというイメージがあります。

○法務部の事前関与(企業買収の神格化の悪影響)

・過去、野村証券やカブドットコム証券のようにインサイダー取引の舞台として企業買収や重要情報の社内共有問題についてに光があたったことから、多くの企業にでは、企業買収の検討実施に当たり、専門部署で極秘に進める傾向が強まり、関連部門との情報共有化は軽視される傾向にあります。もちろん、オリンパスの場合は、意図的にディール関係者を絞っていたのだと思いますが、一般的には自社の企業買収について、法務部も含めて関連しそうな部門は「情報管理」という錦の御旗のもとに関与できていないと思います。

○法務部の事後関与

・さすがに契約書について事実上、関係者が合意した後、押印手続きに先立って法務部がチェックする場面があるのが通例だと思います。しかし、複雑な交渉を重ねた結果の成果である合意条件について、決定的な法律面での瑕疵がない限りにおいては、法務部としては内容を精査せず、承認するのだと思います。

このあたりはJFKさんのご指摘に近いところがあるかもしれません。あまり大きな責任が課せられても(他にも仕事を抱えているので)困ってしまう・・・という意識が(社員として)存在するのでは、と。



・たとえ法務部が「本件を精査したいから、少々時間を欲しい。」と主張したところで重要情報の速やかな開示と言う定義名分には勝てず、「いついつまでに公表し記者会見する予定なのですぐに確認してください。」と求められ、十分な時間も与えられないケースが多いと思います。

・さらには、MAで実績のある法律事務所にアドバイザーを依頼している場合などについては社内的に法務部には何も期待されないでしょう。もし、何か主張したとしても「大手法律事務所の○○先生が問題ないと言っている件について、何を言うのか!」と一蹴されれば終わりです。

○報告書「独立した立場でその内容を検討すべき」について

・金銭面でのシガラミの少ない第三者委員会でさえも、独立性の確保が難しい中、社内の一部門である法務部に独立性を求めると言うのはむずかしいのではないでしょうか。
どうもありがとうございました。まぁ、事前審査は困難であったとしても、やはり事後的には問題案件では?といった意識を法務部の方々も持っておられたのではないか・・・という疑問は残るような気もします。また、オリンパスの件では、もしも・・・の話ではありますが、監査役会が法務部に相談していたらどうなっていただろうか・・・というところでありました。ホントに監査役会から法律審査を要望されたり、意見交換を求められていた場合、法務部は真正面から対応していたでしょうかね?

法務部の「あるべき」論と現実の姿には若干の差があるような印象を持ちました。以前、ある会社でコンプライアンス・ハンドブックを改訂する作業のお手伝いをしましたが、そのときに社内政治力を見事に発揮して完成にこぎつけた法務部長さんがいらっしゃいました。この「あるべき」論に近い姿の法務部を形成するにあたり、こういった社内政治力も必要になるのかもしれませんね。

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